
騎手時代に約20万人が来場した90年ダービーをアイネスフウジンで逃げ切った中野栄治元調教師が、
独自の視点で重賞の好調教馬を導き出します!
【皐月賞】悔しい思いをしたあの日から35年!レジェンド・中野栄治元調教師が推す伏兵!
2025/4/19(土)
当週 栗東坂路(稍重) | ||||||
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54.0 | 38.7 | 25.4 | 12.8 | 馬なり |
今週は皐月賞だね。もちろん思い出はあるよ!
その前に、今週水曜日に大井競馬場に行って来た話をさせてよ。以前管理していたガビーズシスターが出走していた東京スプリントの応援に行ったんだ。
結果は残念だったけれど、昨年の秋に入れ替えた大井のオーストラリア産の白い砂が合わなかったよう。引っ掛かりがなくて思うように進んでいかなかったからね。中央に戻れば違うと思うから、今後も応援してあげてほしいな。
さて、皐月賞の話をしよう。やはり僕にとって皐月賞といえば、アイネスフウジンで悔しい思いをしたレース。1990年の話だから、もう35年前か。
正直、当時は落馬さえしなければ皐月賞は勝てると思っていたんだ。でもレースには魔物が潜んでいるんだよねぇ…。
スタートしてすぐ隣のホワイトストーンがヨレてぶつかってきた影響で2番手になってしまったんだけれど、スローでも折り合ってしまったのでそのまま行かせたんだ。これが失敗だった。
本来スピードとスタミナに秀でた馬だから、早めに先頭に立っていれば良かったんだよ。なのに3コーナーで逃げていたフタバアサカゼの蛯沢誠治さんに「まだ早いっ」て言われてね(笑)
なので蛯沢さんには「じゃあ内だけ締めといて!」と言って、実際蛯沢さんは内を締めてくれたんだけど…ハクタイセイに差し切られてしまった。
昔の競馬はね、そんな貸し借りがよくあったんだよ。信じられないかもしれないけど。僕も自分の馬がバテてきたら進路を開けていたし、逆の立場なら開けてもらえたもの。あくまでこれは譲り合いというやつだ。
過去には人気馬に乗って、スタート後にムチを落としちゃったことがあるんだけれど、バテてきた馬のジョッキーにムチを借りて勝ったことがあったよ(笑)。今では笑い話。懐かしいねぇ。
懐かしくてつい前置きが長くなってしまった。今年の皐月賞の話をしようか。今年のナンバーワンはジョバンニだ。
賞金は足りているので直行でも良かったと思うけれど、馬の特性を重視したんだろうね。勝ち味を覚えたことも収穫だし、先週も今週も追い切りで気分良く走れていたあたり一度叩いて良かったかもしれないな。走りも弾んでいた。とても良い状態で本番に臨めると思う。
次はクロワデュノール。先週は少し重い感じがしたんだけれど、今週は良かったね。重厚感のある馬体でも素軽さがあったし、態勢は整ったんじゃないかな。
あとはミュージアムマイル。前走は多少余裕を持たせていたので、1回使った上積みは大きいね。馬体にも迫力が出てきたし、1週前はモレイラ騎手を背に余力を残しながら終いは切れた。
最後にマスカレードボール。器用さに欠けるようなところがあるので本来は広いコースの方が良さそうだけれど、1週前は反応良く伸びていた。今週は坂路でダイナミックな動きを見せていたし、きっちり仕上げてきたようだね。

マテンロウサン
11頭立てとそこまで頭数が多くなく、先行馬も少な目。これはマテンロウサンがハナを切れていい。前走はダートが合わなかっただけで、芝なら粘りも違ってくるんじゃないかな。
プロフィール
【中野 栄治】Eiji Nakano
1953年大分県生まれ、東京都出身。父は大井の元調教師という家庭で育ち、1971年に騎手デビュー。数多くの活躍馬に騎乗し、約20万人が詰めかけた1990年日本ダービーをアイネスフウジンで逃げ切り伝説を作る。1995年には調教師に転身。短距離G1を2勝したトロットスターなどを育て、日本競馬にその名を残した名ホースマン。