元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
福山ショック
2015/10/1(木)
次世代の成長と言えばJRAから新制度が発表されました。見習い騎手としての期間を3年から5年に延ばし、勝利数が一定数に行くまでは減量扱いとなる制度です。これにより、若手の騎乗回数アップと技術向上が見込めますからね。しかし、単に期間を長くするだけではなく、減量の増減や若手競走の増加、それに以前ミルコがインタビューで言っていた若手に世界の経験をさせるプログラムなども必要となってくるのではないでしょうか。日本の競馬の技術は世界でもトップを誇ります。しかし、それはサッカーや色々なスポーツでも言われていますが、勤勉な日本人は技術を持っていても、それを発揮するメンタルとズル賢さがないと感じます。それは、まるでリフティングが日本選手に比べれば、下手なドイツ代表が試合では強いメンタルと屈強な体を活かし、勝利を手にしているように競馬も技術だけでなく、勝ち抜くためのエゴが必要だと思うからです。それを手にするのはやはり海外での経験やレースに騎乗し、得るものだと思っているからです。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。まずは、何と言っても神戸新聞杯からです。復活したリアルスティールが1番人気に推奨され、その次には未完の大器マッサビエル、そしてダートから芝に転身したリアファルが続く形となりました。レースは、スタート一番、ペースが遅いとみるやいなや、ストライドの大きい馬だけに細々した所に入れるより、気持ちよく走らそうとルメール騎乗のリアファルが先頭に出ると、超スローペースに持ち込み、迎えた4コーナーでは、馬が手前を替えるまでじっくりと待ったルメールの好判断が馬にフィットし、見事な逃げ切りで勝利しました。
しかし、ルメールというのは本当にじっくりと自分のペースを守る騎手ですね。周りが動こうが、自分はこうだ!と決めた乗り方をするので、見ていても清清しいです。勝利後に、一人でインタビューを受ける姿は、以前の大阪杯に比べて成長した日本語を披露してくれましたし、本当の意味でJRA所属となったのだなと思わされたレースでした。そして、2着にはリアルスティールが入りましたが、これは骨折明けや休養明けを考えれば十分だったのではないかと思いますね。久々の面からも折り合いに重点を置いたレースとなりましたしね。しかし、折り合いがつくことは分かりましたが、今の競馬で本番の菊花賞で距離が保つかや勝てるかと言われれば疑問が残りますね。勿論、持っている能力は非凡なものがありますけどね。本番までの間に、矢作先生がどの様な秘策に討ってでるのか非常に楽しみです。
中山では古馬戦線オールカマーが行われ、見事ショウナンパンドラがヌーヴォレコルトを交わし、勝利しました。マイネルミラノがハナを奪い、少し早くなる流れを読み、じっくりと溜めた脚を爆発させた謙一君の騎乗は見事としか言い様がなかったですね。ヌーヴォレコルトも内を果敢に攻めての2着は岩田君らしさと技術の高さが出た良いレースだったと思います。しかし、少し残念なところでもありました。やはり勝負の世界としては柴田大知君には、内を閉めるくらいのトライを見せて欲しかったですね。勿論、馬に脚がなく、安全に終了するためには正しい騎乗だったとも思いますが、競い合いという意味では少しファイトが見られなかったかなと思うからです。そして、4着に敗れたロゴタイプは、やはり距離が長かったですね。次走はマイルに変更するみたいですし、皐月賞馬がもう一度輝く瞬間に期待しています。
今週は秋のG1シリーズが開幕します。まずは中山で電撃の6ハロン戦スプリンターズSが行われます。中山の短距離となれば外枠が不利になるレースだけに枠順も気になりますが、今回のレースはメンバー的にも非常に混戦模様ですし、荒れる馬券にも期待したいと思います。その中で、まず私の注目はやはりウリウリですね。前走は大外枠に泣かされつつも見事2着に入ったところからもスプリント戦に挑戦してからは安定した結果を出しているからです。更に先週の岩田君を見ていると鞍上もプラスポイントになるのではと思っています。そして、2番手には重賞連勝中で、豊ちゃんに重賞300勝をプレゼントするかベルカント。そして、個人的に今回は攻めた勝負をして欲しいティーハーフにも期待しています。
福山雅治さんの結婚というビックニュースが流れ、中山の最後の坂と桃色帽子やサクラゴスペルに福山さんの名曲をかけ「桜坂」馬券が飛び出すのか!?今週は「あんちゃん」からも目が離せません(笑)。
※あんちゃん…競馬界では若手騎手の呼名。「ひとつ屋根の下で」より福山さんの名言。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。