元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
人馬で作り上げた勝利
2023/1/25(水)
皆様、こんにちは!まずは、私の師匠でもある大久保正陽先生が亡くなられました。中学2年生の時、北海道から京都にある先生のもとに弟子入りをし、そこから学校に通いながら馬について勉強させていただき騎手になりました。私にとっては厳しい先生でもあり、第2の父でもある人物でした。今でも先生のもとに初めて訪れた日のことをハッキリと覚えています。巡り会えたことへの幸せを感謝しつつ、心よりご冥福をお祈り致します。
それでは先生から教えてもらったことを再度、思い出しながら先週の競馬を振り返ります。中でも注目していたアメリカJCCではノースブリッジと岩田康君のコンビが見事な勝利を挙げました。外厩制度が当たり前となったこの時代に天皇賞(秋)敗退後、在厩させながら馬と向き合い、岩田康君も美浦まで調教に乗りに行きながら作りあげてきたことが結果に表われたのは本当に素晴らしかった。不器用で言葉が少ない男ですが、馬に対しての考えは人一倍で、馬のためには努力を惜しまないからこそ、厩舎が考える理想にさらに素晴らしいスパイスを入れられたのかなと思います。馬と厩舎と騎手が一丸となり勝利したレースでした。
スタートから予想通りシャムロックヒルがハナを奪うと、2番手にバビットがつける中、岩田康君とノースブリッジはインでじっと我慢することを選択しました。馬の状態からもレースは非常に難しかったと思います。しかし、その仕上げでもインで我慢させることができるとギリギリを狙って、自分の技術を信じた岩田康君だからこその勝利でした。4コーナーで前が垂れる中、コースを見つけてすぐ先頭に躍り出ると、ここからはノースブリッジの独壇場となりました。中山が得意な馬ということもありますが、ここまで可能性を広げられたことは、非常に大きな意味があったと思います。
本命に推されていたガイアフォースですが、今回は残念なレースになりましたね。クリストフとしては4コーナーで外から被されたことで動くに動けなくなってしまいました。ワンペースでじりじりと脚を使う馬だけにこれは本当に痛かった。個人的にはジリジリ脚を使う馬とクリストフの相性は良くないと見ています。今後も馬券を狙われる際には、騎手と馬の特徴が一致しているかもひとつのポイントとしてもらえると競馬がより面白くなるはずです。
今週からは中山から東京へと開催が替わりますので、お間違えなく。その東京競馬場では根岸Sが行われます。フェブラリーSに向けて、ここで賞金を稼ぎたい馬達にとっては大事な一戦になります。しかし、ここでも私としては面白くない乗り替わりがありました。それはテイエムサウスダンとクリストフの新コンビ。この馬といえばノースブリッジのように岩田康君がつきっきりで調教して結果を出してきた馬です。それが転厩で結果が伴わなくなり、騎手変更というのは責任をどこに求めているんだと思ってしまいます。
勿論、馬にとって新しい刺激になるかもしれません。しかし、どうしても昔の人間にとってこの乗り替わりは納得できるものではありません。騎手を替えるのも一手ですが、調教の方法、飼い葉、環境、馬具や年齢と多くのの要因がありますからね。そのため本命はレモンポップを推奨したいです。前走は1ハロン延長して2着となりましたが、この馬にとって1400mはベスト距離になりますし、ここでは負けられないと思っています。
そこにダートへ挑戦してから結果が出ているギルデッドミラーや川田君が乗るだけで怖い存在になるバトルクライ、そしてヘリオスあたりが好走するのではないでしょうか。クリストフによる新しい刺激がどのような結果となるのかにも注目してみたいと思います。馬と騎手、さらに人と人が繋がるからこそ、競馬は素晴らしい!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。