元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
目指せ本格的な二刀流
2017/10/4(水)
皆様、こんにちは!今週は清宮幸太郎君の進路に野球界がザワついた週になりましたね。高校通算111本塁打を誇る、ジュニア時代には世界で優勝をもしたスラッガーが、大学進学ではなく、プロへの進路を発表しました。これにより10月26日に行われるドラフト会議では、多くの球団が第一候補へと指名することになりそうです。まさにドラフト会議での圧倒的1番人気をどの球団が射止め、どのように成長させるプランを出すのか、非常に楽しみです。勿論、我が巨人軍に来てくれたら一番嬉しいですけどね。私の予想はオカワリ君を育てたライオンズが引きそうだなと勝手に思っています(笑)。二刀流・大谷翔平選手以来のビックウェーヴに心は躍ります。
それでは先週の競馬の話をしましょう。まず、日本で行われたスプリンターズSでは、清宮君同様、1番人気に選ばれたレッドファルクスがG1になってからサクラバクシンオーとロードカナロアしかなし得なかった連覇で優勝しました。混沌とされるスプリント界と言われていましたが、この勝ちっぷりは絶対的王者の存在だと教えてくれるようなレースでした。スタート直後、ワンスインナムーンがスッとハナに立つと、2番手にはダイアナヘイローがつける形となりました。少し遅いなと感じた向正面では、スタートで寄られて少し引っかかり気味になったファインニードルが突っかける形となりました。
王者ファルクスは、それを見ながら内々を回る展開となり、4コーナーでは「出せればまだあるぞ!」と思わず叫んでしまいました。逃げるワンスインナムーンを内からレッツゴードンキが強襲する中、見事な進路を取ったレッドファルクスとミルコが手前を替えた瞬間、勝ったと思いました。しかし、ミルコという騎手は本当に勝負掛かっていますね。普通の騎手ならば慌てて追ってしまう所で冷静に坂を上るまで我慢させると一気に手前を替え、素早くムチを持ち替えて一気に差し脚を伸ばさせたのは流石の一言でした。あのムチの持ち替えは本当に騎手の中でも随一の上手さだと思います。
そして、何よりもレッドファルクスの力も称賛したいです。あのペースの中で、いくら豪腕の騎手が追ったとしても、あの末脚を出せるのは本当に気持ちも能力も高い馬でないとできません。鉄砲がきく馬とはいえ、馬のことを理解し、スケジュールを組み、仕上げてきた陣営の勝利だったと思います。次の予定が気になるところですが、私の希望としては来年のフェブラリーSを狙い、スプリンターからマイラーだけでなく、ダートでの大谷流ならぬ二刀流で伝説を作ってもらいたいと思います。
フランスで行われた凱旋門賞では、怪物エネイブルが圧巻の走りで見事な優勝を飾りました。残念ながら日本から挑戦したサトノの2騎は見せ場なく終わってしまいましたね。しかし、私は挑戦したことに意味があると思っています。今回の負けで、またひとつ経験を積むことができました。日本競馬界として、悲願と呼ばれる勝利にはひとつずつ積み重ねるしかありません。そう言った意味で、今回の挑戦もまた意味のある敗戦だったと思います。しかし、サトノダイヤモンドの負け方は少し気になるもありました。敗因を馬場だけと限定できないような、まるで息が入りきっていないような止まり方に、喉が万全ではないのではと感じてしまいました。あれだけの名馬です。日本に帰った後はゆっくりと休み、検査をして、再度ターフの上に姿を見せてくれることを楽しみにしています。
今週はまたもや3日間開催!月曜日まで競馬を楽しみましょう。土曜日はサウジアラビアロイヤルC、日曜日は毎日王冠、そして月曜日には京都大賞典が行われます。まずサウジアラビアロイヤルCでの私の注目はステルヴィオと北海道期待の星ダブルシャープ、初戦の走りが素晴らしかったスワーヴエドワードとダノンプレミアム。毎日王冠はマカヒキの復活を期待しつつも、ソウルスターリングと古馬の比較、そしてグレーターロンドンの末脚。京都大賞典ではシュヴァルグランの圧倒的な走りに期待しています。今週からは東京・京都に開催替わり!皆様、お間違えなく!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。