![松田幸春](/img/column/judge/tit_judge.jpg?=v1)
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
スター候補生K
2015/8/20(木)
競馬では毎週の様に条件が変わり、甲子園と呼べる重賞レースが行われています。先週は新潟では関屋記念、そして札幌ではエルムSが行われました。まずレースの前に注目を集めたのは岩田君の重賞挑戦連勝記録ではないでしょうか。そのエルムSでは、やはり岩田君騎乗のジェベルムーサが向正面から早めの仕掛けをすると小回りを活かしたレースを行い、見事、参加重賞5連勝を飾りました。しかも、この記録にて豊ちゃんが持つ、重賞6連勝まで後一つと迫りました。
![ジェベルムーサ](https://www-f.keibalab.jp/img/upload/topics/201508/150816_jebelmusa.jpg?1457762520)
地方競馬を経験し、毎日のように馬に跨ってきたことに加え、負けん気の強さと人気馬でも大胆に動ける気持ちの強さがこの記録を作った大きな要因となっていると思います。騎手は人気馬に乗るとどうしても慎重になってしまうものですが、そこを大胆に乗る難しさを、いとも簡単にやってしまう岩田君には脱帽の言葉しかないです。今週も更に記録を伸ばすか、非常に楽しみになりました。
新潟で行われた関屋記念では、サマージョッキーシリーズを占う上でもミルコの騎乗に注目が集まりました。レースは残念ながら9着に敗れ、本人のコメントからも直線に入ってから馬が驚いたような素振りを見せ、脚が止まってしまったとありましたね。馬はもともと臆病な生き物です。それを踏まえた上で、走ることに100%集中させることができなければ、今回のように脚が出なくなることも多くあるんですね。見ている皆様からすると、なんであんな人気馬なのに止まってるんだよ!と思うこともあると思いますが、その原因のひとつとして、こういった事もあるのだと知っていて下さいね。しかし、敗れたとはいえ、久しぶりに手ムチを見ましたよ(笑)。
![レッドアリオン](https://www-f.keibalab.jp/img/upload/topics/201508/150816_redarion.jpg?1457762523)
直線でムチを落としたミルコが諦めることなく、手で馬を叩き、気合を入れている姿は少しでも上へと勝つ執念が見れた内容でした。この執念が彼の今までの成績を作ってきたのだなと関心をする騎乗でした。ミルコ・デムーロ改めミルコ・手ムーロのサマージョッキーシリーズ制覇を期待しています。そして、このレースで勝利を収めたレッドアリオンと川須騎手のコンビは、本当にマッチしていますね。今回は馬の気持ちを優先させハナをきると、直線では並ばれてから二の脚を使っての勝利で、クラレントに続く兄弟でのサマーシリーズ勝利となりました。毎回、馬の気持ちを優先させるだけではレースはできませんが、それでも今回の騎乗は大事にしてきた相棒の力を信じたからこそ出来た騎乗だったと私は思います。
今週は岩田君の重賞6連勝がかかった大事な札幌記念に、見事復活を果たしたベルカントが出馬する北九州記念が小倉で行われます。札幌記念はエアソミュールの捻挫、凱旋門賞挑戦を宣言していたルージュバックの発熱と回避報告から始まりましたが、2頭が抜けても、今年もいいメンバーが揃いましたね。まず、何と言っても注目はトーホウジャッカルではないでしょうか。金髪のタテガミをなびかせ、どこまで復活できているかに注目したいと思います。しかし、爪などに問題がある馬だけに札幌の洋芝は少し問題かも知れませんね。鞍上の酒井君も復帰戦の宝塚記念では大事に乗りすぎた部分もありましたし、今回は悔いのない騎乗をしてもらえたらと思います。
対抗に挙がるのは「夏は牝馬!」、牝馬の王者と言えば、この馬ではないでしょうか。そうですラキシスです。鞍上には引き続きルメールが選ばれたことと、馬体が思ったより減りすぎていない点は非常にプラスに感じます。その他にもやはり馬券対象に入ってくるか岩田君騎乗のダービーフィズに先週5勝の固め打ちをした川田君騎乗のラストインパクトとスターになる可能性を秘めた馬達の戦いだけに、非常に注目しています。KKコンビに新たなKの誕生だけにKがつく騎手にも注目を!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。