元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
栄子ちゃん!
2021/1/27(水)
皆様、こんにちは!例年よりも暖かい気候に、寒さが嫌いな北海道出身の私は嬉しい冬を過ごしています。しかし、例年よりも暖かいということは温暖化が進んでおり、我々人間たちが世界を変えてしまっているのではないか?と喜んでばかりはいられない状況に気を引き締めている最近です。昔はノストラダムスの大予言が流行っていましたが、便利になることの引き換えに何かを知らず知らずのうちに無くしてしまっているのは、人間のエゴかもしれませんね。バランスを見ながら、私も気をつけないとなと改めて思いました。
少し哲学的なことを書いてしまいましたが、競馬界でも哲学者の名前を引き継いだアリストテレスがアメリカJCCで見事に重賞初制覇しました。中山競馬場は前日からの雪予報で荒れる馬場が予想された中、雪ではなく降り続いた雨で、馬場はぐちゃぐちゃになっていました。こうなると、事前の予想はほぼ無意味になり、馬場適性と体力が勝利するためには必要になりました。
直前の動きからも今回は叩きかなと思っていましたが、馬場を味方につけ押し切ってのレースは貫禄の表れだったと思います。鞍上ルメールは今年に入ってから3週連続の重賞制覇となり、テレビのレギュラーかのように毎週顔を見せてくれています(笑)。しかし、今回も馬に無理をさせず、力を出し切るレースをしたからの勝利であり、この馬場や展開に応えた馬の頑張りあっての勝利だったと思います。
2着にはヴェルトライゼンデが入り、4歳馬のワンツーフィニッシュは今年の楽しみとして大きなものがあったなという結果になりました。逆に期待していた中山のサトノフラッグは道悪の内枠が仇になり、思ったような走りができなかったですね。ただ、見限るのはまだ早いと思いますので、改めて中山で見てみたい一頭です。
中京で行われた東海Sではオーヴェルニュが見事なレースで勝利しました。初めての勝利は1200mダートで、そこから少しずつ陣営は距離を延ばせるように調整してきました。その結果がこの勝利の要因だと思います。ましてや今回のようにクラスが上り、ペースが速くなることで走りやすくなった気もしました。鞍上の川田君も今年勝利数が伸びない中でしっかりと勝ち切ってきたのは流石の一言でしたね。
担当の梅内栄子ちゃんは、私が昔、少しお世話になっていた梅内厩舎の娘さんですが、男社会の中で、女性のパイオニアとして道を広げてきた一人。そんな彼女がプロとして自分自身の成長をするために続けてきた努力が、ここで初重賞制覇という形で花開いたことは非常に嬉しく思います。西村調教師の「次がどこになっても栄子さんがしっかり仕上げてくれます」というコメントには感動しました。
外から見れば雇主と従業員。しかし、それ以上に信頼関係があるからこそのコメントだと感じたからです。西村厩舎の勢いには、こういった従業員との信頼関係も好調の要因になっているのだなと思わされた勝利だったと思います。
中山開催が終了し、今週からは東京・中京・小倉の開催になります。例年以上に使用している中京の馬場は、見た目以上に傷んできていると思います。逆に東京の開幕週は前が止まりにくい馬場になるでしょうから、しっかりとそのあたりも頭に入れて皆様には予想してもらえると当たりやすくなると思っています。そんな東京では根岸S、中京ではシルクロードSという重賞が行われます。
特に注目したいのは根岸Sです。フェブラリーSに繋げるための一戦で距離は本番よりも1ハロン短くなりますが、非常に楽しみです。人気の中心は左回りの1400mにはめっぽう強いアルクトスではないでしょうか。調教では少し動きが重く映りましたが、あの追い切りで変わってくることを願います。そして、私の注目はレッドルゼルになります。前回は直線が短い中山で素晴らしい走りを見せてくれましたが、直線の長い東京に替わることもあり期待が上がってきています。気になる点とすれば開幕週の馬場がどう出るですが、涙の師弟コンビでのG1勝利から続いての重賞制覇を期待したいです。
その他にも初ダートのステルヴィオや距離短縮がどう出るかタイムフライヤーのG1馬に新星テイエムサウスダンやニューモニュメント、外枠がほしい古豪サクセスエナジーなど、クリソベリルが不在となったダート界は混戦必至。皆様の万馬券大予言でぜひ勝利を手にしてください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。