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【特別対談part3】一流への道!両親も知る田口貫太騎手へアンカツさんの熱い想い
2024/3/10(日)
田口貫太騎手の現状の課題、そして日経新春杯の騎乗…期待し、可愛がっているからこそ飛び出す安藤勝己元騎手の愛のムチ。ついに実現した"笠松師弟対談"は更に熱を帯び、いつのまにやら田口騎手の質問タイムに。競馬を知り尽くしたアンカツさんが語る過去の経験、そして田口騎手のご両親との思い出とは……。
"競馬の達人"安藤勝己が後輩に伝える経験
田口貫太(以下貫):これまでの話に通じるところがあるんですけど、今自分の抱えている課題として、自分の中で焦りがあって、馬に余計なストレスを与えてしまっていると思うんです。
勝己さんにはよく「勝ちに行かない競馬をしろ」と言われているんですが、1.3倍や1.4倍の馬に乗った時はある程度ポジションを取って競馬しにいかないといけないですよね。
安藤勝己(以下安):そんな馬は黙っていても勝手に前に行くやろ(笑)
貫:そうなんですけど(笑)、1800mなどでいつも後ろのほうから差して2、2、2着のように善戦して断然人気になる馬もいるじゃないですか?相手も揃ってなくて1倍台になった時です。僕、サンマルパトロールで2着だった時(12月10日、阪神7R3歳上1勝クラス)に後ろでじっとして運んだら、(永島)まなみさんに逃げ切られちゃったんです。その時は自分から動いたりするべきなんでしょうか?
安:2着続きの勝ちたくねえ馬はいるんだよな。ソラを使ったりして、なかなか難しいところがある。そういう馬はいつもと違ったレースをしたほうがいい。思い切って更に後ろに下げて終いに懸けるとかな。何頭かおったな。フェートノーザンもそういうところがあったわ。思い切り下げて乗ったら逆に楽に勝ったりしてな。
-:人気馬に乗るプレッシャーは凄そうです…。
安:これ、ファンのためのプレッシャーじゃないんや。
貫:そうですね。
安:負けたら次乗り換えられるんじゃないかっていう、そっちのプレッシャーのほうが大きい。結果出さなきゃって思いになる。
貫:ずっと乗ってた単勝1倍台ならこれは勝つだろとか分かるんですが、テン乗りの1倍台だと不安はありますね。競馬に行けば走るのは馬ですし、信じて乗るしかないですが。
-:1番人気といえば、キングカメハメハの日本ダービーを思い出します。
安:キンカメのダービーはどう乗っても勝てると思ったな。俺はダービーも1番人気になってほしかった(笑)
貫:1番人気になってほしかった(笑)
安:うん、だってダービーはそれまで1番人気が強かったし、活躍しとったやろ?オッズ見て「よっしゃ1番人気や」って(笑)
貫:凄いです、平場の1番人気でもヨシッて気持ちになりますし、ダービーに乗るだけで気合が入りそうですけど、それで1番人気だったら…。やっぱり勝己さんは経験もあると思いますし、技量に自信がないとそう思えないと思います。
安:貫太、悪いことを考えちゃアカンねん。負けたらどうしようとかじゃなく。NHKマイル勝った時点でダービー勝つと思ったな。まだ全力で走ってなかったし、2400mならもっと強い競馬で、どう乗っても勝てると思ってた。
俺、今までガッツポーズしたことなかったんやけど、前の日に「ダービー勝ってガッツポーズしたら生意気に思われんかな」とか、そんなことばかり考えとった(笑)。そう考えてるうちに、結局中途半端なガッツポーズになった(笑)
本人曰く"中途半端"と語るガッツポーズ
貫:凄過ぎます(笑)。経験と技術がないとこんな自信は持てないと思います…。
-:ちなみに田口騎手はパドックではオッズは見ますか?
