元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
敗戦から学んだものと学ばなかったもの
2021/10/6(水)
皆様、こんにちは!日本ではお馴染みの総裁選が終了し、岸田新総理が誕生しましたね。私が生きている間にあと何回の新総理を見ることになるのだろうかと思いますが、なぜか今回こそはと願ってしまうのが悪い癖です。しかし、これほどまでに失敗を繰り返しているのにも関わらず、やり方を変えない理由が逆に不思議です。競馬でも同じミスをすれば鞍上は交代になりますし、転厩もあります。それなのに日本のトップはやり方を変えないのは何故なのでしょうか。どこまでも続く古いやり方にこだわることはあるのかなと思ってしまいます。新しいチャレンジをすることが新時代や当たり前を壊し、前に進む道だと思います。
それは競馬界でも共通していることかもしれません。毎年恒例の凱旋門賞が行われました。今回、日本からはクロノジェネシス、ディープボンド、そして豊ちゃんが参戦しました。日本競馬の悲願になっている凱旋門賞を今年こそはと挑戦しましたが、また今年も「馬場がタフだった」の敗戦で終わりました。この敗戦の弁を何度聞いたことかと思ってしまいました。前哨戦ひとつを挟み本番に挑んだディープボンド、直接向かったクロノジェネシス。どちらも戦前には今年こそは!と思っていました。しかし、レースはお馴染みの内容での敗戦。ここまでくれば本当に勝ちたければ、他のレースを犠牲にしてでも勝ちにいく新しい方法、スケジュールを組まなくてはいけません。
日本のレースで稼ぎながら凱旋門賞も勝つというのは非常に難しい気がしています。ナカヤマフェスタのような長期滞在や合うと思う基準を変えるのも新しい扉を開くには必要なことだと思います。個人的にはルヴァンスレーヴが3歳時に走っていれば面白かったのではないかなという印象だけに、ダート馬でスタミナがある馬で挑んでもらいたいなと思います。いつの日か歴史の扉は開きます。負けても挑み続けることでしか成功はありません。だからこそ、敗戦を活かし歴史を変える挑戦をしてもらいたいと思っています。
そして、日本では2021年秋のG1シリーズが始まりました。中山競馬場で行われたスプリンターズSでは3歳馬ピクシーナイトと福永君が見事な勝利を挙げました。まさかここまで成長するのか!?と福永君を含め、スタッフ全員がそう感じた勝利だったのではないでしょうか。私自身もマイル路線からスプリント路線に変えた時、来年にはG1に届く才能があると思っていたので、今回でこの走りを見せられたことに非常に驚きました。
レースは大外枠になってしまったモズスーパーフレアが逃げる中、ビアンフェが続き、そして内ラチ沿いにピクシーナイトがつける形となりました。外にはレシステンシア、ダノンスマッシュとなり、ここでメイケイエールが引っ掛かりながら上がってくるかなと見ていましたが、鞍上の池添君が我慢に我慢をさせているのを見ました。この展開で前から3列目までで決まると見ていた4コーナー。内からピクシーナイトが抜け出すと後続を引き離し、2着にレシステンシア、3着にシヴァージとなりました。
思わずレース後に「ピクシーナイトはここまで成長するか」と同時に「シヴァージの隼人君はここまで乗れるのか」にも驚かされました。すると、すかさず息子から「だから言ったやん」と言われましたけどね(※次男は吉田隼人君の乗り方が大好き)。何はともあれ、ここから新しい伝説を生みだすかもしれないピクシーナイト。マイル路線から早々と敗戦を糧に路線を変更し、挑戦したからこそ生んだ勝利だったと思います。素晴らしいレースでした。
今週はオリンピックの影響により、古いカレンダーでは3間開催になっていますが、祝日の変更により2日開催になりますのでご注意ください。G1はありませんが、重賞は目白押しで楽しみがいっぱいです。その中でも注目は、日曜に東京競馬場で行われる毎日王冠になります。勝利騎手は王冠をかぶることでも有名なレースですが、今年は一体どの騎手がかぶることになるのか。その筆頭はルメール騎手とシュネルマイスターのコンビになるのではないでしょうか。どれだけ成長したのか非常に楽しみで、良いレースを期待したいです。
そこにリーディング争いをしている川田君とダノンキングリーのコンビも出てきます。この暫定2強にポタジェやマイネルファンロンなどがどう食らいつくのか。開幕週の東京競馬場だけに穴党としてはダイワキャグニーの前残りにも狙いを定めたいレースになります。今週からは東京・阪神・新潟の3場開催!皆様お間違えなく!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。