元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
何の日?
2021/1/18(月)
皆様、こんにちは!先日の2021年1月16日は天赦日と一粒万倍日という縁起の良い日程が重なる珍しい日ということで、テレビでは結婚報告などが飛び交いましたね。ただ、いつも個人的にはこの縁起の良い日というのはどれだけ縁起が良いのかと疑問に思ってしまいます。結婚したら離婚しないのが縁起が良いのか、それとも幸せになるために別々に歩みだす人達は、縁起がいい日に結婚したから別々の道へ進めたということで幸運なのか……。
もちろん人それぞれですが、どこに縁起の良さが実証されるのだろうと疑問に思ってしまいます。競馬も人もひとつずつの積み重ね。縁起の良さよりも1日1徳を積むように、気をつける方が幸せなんじゃないか?とすら思ってしまいます(笑)。
そんな幸運な日ということで、馬券を買った人達にも幸運が訪れていたであろう16日には中京競馬場で愛知杯、17日には日経新春杯、中山で京成杯が行われました。今回のこの中から2レースを振り返りたいです。中京で行われた日経新春杯では、団野君がショウリュウイクゾでやりました!以前から大人しそうなのに勝負になると肝が座っているなと感心していたのですが、まさにそれが結果へとつながりました。
先週、中京の馬場ではオルフェーヴルやゴールドシップのようなステイゴールド系が活躍し、ルーラーシップ産駒も勝っていたことからも、通常行わない時期での開催に痛んでいるのか、パワーがいる馬場になっており、パワーが強い血統が結果を出していました。今回はその馬場適性もあってでしょうが、勝負の決め手となったのは出走を決断してきた陣営と団野君の一生懸命さだったのではと思います。
通常なら3~4コーナーにかけて駆け引きを行ったりしますが、人気馬が少しゆっくりと構えるところ、彼は逃げ切っていたイメージからも早め抜け出しを選択しました。これが素晴らしかった。騎手も人ですので、勝つとそのイメージが1日残ることがあります。そんな彼は逃げ切った前が止まりにくい馬場であることをイメージできていたんだと思います。
直線に入り手前を換えると一気に他馬を突き放し、見事な勝利を挙げました。2着にはその馬場の中、軽ハンデもありましたが松若君が腹をくくった騎乗でミスマンマミーアを持ってきて、若手の活躍が目立ったレースとなりました。現状ではルメール1強となっている騎手の中に、日本人魂を持って頭角を現してきてくれたのは本当に嬉しいことです。
中山で行われた京成杯では王者ルメールが2週連続の重賞制覇、グラティアスで勝利しました。こちらも日経新春杯同様メンバーの質としては少し??がつきますが、それでも素晴らしい走りをしました。レースはスタート後、タイソウが少し内にモタれながら出ると、隣のタイムトゥヘヴンは体制を立て直しながら少しおっつける仕草をしました。最内枠ということもありベストポジションを取りたかったのでしょうが、ここで馬が行きたがる素振りを出し、他馬も来ないことから逃げの手となりました。
ペースはかなり遅く、4コーナー手前では焦った他馬が一気につめよってきました。しかし、ルメールは動かずじっと周りを見渡していました。ここで収まりをつけるということが素晴らしく、馬の気持ちを大事にしながらもコントロールできているからこそのレースで、4角で逃げていたタイムトゥヘヴンが外へ進路を選ぶと、開いたスペースに一気に入り込みました。
この一瞬の判断の素晴らしさ、それに反応した馬のセンスと瞬発力を見た時、更に上へと行ける可能性を見せられた気がしました。直線も少し痛んだにせよ、まだまだ走れる内の芝を一気に走らせ楽勝のゴールインとなりました。2着には相手が悪かったにせよ勿体ないレースとなったタイムトゥヘヴン、3着にはテンバガーとなりました。中京は若手の活躍、中山ではルメールの技術炸裂と非常に面白い2レースだったなと思います。
無観客競馬が続きますが、今週も重賞が開催されます。中京ではダート重賞の東海Sが、中山ではアメリカJCCが行われます。その中でも私の注目は中山実績のあるサトノフラッグになります。戸崎君の2週連続勝利がかかるレースとなりますが、実績は十分だと思っています。ヴェルトライゼンデや逃げてレースを作ってほしいウインマリリンもいます。
しかし、今回は穴候補も面白い気がしています。ジェネラーレウーノや忘れたころのステイフーリッシュ、ラストドラフトなどが上がります。個人的にはサンアップルトンが来たら嬉しいんですけどね。今週の日曜日は天赦日と一粒万倍日ではなく、皆様の万馬券記念日になるよう、願っております!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。