貫:もちろん見ますね。連続騎乗だったらオッズを見る暇がないんですが、パドックに行った時は見ます。
安:俺もパドックではオッズ見てたよ。ああ、俺の馬、人気しとるんやなって。俺、レース前に新聞見てなかったから(笑)。距離も分からんかったから、返し馬で前のほうに行くとどっちに行っていいか分からんかったこともあったな。ユタカ(武豊騎手)に「このレース何mやった?」って聞いたら、「こっち」って指さして案内してくれたわ(笑)
貫:さすがに僕は新聞は見ます(笑)
安:さっきの話に戻るけど、やっぱり勝ち切れない一癖ある馬は違った競馬をしたほうが面白いと思う。それが嵌まって勝つとジョッキーとして認められるからな。みんなが勝てない馬で勝ったわけやから。競馬なんて何が正解なのか分からんのだから。それがいいか悪いかなんて結果出てみないと分からん。
貫:確かに、そう思います。
安:馬ってどの馬も本気で走ってない。頭のいい馬に限って走らないことを覚えたら本当に走らなくなる。能力があるのに走らなくなった馬をいっぱい見てきた。
そういう馬をうまく御して勝ち負けすれば評価は上がる。単に最後追えればいいってわけじゃない。わざと出られないような狭いところに入れて、前が開いた瞬間ビュンと伸びる馬だっている。
貫:もう一つお聞きしたいことがあるんです。引っ掛かる馬に乗った時に、返し馬で全然引っかからずに進まなくて、これなら大丈夫だろうと思ってレースに行って序盤仕掛けたら、ガツンとハミを噛んでしまって。レースになったら思い切り引っかかる馬がいて。
安:これ、返し馬って引っ掛からないんや。調教で引っかかる馬も返し馬なら掛からなかったりする。馬は頭がいいからな。俺が中央に移籍した後に札幌でアドマイヤドンの調教に乗ったんやけど、持っていかれてとんでもないタイムで走っちゃって、松田(博資)先生に「もう調教には乗らんでいい!」って言われてな(笑)。そんな馬でも返し馬と競馬は折り合いが楽やった。
貫:こればかりは返し馬で安心しちゃいけないってことなんですね。
安:調教、返し馬、競馬はどれも違うからな。競馬でも馬の雰囲気は毎回違う。新馬と、新馬を使ってから2、3戦目ではまったく違うしな。急にガンと行ったりする。いつも同じタイプだと思わないこと。
両親も良く知る愛弟子へ "貫太には一流になってほしい"
-:今更ですが、安藤さんは田口騎手のことを生まれた時から知っていたのでしょうか。
安:知らんかったな。貫太が生まれた時には俺はもう中央に行っとったから。幼少期も全然知らなくて、競馬の世界に入ってからだよな、これくらい話すようになったのは。
貫: 小学校5年生くらいの時に安藤さんやオーナーさんと飲みに行っていた父を、母と一緒に迎えに行ったのはよく覚えてます。その時は挨拶するくらいだったのですが。
-:性格的に貫太騎手はお父さん、お母さんのどちらに似ていると感じられますか?
安:貫太の性格は分からんけど、顔の輪郭はお母さんで顔の中身はお父さん(笑)。
貫:目とかよく父に似てると言われます(笑)
-:お母さんの尊敬する騎手欄には"安藤勝己"と書いてありました。
安:ああ、ほんと(笑)。貫太のお母さんの広美のことはよく覚えてるよ。伏見厩舎でな。女の子でみんなに注目されてたなあ。上手かったよ。中央の女の子より上手かったと思うな。地方は調教でもレースでもとにかく数を乗るからな。
-:他媒体のインタビューで、広美さんは「勝己さんは聞けばなんでも教えてくれた」と話していました。
安:…何を教えたか全然覚えとらん(笑)。馬って教えて分かるもんじゃないと思ってるしな。乗る人によって変わるから。不思議なもんで、俺はこの馬が引っ掛かると思っていても、他のジョッキーが乗ったら掛からないなんていう馬もいる。ウソついているような気もして、なかなか教えられるもんやないな。
-:少し話は変わりますが、安藤さんはデビューして2カ月で重賞を勝たれました(ジュニアグランプリのシプリアパール)。ご自身のルーキーイヤーについて覚えていらっしゃいますか?
