元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
雨もしたたるいい男
2018/5/15(火)
皆様、こんにちは!今週は衝撃的なニュースが走りましたね。新潟県で小学2年生の女の子が殺害され、線路に置き去りにされました。犯人として逮捕されたのは近所に住む男で、車で女の子をケガさせパニックになり首を絞めたとありました。しかし、その時には命もあった女の子を殺し、さらに線路に置いたというのは残虐極まりない行動で非常に腹が立ちました。過ぎてしまったことは返ってきません。そのことを犯人には、もう一度考えてほしいです。命とはそれほどまでに、尊いものですから。
それでは競馬の話に参りましょう。女の戦いヴィクトリアマイルが先週の日曜日 東京競馬場で行われました。豪華メンバーが揃う中、1番人気には着実さが売りのリスグラシューが選ばれました。レース前から降り始めた影響で馬場が緩くなり、非常に難しい展開になるなと思っていたレースでしたが、結果は先週の更新でも触れたとおり、ジュールポレールと幸君が見事な勝利をあげました。雨のG1で幸君は2勝と、まさに「雨もしたたるいい男」という結果でしたね。
レースは予想通りにカワキタエンカが逃げる中、エテルナミノルやレッドアヴァンセが続きました。中団には雨が得意なアドマイヤリードがレッツゴードンキの後ろにつけ、外にはリスグラシューという形になりました。しかし、向正面ではアドマイヤリードがラチに寄るような走りをしており「これは牝馬特有の調教は良かったのに走れないやつだ」と察知しました。迎えた4コーナーではレッドアヴァンセがスルスルと抜け出すと残り少しのところで外からジュールポレールとリスグラシューが交わし、見事ジュールポレールがハナ差制しました。私は昔から注目していたので、やはりこの馬だったかという印象を受けました。
2着にはリスグラシューが入りました。またもやG1での2着に、陣営としてもガッカリという結果だったのではないでしょうか。枠が影響したのか、はたまた持っていない馬なのか……。今年の牝馬界はリスグラシューを中心に回っていく気がしていただけに、ここでも殻を破れないかと悔しい思いになりました。3着にはレッドアヴァンセが入りましたが、これは本当に頑張りましたね。北村友一君も非常にいい乗り方をしました。先週のミルコと同様、勝つためのコースが開くのが少し早かったと言ったところでしょうね。しかし、この騎乗を続けていれば、次のG1ジョッキー誕生は間違いなく友一君になると私は思っています。
連続G1はまだまだ続きます。今週は牝馬クラシック2戦目オークスが行われます。東京2400mということで枠が非常に大事になるレースだけに発表が待ち遠しいのですが、注目は何と言ってもアーモンドアイでしょうね。前走、前々走と圧巻の走りに衝撃が走りましたが、今回も枠次第で期待して良さそうです。しかし、心配は枠だけではなく距離にもあるでしょうね。折り合いに関しては問題がないでしょうが、それでも本質的な走りは走ってみないと分かりませんからね。
今回こそはリベンジとラッキーライラックも虎視眈々と逆転を狙っています。こちらはオルフェーヴル産駒だけに、ここから更にもう一段の成長に期待しています。その他には角居三銃士からも目が離せません。ランドネに関しては逃げればしぶとい脚を使ってくれますし、カンタービレは折り合いがつけば今の馬場では面白い一頭です。サトノワルキューレは見えない疲労との闘いになるでしょうね。牝馬特有の中にある疲れが取れていれば、こちらもまた最強の2頭に対抗できる一頭だと思います。女王アーモンドアイの二冠なるか、それとも逆転はあるのか?非常に楽しみな戦いになります」
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。