元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
リピーター 武史!
2022/9/28(水)
皆様、こんにちは!先週は台風の影響を受け二人の騎手が移動できない事態となりました。なんともツイてない、可哀想と当初は思いましたが、逆に他の騎手は先に移動していたから騎乗できたとも言えます。菱田君は中山で無事に騎乗していましたし、天気が荒れるという情報もありました。そう考えると、乗れなかった二人はそのあたりをケアできていなかったのではと思ってしまいます。山田君は10万円ほどをかけてタクシーで移動。騎乗依頼をもらっているありがたみと自身の移動の遅さが招いたことなどを反省し、全てを含んで決意の自腹移動だったと思います。
移動が多い職種だけに天気や交通網など色々と見越して早めに移動するというのは当たり前の行為。馬運車や騎手が前々日から競馬場に入るというのもよくあることですからね。そこからレースは始まっているのです。全てをよむのは難しいかもしれませんが、最大限の下調べをして責任をもって移動してもらいたいなと思いました。今週も台風予報が出ていますし、全関係者が無事に移動できますように。
先週、特に注目を集めたのは3冠馬デアリングタクトも出走したオールカマー。勝利したのは眠れる素質ジェラルディーナと横山武史君のコンビでした。母は女傑ジェンティルドンナで、産駒としては重賞初制覇となりました。今回の勝利はその前まで乗っていた福永君の教えが大きかったと思います。長い時間をかけて、まさに教えて福永先生の成果と横山武君の腕がビッタリと噛み合ったようなレースでした。
まずはバビットと典ちゃんのコンビがハナを奪うとゆったりとしたペースで逃げました。そこにキングオブドラゴンやテーオーロイヤルが続く形に。迎えた4コーナーでは外が慌ただしくなる中、内でじっとタメたジェラルディーナが脚を開放すると一気の勝利となりました。まるで2021年オールカマーも勝利した横山武君とウインマリリンを彷彿させるレースで、素晴らしい再現をしてくれたという印象を受けました。
2着には応援していたロバートソンキーと伊藤工騎手のコンビが入りました。こちらも完璧に乗ったと思います。どうにか勝利を挙げてほしかったですが、今回はついてなかったとしか言えません。3着には昨年2着馬のウインキートスが入り、ジョッキーのみならず馬もリピーターという結果になりました。
期待していたテーオーロイヤルはどこか本来の走りと違い感じましたが、ここから変わると思っています。6着に敗れたデアリングタクトに関しては、状態面のピークを過ぎたのかなという印象を受けました。無敗の牝馬3冠からJCでも好走、ケガから復活し見応えあるレースをしてくれていましたが、大きな上積みは期待できない気がしています。次はどこに照準を合わせてくるかですが、牝馬限定戦がいいのではないでしょうか。
今週から2022秋のG1シーズンが始まります。秋の開幕戦として中山競馬場でスプリンターズSが行われます。人気を集めるのは前走も完璧なレースで勝利したメイケイエールになるでしょう。そこに前走、前が壁となって3着も力は本物ナムラクレアが対抗するレースになるのではないでしょうか。力をつけているウインマーベルや速い時計を持っているヴェントヴォーチェあたりが伏兵として戴冠を狙ってきます。
逆に人気を集めそうですが、どうなんだろうと懸念もあるのがシュネルマイスターのスプリント挑戦です。マイルで結果を出してきましたがG1で初距離となるだけに少し難しいのではと思っています。しかし、百戦錬磨の陣営が選んできたあたり、びっくりするような走りをするかもしれませんからね。電撃のスプリント戦!まずはここで気持ち良い勝利を上げて、秋もG1シーズンを勝ち越しましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。