【勝者に学ぼう】スプリングSを勝った松岡正海騎手に聞く"レースのポイント"

17年スプリングSを勝ったウインブライト

17年スプリングSを勝ったウインブライト


松岡正海騎手のスプリングS優勝歴

17年ウインブライト

——松岡騎手はウインブライトの引退レースまで多くのレースでコンビを組みましたが、スプリングステークスの頃の馬の状況はどのような感じでしたか。

松岡騎手(以下、松):5歳秋くらいに本当に良くなりそうだなという感触を持っていて、その時期に合わせて競馬をしていかないと、と思っていました。スプリングステークスの頃はまだ腰がしっかりしていませんでしたし、体が出来ていないのに無理をさせると精神面で歪みが出て競馬で頑張れなくなってしまうので、こちらとしても敏感に接している時期でしたね。

力があるので調教もやれば動きますけど、そこで動くからといってやり過ぎて心がやられるというケースは結構あるので。心と体の完成度を精査しながら調整していました。

——そういった状況のなかで重賞勝ちをおさめました。

松:あの馬の能力が高かった、というのはありますね。気持ちの前向きさがありましたし、こちらが教えたことをすぐ出来る頭の良さもあって、そういうところに助けられました。やっぱり結果を出さないと乗り替わりもありますからね。

本当に良くなるときに自分が乗れないのもイヤですし、この馬のキャリアを通して現状に合わせた競馬をしながら乗り替わりにならない結果を残せたことは良かったと思います。

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——スプリングステークスのレース内容を振り返ると。

松:この馬のレースの理想的な完成形としては、香港カップで勝ったときのように3番手から5番手辺りにつける形なんですが、このときは心に余裕を持たせながら尚かつ結果を出すことがテーマだったので、前半は無理せずラクをさせて終いを伸ばす競馬をしました。結果が出たのは、さっき話したように馬の能力と頭の良さに助けられた感じです。

——スプリングステークス以降も国内外で重賞を勝ちますが、そのような馬を育てていくのは楽しかったんじゃないですか。

松:教えたことが出来るようになる楽しみもありましたし、やり甲斐もありましたけど、怖いなとも思っていましたよ。

——怖い、ですか。

松:他の人が乗った方がもっと走るんじゃないかとか、自分は甘いんじゃないかとか、不安があるんですよね。ウインブライトが引退した今でも、自分が乗らない方がもっと走ったんじゃないかって思うことがありますよ。もっとやれることがあったんじゃないかって、ずっと悶々としてます(笑)。

——そんな気持ちがあるとは意外でした。ところでウインブライトは、のちに中山記念を2回勝ちますし中山芝1800は得意舞台でしたね。右回りが合っていたんでしょうか。

松:それよく言われますけど、決して東京がダメだった訳ではないですよ。東京で使うときは調子がもうひとつだっただけで、香港カップを勝ったときくらい具合が良ければ2019年の天皇賞秋でも2着には来れましたよ。東京のG1でもやれる力はありました。使ってガラッと変わるタイプだったので、東京のときは調子がもうひとつのときだったというだけです。

——では松岡騎手にとって、中山芝1800で結果を残しやすい馬はどのようなイメージがありますか。

松:流れに乗るのが上手な馬ですね。ゲートからコーナーまでが近いので、最初のコーナーでポジションをスムーズに取れれば良いかな。2コーナー辺りで加速したり流れに合わない乗り方をすると、キツくなってしまいますからね。