研究員ヤマノの重賞回顧

トピックス

2月9日(土)、小倉競馬場で行われた小倉大賞典(4歳上、G3・芝1800m)は、道中、最後方を追走した中舘英二騎手騎乗の6番人気アサカディフィート(セン10、栗東・鶴留明雄厩舎)が、最後の直線でまくり気味に大外強襲、先に抜け出していた1番人気マルカシェンクを1.1/4馬身差交わして快勝した。
さらにクビ差の3着には7番人気シルクネクサスが入線した。

優勝したアサカディフィートは、これで小倉大賞典連覇、8年連続勝ち鞍を挙げるという快挙を成し遂げた。
さらにこの勝利は、10歳馬による史上初のJRA平地重賞勝利という偉業でもあった。
10歳という馬齢がどれくらい高齢なのかすぐにはピンとこないだろうが、アグネスタキオン、クロフネ、ジャングルポケットと同期だといえば、想像しやすいだろう。昨年大活躍した、ダイワスカーレット、オディール、トールポピー、このレースに出走したロジックは彼らの子供たちというわけである。
人間の歳に置き換えれば、40歳近くに相当する高齢馬が、最速の上がりを繰り出して、並ぶ間もなく他馬を抜き去るとは、何とも痛快だが、このところ、そんな高齢馬の活躍が目立つようになってきた。
シルクロードSで4着に激走したリキアイタイカンも、10歳馬という高齢馬だった。
高齢馬が活躍できる要因が、様々な技術の進歩によるものだとしたら、近い将来、競馬の可能性はさらに広がり、バラエティに富んだ様々な条件のレースが楽しめる日はくるのだろうか。競馬がもっと楽しくなりそうだ。

翌10日、京都競馬場で行われたシルクロードS(4歳上、G3・芝1200m)は、後方を追走した幸英明騎手騎乗の3番人気ファイングレイン(牡5、栗東・長浜博之厩舎)が最後の直線で大外から豪快に伸び、11番人気コパノフウジンを1.1/4馬身抑えて優勝した。さらにハナ差の3着に5番人気ステキシンスケクンが入線した。1番人気アストンマーチャンは10着に敗退した。

ファイングレインと言えば、インをすくって9番人気ながら2着に激走したNHKマイルCのイメージがいまだにある。
右前脚種子骨の骨折に苦しみ、前走、淀短距離S(OP)で復活の勝利を挙げるまで、実に約2年2か月もの歳月を費やしただけに、今回の勝利、陣営の方々の喜びはひとしおだろう。
特に所属の長浜厩舎にとっては、やはり長きにわたって勝ち星に恵まれなかったシックスセンスが復活(引退)した京都記念以来の重賞勝ちなのだから、感慨無量かもしれない。
ところで、このファイングレインや裂蹄により苦しんでいたインティライミなど、怪我や事故により長い間低迷していた馬の復活が、このところ目立つのは嬉しい限りである。
このような怪我を持つ馬にとって、弱い部分をサポートしてくれる頼りになる存在が、“馬装具”だ。
馬の馬装具の進化は、近年目覚しい。かなりの馬の復活に一役買っていることは言うまでもない。
競走馬につきものの怪我や事故が少しでも軽減できるよう、今後もさらに進化を続けて欲しいものである。

翌11日、東京競馬場で行われた共同通信杯(3歳、G3・芝1800m)は、好位からレースを進めた蛯名正義騎手騎乗の6番人気ショウナンアルバ(牡3、美浦・二ノ宮敬宇厩舎)が、道中再三にわたり口を割り掛かっていたにもかかわらず最後の直線では軽快に脚を伸ばし、内から差を詰めた5番人気タケミカヅチに1/2馬身差をつけて見事優勝した。
さらに3/4馬身差の3着には11番人気マイネルスターリーが入線。1番人気のサダムイダテンは5着に敗れた。

それにしても、同馬の今回の力走にはいささか驚かされた。
あれだけ掛かっていてのあのパフォーマンスは、能力がなければ到底できるものではないだろう。ポテンシャルの高さは計り知れない。
しかしながら、問題はやはりあの気性だろう。上に行けばいくほど、些細な事が勝負の明暗を分けるはずだ。
だから、現状では彼が能力を最大限に発揮できるベストの条件を探り出すことが、大きな課題となるだろう。
彼はこの気性難を乗り越えて、王道を歩むことができるのだろうか?
荒削りな現段階では、まだ過大な期待はできないかもしれない。
しかし、過去に気性難を乗り越えた名馬も数多くいたのは事実。
思い起こせば、昨年引退したダイワメジャーも若い頃は気性が難しかった。
このヤンチャなショウナンアルバの今後の動向、大いに気になるところだ。