元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
雨とムチと飴
2021/8/19(木)
皆様、こんにちは!雨が続き、大きな被害が出ています。滋賀県と京都を結ぶバイパスでも、不法投棄疑いの土が山から崩れ落ち道路を完全にふさぎ込んでしまいました。道路を使用し、通勤や通学をしている人達にとっては大きな損害となっています。自然は本当に怖いです。しかし、今回の災害は人によって起こされたと言っても間違いではないです。軽い考えが巻き起こした人害だと私は思います。
自分のことが大切なのは分かります。しかし、周りの人のことを考えた時、何を優先すべきなのかを学ばなくてはいけません。自分がいいから周りがどうなろうと知らないと思っているような行動をする人は迷惑でしかありません。今回の大雨では、大きな被害を受けた方々がいます。そういった方達に少しでも、早い復興と支援がありますよう願っています。
そんな大雨が続く中、小倉記念と関屋記念が行われました。関屋記念にはここで圧倒的な勝利を望んだソングラインが出馬してくるも敗れてしまいました。パドックでは更に良くなってきている印象を受け、これならマイル戦線で面白くなりそうだなと思いました。レースも無難に進めており、後は弾けるだけだと見守っていましたが不発に終わり3着で入線しました。このメンバーでは圧巻の走りを期待していただけに少しガッカリしたのはありましたが、使いつつ良くなりそうな馬でもあるので、人気を落とせば期待したい一頭です。
そして、このレースを制したのが辻野厩舎のロータスランドでした。鞍上に田辺君を迎えましたが、個人的にこの馬は合いそうだなと思っていました。その期待通りスタートを決めると、2番手のポジションを取りました。大きく逃げるマイスタイルを泳がし、楽な形でレースを進めると、直線では内に進路を取り後続を寄せ付けない走りで重賞初制覇となりました。辻野厩舎にとって角居厩舎から引き継いだ馬での重賞制覇は思うところがあったはず。しかし、粘り強く馬と向き合ってきたからこその走りで、本当に素晴らしかったです。
2着にはカラテが入りました。東京新聞杯を勝ったことがフロックではなかったことを証明し、この走りができるのであれば重賞を再度勝つこともあるのではないかと思わされる走りでした。夏の重賞はなかなか秋のG1戦線に繋がらないイメージですが、ここで勝ち上がることができたロータスランドはもうひとつ上があるはずですし、ソングラインに関しては叩いた次走がどう出るかが楽しみになりました。
今週も雨予報が並びます。一体どういう馬場になるか心配ですが、小倉では北九州記念、札幌ではG1になる日が待ち遠しい札幌記念が行われます。競馬ファンの注目はなんといっても札幌記念に参戦するソダシでしょう。3歳牝馬でましてや春のG1を勝っているソダシがここに出てくるというのは非常に驚きました。しかし、デビューが北海道で、厩舎も毎年ここで結果を出していますからね。ただ、私の見解では、ここで必ずしも勝ちたいとは思っていない気がしています。雨予報で馬場はこなせるかもしれませんが、秋に向けて疲れを残したくないというのが前提になるのではないでしょうか。
それはラヴズオンリーユーにも言えることです。しかし、この馬の場合は能力で勝ち切ることが可能であると思っています。やはり初めての古馬との戦い、そしてクラシックを残す3歳牝馬より期待してしまうのが個人的な見解です。その他にはブラストワンピースや勝ち切れない競馬が続くペルシアンナイト、北海道の環境が非常に合うアイスバブルなど伏兵にも注目してみたいと思います。雨、雨、雨ではなくムチ、ムチ、ムチでもなく飴のように甘い感動する競馬を期待しましょう。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。