研究員ヤマノの重賞回顧

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11月4日(日)、東京競馬場で行われたアルゼンチン共和国杯(3歳上、G2・芝2500m)は、2番人気のアドマイヤジュピタ(牡4、栗東・友道康夫厩舎)が、好位3番手からレースを進め、最後の直線で早めに先頭にたつとそのまま押し切り快勝した。

友道厩舎はこれで土日のメインを連勝で、厩舎関係者の喜びはひとしおだろう。
ところで、このアドマイヤジュピタだが、若駒Sで2着するなど早くからその能力の高さから将来を嘱望されていたのだが、当競馬ラボの『競走馬解体新書』にあるように、昨年右第3足根骨骨折という右後ろの飛節の骨折で1年5ヵ月もの休養を余儀なくされ、ここまで出世が遅れていた。
その若駒Sの優勝馬がフサイチジャンクなのだから、随分回り道をしてしまったものだ。
1年5ヵ月もの休養を必要とする骨折ということは、かなりの重症だったと察することができる。
しかもこの骨折は再発する可能性が低くはないらしく、今後も関係者の方々は常に気を揉まなければならないのかもしれない。
しかしこの苦難の道を乗り越えた果てには、かつて骨折を克服した名馬、トウカイテイオーやグラスワンダーのように栄光の道が開けているのかもしれないのだから、その苦労もきっと報われるに違いない。
この“骨折”を克服したアドマイヤジュピタの躍進は真に喜ばしい限りだが、それとは対照的に“骨折”というアクシデントから立ち直り切れずに苦しんでいるのがレースで1番人気に支持された敗れてしまったネヴァブションだ。
陣営の方々の苦労や努力は大変なものだろうが、何とか立て直してアドマイヤジュピタのような素晴らしい復活劇を見せてほしいものだ。
『無事これ名馬』という諺があるが、順調にきている馬ばかりが名馬となれるわけではない。
前述のトウカイテイオーやグラスワンダーのように骨折を克服した、名馬も確かに存在するのだから。


同4日(日)、ファンタジーS(2歳牝、G3・芝1400m)は、好位からレースを進めた4番人気オディール(牝2、栗東・橋口弘次郎厩舎)が、大逃げを打ったエイムアットビップをゴール前で1.1/4馬身差捕らえ、見事優勝を飾った。

二の脚を使って10馬身もの大逃げを打った快速馬エイムアットビップと、それを見事に捕らえたオディール。
今年のファンタジーSは、真に見応えのあるレースだった。
楽しみな馬がまた登場してくれたものだ。
ところでこのオディールは、見た目ではまだあまり特徴が現れていないのだが“芦毛馬”だということを皆さんご存知だろうか?
“芦毛馬”といえば、我々は芦毛の怪物オグリキャップのような白い馬体を想像しがちだが、芦毛でも若駒の頃は白さはさほど目立たない場合が多く、歳を経るごとに白さを増すというのが通常。
このオディールは確かにまだ2歳だが、それにしても本当に芦毛なのかと思うほど馬体に白さが見られない。
オディールという名は、バレエの『白鳥の湖』の黒鳥オディール姫が由来のようだ。
芦毛なのに、その名の通りまさか黒いままの馬体で成長してしまうということはないのだろうか?いや、まさかそんなことはあるまい。
芦毛馬と同様、白鳥も初めからあの輝くような白い姿をしているという訳ではないのは周知の事実。
成長するに従がって、あの輝ける白さを見に纏ってゆくものなのだ。
後年、様々な経験と実力を身に付けて逞しく成長した白い馬体のオディールが、ターフを席捲するその日が来るのが待ち遠しい。