安:そんなに数は勝たなかったからな。笠松では5人同時のデビューだったんやけど、俺は上から3番目か4番目やった。同じ厩舎に兄貴(安藤光彰元騎手)がいて、兄貴のほうがいい馬に乗ってたんや。その分他の厩舎が乗せてくれた。かえって良かったな。馬乗りが楽しかった。それで2年目でリーディング2位、3年目でリーディングか。
貫:20歳でリーディングは凄いです。僕の両親も笠松でジョッキーをやっていましたが、「勝己さんは抜けて凄かった」と言ってました。調教から自分で馬を作って、その馬をレースで勝たせて。母も勝己さんにはよくアドバイスを伺っていたと聞いています。「勝己さんの言うことを聞いていれば間違いない」と。
安:俺、調教はダメやったぞ(笑)。若い頃は良かったのかもしれんけどな(笑)。ただ若い頃は体重で苦労したな。JRAは毎週開催があるから案外体重も安定するんやけど、地方競馬は1週間開催したら2週間開催することもあるから、あっという間に重くなった。今いくつで乗ってるんや?
貫:1kg減になってからは50.5kgで競馬に乗らせてもらってます。
安:俺がハタチくらいの時は55kgくらいやったと思うな。
貫:55ですか?(笑)
安:汗取りに風呂ばっか入ってたもんな。さすがに55じゃ乗れんから減らして、競馬の時は53くらいで乗ってたよ。それで競馬終わったらバーンとまた増やして。1年目2年目はそこまで重くなかったんやけどなあ…。
-:体重といえば、田口騎手はこの先減量が取れることになると思いますが、減量が取れると大きく変わってくるのでしょうか?
貫:3kgの時はゲートを出た後も初速が違ってピュッと行けたんですが、そういう競馬をしていてもあまり先に繋がらないと思っていて。1kg減になって色々考えて競馬するようにしているんですが…。
安:考え過ぎやろ(笑)。1kg程度ならあんまり関係ねえだろ(笑)。よく1kgは1馬身差とか言うけれど、1kgか2kg増えるくらいで馬の能力は変わらないと思う。50kgとかならまた別だけどな。こっちが意識し過ぎちゃダメ。500kgある馬が1kg増えてもあまり関係ない。重心さえ良ければ1kg2kg大して関係ねえと思う。ところで貫太、この先どういう髪型にするんや(笑)
貫:(師匠の)大橋先生との約束で100勝するまでは坊主なんで(笑)。たぶん普通に伸ばすくらいだと思います。なんかリクエストがあればお願いします(笑)
安:坊主、似合っとるで(笑)。とりあえずカツラ被せてどれが似合うか考えるか(笑)。しかし大橋先生はいい先生よ。人間的にすごくいい人や。
貫:他の若い調教師さんに「貫太をよろしく頼むな」と言ってくださっているのもよく聞きます。
安:人に恵まれとるね。
バックアップする師匠・大橋勇樹調教師(中央)
-:安藤さんは田口騎手に、この先どういう騎手になってほしいでしょうか。
安:やっぱり一流になってほしいよ。中堅くらいでずっと長く乗ってるジョッキーのほうが気楽だと思う。稼げるしな。でもG1に必ず乗っている、G1も勝てるジョッキーになってほしい。厩舎とか向こう側から有力馬を頼まれるには勝たないと馬が回ってこないからな。俺は貫太に期待している。一流ジョッキーになってほしい。
貫:もちろんジョッキーになったからには、そこそこで終わるのは嫌です。やるならやるで、一流を目指したいです。
-:安藤さんにG1勝ちを報告する日が楽しみですね。
安:もうすぐやろ?(笑)。でもどのレースでも勝とう、勝とうと思っちゃダメ。馬のリズムが崩れるから。4コーナー回って、これ勝てるんちゃうか?と思うくらいでちょうどいい。
貫:はい!色々参考になる話、ありがとうございました。
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