元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
起きろ善臣!
2021/8/12(木)
皆様、こんにちは!世間はお盆休みに入り、私もお墓参りに行ってきました。最近では運転するのが少し怖くなってきたため妻と電車で向かうのですが、今年は息子たちと共に車で行きました。帰りにはなかなか普段入らないケンタッキーに行き、私の好きな辛いチキンを食べましたよ。不思議な組み合わせですが、我が家ではお墓に行くと息子達とファーストフードを食べるというオリジナルルールがあります。今までだと考えられないような形ですが、これはこれで孫も含め楽しみになり、この歳でファーストフードはと思いますが、自分の想像にないことが楽しみに変わっています。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。まずは、ダート界の登竜門レパードSが新潟競馬場で行われました。3歳のダート重賞が少ないことからも、ここに集結するため勝ち上がることが難しいレースですが、今回制したのはメイショウムラクモと柴田善臣君のコンビでした。善臣君といえばJRAの最年長現役騎手で、今回の勝利でJRAの最年長騎手重賞勝利にもなりました。ただ、今ではベテランと呼ばれている彼も、私と同じ騎手時代には起きるのが苦手な若いあんちゃんで、なぜか先輩の私が札幌で起こしに行ったこともあったのを思い出します。
そんな彼が今も現役で続けていることを心から応援しています。ですので、今回の勝利は非常に嬉しかったですね。外枠から上手く3番手につけると、直線ではムチを落とすも圧勝でした。コメントでは「100%陣営の力です。今日は邪魔をしてしまいました」と言っていましたが、スムーズなレースへと導いたことは勝因のひとつでもあります。全てにおいてそつがない動かし方は、さすがベテランの一言。この翌日にはリュウノユキナで盛岡のクラスターCも制し、かつて「起きろ善臣!」と言っていた甲斐があったなと、ふと昔のことを思い出せてくれる大活躍でした。
最終週となった函館ではエルムSが行われました。期待していたアメリカンシードは、内枠が当たった時から嫌だなと思っていました。今回のレースは鼻出血での敗戦となってしまいましたが、前に馬を置く形でもレースできたというのは収穫もあったと思います。ただ、やはり良さとしては気持ちよく走らせるほうがいいのかなと思ってしまいましたね。
そして、このレースを制したのはスワーヴアラミスと松田大作君でした。今回はチークをつけた効果もありましたが馬の特徴をよく捉え、最後まで気持ちを切らさずに追い続けたことが勝因だったと思います。2着にはオメガレインボーが入り、マリーンSの1.2着馬がそのままという結果でした。こちらはまだまだ伸びしろがありそうで厩舎も理解しながら作り込んできてるなという印象を受けました。ウェスタールンドは次回に期待したいというレースでした。
今週からは、新潟・小倉・札幌開催になります。早速、新潟では関屋記念、小倉では小倉記念が行われます。夏競馬の重賞ということで、メンバーとしてはどちらも少し足りない馬達が多いかなと思う中、関屋記念に出てくるソングラインには別格の期待をしたいと思っています。51キロという斤量も良いですし、少し前のプリモシーンに重なってしまいます。きっちりと結果を出す謙一君が乗りますし、期待も更に膨らみます。
そして、謙一ではなく健一である藤岡調教師のグランデマーレにも注目したいです。激しい気性でなかなか上手く走れていなかった中、少しずつ頭角を現してきた一頭。ここ2戦での勢いもプラスして結果を見せてほしいと思います。去年の覇者サトノアーサーも馬場が悪くなれば見くびれません。前走で重賞制覇したアンドラステ、長い直線が得意なシャドウディーヴァもいます。穴候補としてパクスアメリカーナとブランノワールにも注目しながらレースを観たいと思います。馬券も自分の想像を超える組み合わせを是非!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。