【特別対談part3】レジェンドが戸崎騎手に伝授!ダービーを勝つ秘訣あり!

約20万人の観衆が詰めかけた伝説の90年日本ダービーを勝った中野栄治元騎手と、ジャスティンミラノでダービー制覇を狙う戸崎圭太騎手のスペシャル対談第3弾!ダービーを勝ったジョッキーだからこそ言える、"ダービーの勝ち方"とは…

先駆者が語るダービー制覇の秘訣とは!?

——勝ちたいという気持ちと、リラックスのバランスの取り方は難しいですよね

中野:そこが難しい。戸崎君の場合は勝って当たり前の立場じゃない?逆に勝ちたいなら「勝ってやる」って上からのスタンスだよね。自分たちが1番強いんだって。

色々な馬がいて、どういう風にすればいいのか、準備があるじゃない?やっぱり勝負事は「心」だと思います。次に「技」でね。みんな「技術だ」って言うけれど、まず気持ちで勝たなきゃ。

戸崎:そうですよね。

中野:たくさん経験しているから、そういうことはないと思うけど、ダービーだけはね、 余裕がなくなるところもあるよね。勝ちたいと気持ちが先に行っちゃって。武豊くんやノリくん(横山典弘騎手)とかでさえ、アイネスの頃はまだダービーを勝ってないし、僕も勝ってない。だからみんな最後に勝ちに急いで甘くなると思っていたの。

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まだ勝ってないと、"勝ちたい、勝ちたい"ってなったり、もう"チャンスはこれしかない"とかさ、思っちゃうんだよね。ちょっと焦りが出ちゃう。うん。だから、もう大丈夫だ。今年は。

戸崎:いやいや先生、僕まだダービー勝ってないですから(笑)

中野:もう、そんなことは忘れた方がいいよ(笑)。相撲でも苦手な相手がいたりするかもだけれど、今回は"俺が1番強い馬に跨っている"くらいに思った方が、むしろ開き直るようになって力を発揮できるんじゃないのかな。昔の競馬は1レースに20頭以上いたわけだけど、5番手にいればそのレースは5頭立てだからさ(笑)

戸崎:さすがです(笑)

中野:俺のいる番手がそのレースの頭数だ、くらいの感覚でね(笑)。でも、そういう気持ちになるんだよ。負けたらどうしようとはみんな思うけれど、負けると考えちゃダメだし、信じて乗ることじゃないかな。

この馬はこうやって乗ってあげりゃ絶対に力を発揮するんだってね。それでいいんじゃないの。馬を信じることだよ。結果は結果だから。

戸崎:先生の頃と比べたら頭数は少ないですけれど、勝たなきゃいけないって思いながらダービーに臨んで勝つのは凄いですよ。先生はダービーを勝ったことによって、ご自身に色々変化はありましたか?

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中野:変化というか、ダービーを勝つとホースマンとしての"賞味期限"が切れないんだなと思った。20万人の大観衆のおかげで(笑)。それは冗談だけれど、"宝物"ですね、あの経験は。心の中の、私だけの宝物です。

戸崎:ダービーですもんね。僕は何というか、ダービーでさえもG1の中の1つという感じだったんですけど。やっぱり先生の中でのダービーは重要でしたか?

中野:特別。今、競馬学校の子なんかにインタビューしているのを見ると、ジャパンカップを勝ちたいと言うよね。それもありかなとは思うけれども、クラシックは関係者が4年前から考えているじゃない?牧場が何の種牡馬をつけよう、これつけてみようかっていうところから始まって。

まして一生のうち1回しかチャンスがないレースだから。クラシックはその年に生まれた馬にしか権利がない。そういう意味でちょっと違う。 天皇賞や有馬記念とも違う。そんなレースを勝つ馬に新馬から巡り合うのも運命的だよね。戸崎くんの場合は、どの馬を選んでいくか、という立場だよね?

戸崎:いやいやいや、そんなことできないですよ!ようやく出会えたんですから。

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中野:戸崎くんなら選べるでしょ?(笑)。でもひょっとしたら違う馬にも乗る可能性もあったわけで、僕たちとは時代が違うし大変さもあると思う。僕たちの時代は新馬を勝って、特別を勝った馬はエリート!って言われる時代だった。

今はもうトライアルがいっぱいあるし、ゆったりしたローテーション。いい素質がある馬が多くて、きっと選ぶのは大変なのかなと思う。馬を選ぶ時代だよね。

戸崎:そうでしょうね。クリストフ(ルメール騎手)とかはどれがいいかっていうのは考えるでしょうし。今は特に秋競馬は外国人騎手もいますからね。

中野:大変っていうか、やりがいがあるよね、選ぶっていうのはそれだけの人だからできること。昔は義理人情の世界で乗らなきゃいけないとかもあったけれど、今は責任が重い。こっちを蹴って乗った以上は、という責任感が重いよね。