元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
歴史の一ページが開く?日曜日
2016/9/29(木)
皆様、こんにちは!相撲界では豪栄道関がやってくれました!4度のカド番を味わいながらの全勝優勝は、日本人として痺れた場所となりました。相撲も休みが殆どなく、毎日のように稽古に大会にとなる中で、怪我なく戦いきるだけでも大変なのにも関わらず全勝ですからね。ただ、一場所だけ強さを発揮しても認められないのが相撲界。次場所でも、今場所のような強さを継続し、大横綱の白鵬関を倒し、再度優勝して欲しいと思います。
競馬も怪我と向き合うのが大変なスポーツです。しかし、馬の脚というのは見極めが難しく、いつまで経っても100%の答えがないスポーツだと思います。今回、凱旋門賞に挑戦するはずだったラクレソニエールは非常に残念な結果となりましたね。まだ怪我の詳細は出ていませんが、凱旋門賞に不出馬が決定しましたからね。チームジャパンとしては、大きなライバルが減ったことでチャンスが更に広がりましたが、私個人としては、フランスの無敗の女王を最強の舞台で見たかったと思っています。
チャンスが回ってきたマカヒキにとっては、日本初の凱旋門賞制覇が現実味をおびてきました。今回、フランスの舞台を知り尽くしたルメールを騎乗に選んだ辺りも、プラスに働くのではないでしょうか。あとの敵は馬場になるでしょうね。雨が多く、高低差が激しい競馬場をマスターすることが出来れば、今週は日本競馬にとって歴史の一ページを開くことになるかも知れません。
先週の競馬を振り返りましょう。まずは、菊花賞を目指す馬が出馬した神戸新聞杯ですが、フランスに旅立つ前の景気づけ一発といわんばかりにルメール騎乗のサトノダイヤモンドが勝利しましたね。レースも磐石の態勢で運びましたし、結果も出ました。しかし、なぜでしょうか、本番には少しクエスチョンが付くレースとなったのも確かです。それは、今回のレースで感じた距離の壁があります。折り合い自体には、本番では問題ないと思いますけどね。馬自体が育ち過ぎたような印象を受けました。
逆に本番に向けて、更によくなりそうに感じたのがカフジプリンスとレッドエルディストでした。この2頭は距離が更に伸びても良さそうでしたし、本番では逆転もあるかもしれないと感じさせられましたね。最後の一冠をかけて、王者不在の中、冠をもぎ取るのはサトノダイヤモンドなのか、それとも違う馬なのか。非常に本番が楽しみになったトライアルでした。
中山で行われたオールカマーではゴールドアクターが見事なまでの勝利を収めましたね。完璧なレースを繰り広げたサトノノブレスと並ぶも、並べば抜かせない勝負根性を見せ付け、こちらも完勝といった競馬でした。今年の春は距離の壁に泣きましたが、得意距離に戻れば、まさに最強と言うのに相応しい馬ですね。
そして、負けはしましたがマリアライトに関しては納得のレースでした。この秋G1戦線に備えた仕上げをしていたでしょうしね。しかし、馬場がゆるかったら結果は逆になっていたとも思います。個人的にはマリアライトこそが、シャンティーの馬場が合うとも思っています。怪物を倒した女王の復活に期待を残しつつ、最強馬への階段を登り始めたゴールドアクターにも注目と実りの秋となりそうです。
実りの秋、G1の秋と今週からG1戦線が始まります。まずは中山で、電撃の6ハロン戦スプリンターズSが行われます。1番人気に推奨されるのは、春のスプリント界を騒がせたビッグアーサーでしょうね。前走は逃げの戦法で見事な勝利を治め、父サクラバクシンオーを彷彿させる走りは期待せざるを得ないと思います。しかし、前回でも書いたように、心配も残ります。その心配を吹き飛ばすような走りをしてくれるのか、非常に楽しみにしています。
2番手には休み明けのミッキーアイルが選ばれるでしょうね。今回は乗り込みを強めにしていることで、究極の仕上げをしてくるでしょうし、騎乗する松山君にとってはJRA のG1初制覇の大チャンスがきたのではないでしょうか。その他には、前走、コースがなく中々追うことができませんでしたが、スムーズなら競馬ならばのダンスディレクター。そして、1200m無敗の芦毛二頭、レッドファルクスとブランボヌールも押さえたいところです。騎手としては弾みをつけたい秋のG1戦線の開始。一体、どの馬が力を見せ付けるのか?筋書きのないドラマは今週日曜日です!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。