元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
腹をくくったベテランの好騎乗
2018/1/31(水)
皆様、こんにちは!先日、JRA賞受賞式が東京で行われましたね。騎手部門では3冠をルメール騎手、そして1冠をデムーロ騎手が取る結果となりました。特にルメール騎手の昨年はダービー・オークスの制覇と、まさに運を全て使った!というくらいの年になりましたね。勿論、ミルコもミルコロガシという言葉が生まれた程の活躍で違う馬での年間G1 ・6勝と大暴れで、二人揃って大活躍の年となりました。そして、馬の方では無敗で2歳G1を制したダノンプレミアムやラッキーライラックなどが選ばれ、やはりトリは年度代表馬キタサンブラックでしたね。生涯獲得賞金でもレコードを更新し、まさに圧巻の最後だったと思います。次は父として、どのような活躍をしてくれるのか、非常に楽しみです。
先週の競馬の話をする前に、少し疑問に思った採決内容について考えてみたいと思います。先週、ルメール騎手と和田騎手が騎乗停止処分となりました。この2つの案件は両者に対し2日間の騎乗停止に加え、加重制裁のため2日間を加えて4日間となりました。しかし、この内容に少し疑問を持っています。ルメール騎手の場合、自らの右ムチを使って斜行ののち、ハナ差の2着馬に被害をもたらしました。着順の変更はないものの、2日間で済むというのは少し?がつく内容でした。こちらは12月の本人がした内容と似ており、その際は4日間でした。
それに比べ和田君の場合、騎手自身はもたれる馬を必死に右ムチを使い左に治そうと努力するも、もたれ続けたこと。これは、馬が手前を換えずにモタれた有馬記念のスワーヴリチャードと同じような現象だったと思います。被害馬が多かったことからも、有馬記念と同じ日数というのは理解できますが、それに比べると、ルメール騎手の処分は少し軽すぎるのではないかと思います。特にゴール前でおきた事象ですし、ましてや同じような内容で12月にも4日間騎乗停止になっていることを踏まえると、4日間+加重制裁の6日間の騎乗停止が妥当だったと考えます。同じ日に騎乗停止が出た場合、その比較を皆様もしてしまうことからも、違いや判定内容を表に出してもらえたらと思います。
続いて見事な復活をしたノンコノユメと根岸Sの話をしましょう。去勢後、なかなか結果が出せずに悩んでいたノンコノユメがとうとう復活しました。馬体重も10キロ増とやっと戻ってき、鞍上にも追える内田君と全てにおいて、向いたレースになったと思います。レースはスタート一番、サイタスリーレッドがハナを奪いにいき、地方馬ラブバレットが続きました。その他にも地方に移動してから力を発揮しているブルドックボスと続き、迎えた4コーナー。ブルドックボスの手応えが十分な中、後ろからはキングズガードが内から伸びるか!?と期待していると外からサンライズノヴァが楽な手応えで他馬を交わしていきました。
更に外からはノンコノユメが昔の鬼脚を復活したとばかりの追い込みで、最後は競り合うサンライズノヴァとの叩き合いを制し、見事な復活勝利をあげました。休み明けの武蔵野Sくらいから復活の兆しが見えていましたので、ここで来たか!というような感情になりましたね。内田君も腹をくくった騎乗で、見事に勝ち切ったことは非常に大きかったと思います。やはり、騎乗する側としては、あの競馬をするには大きな決意がいりますからね。やりきった内田君とそれに応えたノンコノユメだからこその勝利だったと思います。
さて、今週からは2場開催に変わります。まずは、何といっても東京新聞杯は好メンバーが揃いそうですね。なんと言っても注目はグレーターロンドン。前回は急な仕上げになってしまったことなどからも負けてしまいましたが東京1600mは、まさにこの馬の庭ではないでしょうか。そんなマイルでは意地を見せたいダノンプラチナも負けていません。その他にも騎乗が未定のアドマイヤリード、ここから力を見せつけるであろうリスグラシューなど牝馬からも目が離せません。
きさらぎ賞での注目はやはり、皐月賞馬アルアインの弟ダノンマジェスティが注目を集めると思います。初戦の勝ち方でも、仕上げ半分のまま、才能で勝ちきったところがありますし、あのモタれながら33秒の末脚は驚異でしかありません。その他にも、見直したいグローリーヴェイズにカツジ、新馬戦の勝ちっぷりからもサトノフェイバーまでケアしたいと思います。この中に今年、はたまた今後のJRA賞を受賞する馬が出てくるのか。皆様、是非チェックを!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。