元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
名監督
2014/11/6(木)
我が家では競馬観戦をする際には、グリーンチャンネルと呼ばれる競馬専門チャンネル、BS11やフジテレビの競馬番組などを見ています。基本的にはグリーンチャンネルを見ているのですが、その中で、私が気になるのが、昨年の1月からキャスターについた小堺翔太君なのです。「ごきげんよう!」の小堺一機さんの息子さんで、就任当初は競馬についての知識も浅く、ただ進行を必死にやっているなという思いで見ていたのですが、最近の彼は競馬の知識も深く、聞いていても「なるほど!」と思わされるような発言をしており、この1年でどれだけ勉強したのだろうかと思うと、本当に尊敬してしまいます。
毎週競馬を見ているだけでは絶対に分からないことなども発言し、本当に努力し、競馬キャスターとしての仕事を真摯に受け止め努力しているのだと思わされています。最近のテレビでは原稿を読めればそれでいいというキャスターが増えてきています。しかし、彼のように心から感じ、競馬への愛を持って、進行してもらえるとホースマンにとっても、聞いているファンの皆様にとっても心地良いと思いました。これからも、更に頑張って、良い進行をしてもらいたいと思います。頑張れ小堺君!
そんな小堺君の進行に夢中だった中、東京競馬場では天皇賞(秋)が行われました。前回も書きましたがキズナと凱旋門賞組を除けば、日本最強クラスが集まった頂上決戦となったレースの1番人気には3歳馬イスラボニータが選ばれました。最強メンバーの中の1番人気に3歳馬が選ばれたことには少し驚きでしたが、パドックを見ると思わず「いい馬だなぁ」と呟いてしまっていました。その他にも、非常にパドックで良く見えたのがスピルバーグでした。
満員のスタンドが見守る中、レースはスタートしました。東京2000mのコースではスピードが出る前にコーナーを向かえるため、内枠が有利だなと思っていたのですが、まさに内枠のジェンティルドンナがベストポジションにつけ、ペースもゆったりとしたまま4コーナーを迎えました。すると内のジェンティルドンナを、外からイスラボニータが早々に交わし先頭に立ち、このまま押し切るか!?と思った矢先、外からトーセンラーの全弟スピルバーグが鬼脚を見せて差し切り、見事な勝利を挙げました。
北村宏司君は騎乗する度に良くなる、この馬の力を信じ、安定して出していた33秒台の脚を信じ、外に回し勝負したのは、スピルバーグだけに「JAWS」な騎乗でした。そして「E.T ※いいトレイナー」、競馬界の名将藤沢和雄先生は6年ぶりのG1制覇となりましたね。また、その勝利が、愛弟子が騎乗しての勝利だったことからも、嬉しさは何倍にもなったのではないでしょうか。本当におめでとうございます。2着には衰えても侮るなかれとばかり、ジェンティルドンナの健在ぶりには脱帽でした。イスラボニータに関しては、直線で先頭に立つのが早すぎましたね。今までのレースを見ていても、競り合うことで力を持続させることができる馬なので、その判断が今回は、敗因となったのだと思います。
6着に敗れたエピファネイアですが、あのレースはどうだったのでしょうか。当馬の強みとすれば、母親譲りの闘争心と、あの屈強な筋肉を活かした走りです。しかし、それは諸刃の剣で、折り合いを付けるのが非常に難しく、ステップレースを使っていない場合、その難しさはいつも以上になります。その上、前に壁を作れば突っ込んでいってしまうのが当馬だけに、外での競馬が理想になると思うのですが、内枠からスタートしゆっくり出すと、そのまま内で我慢することで折り合いをなくしてしまったことは残念でなりません。当馬の力を考えれば勝ち負けできるだけの資質を持っているだけに非常に残念なレースでした。あの荒々しさを前に進む力へと変わった時、当馬の本当の力が見られると思います!オルフェーヴルにも騎乗したスミヨンが騎乗することが決まり、ひと叩きあったジャパンカップでの巻き返しに期待します!
G1ウィークは一休みですが、重賞ラッシュは続きます。2歳重賞では京王杯2歳S、ファンタジーSに、ダートではみやこSに伝統のハンデ戦アルゼンチン共和国杯、そして障害では京都ジャンプSが行われます。その中で、私の注目は京都ジャンプSとみやこSです!以前も紹介した障害騎手の「レジェンドオブゾロ」ならぬレジェンドオブノブ嘉堂信雄が担当しているメイショウブシドウが出馬しそうですしね。嘉堂君は3日に行われたJBCでもサン(3)ビスタで勝利という結果を残しているだけに、ここでもレジェンドの力を見せ付けてくれるのではと思っています。
みやこSではJBCに参加しなかったダートの名馬達が出馬してくるだけに、こちらも目が離せません。特に注目は菊花賞を制した酒井騎手とのコンビで気になるニホンピロアワーズに前回王者ブライトラインです。多くの重賞があるだけに、今週は目移りしそうですが、後悔のない勝ち馬馬券を手にして下さい!負けても「バックトゥザフューチャー」はできないですかね(笑)!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。