元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
勝利を生み出したチームワーク
2023/2/1(水)
皆様、こんにちは!もう2月に突入です。寒さはまだまだ続いていますが、心温まるニュースが流れました。それはセレッソ大阪に香川選手が戻ってくるニュースです。海外を渡り歩き、とうとう日本の元10番が帰ってきます。彼の経験談を若手に伝えることでどんな化学反応を生み出すのか、本当に楽しみです。勿論、年がいったにせよプレーにも期待しています。暖かい桜の季節に、是非観に行きたいと思っています。
先週の競馬では気になったことがありました。それは日曜の中京最終レースでセイクリッドがゲートから出ることができず競走中止になったことです。ゲートが難しい馬というのはゲート入りですぐ理解できました。途中で潜るなどの行動があり、引き起こす駐立のバランスが悪くなっていましたからね。しかし、発走委員はそのままスタートを切らしてしまいました。これが良くありませんでした。あの場合は一度ゲートの外に出す必要があります。
馬にだけ制裁が科されましたが、ハッキリ言って発走委員の怠慢だったと私は思います。スタートの練習などは厩舎の仕事ですが、本番のテンションでのスタートは別物です。その中で、あの駐立でスタートを切ったというのは発走委員の仕事として制裁があってもおかしくない判断でした。馬や騎手だけでなく運営側でも良くないことには制裁を科すことでレベルアップが図れればいいのになと思います。
先週開幕となった東京競馬場では根岸Sが行われレモンポップと戸崎君のコンビが勝利し、管理する田中博厩舎と当馬にとって初の重賞制覇となりました。1400mでは負けられないと思っていましたが、想像通りの走りで見事な勝利だったと思います。厩舎も馬にとってベストのレース選択をする際に戸崎君が乗れない場合は戻しやすいようにと鞍上を考えたり、まさにチーム一丸でここまできたと話されていました。
長い直線でも持ったまま流していくと、最後は迫る2頭に先着を許すことのない勝利は見事でした。距離としてはここまでかなという印象も受けましたが、厩舎と騎手が意見交換しながら馬を作り上げるというのは本当に難しくもあり、非常に大事なことです。それを証明してくれました。2着のギルデッドミラーはダート転向3戦目も素晴らしい走りを見せ、本番に向けても楽しみなレースができたと思います。3着に入ったバトルクライはさすが騎手大賞を受賞した川田君と思わせるレース運びで一級線でも通用するところを見せてくれました。
今週は東京で東京新聞杯、中京ではきさらぎ賞が行われます。特に注目しているのは東京新聞杯になりますが、ここにナミュールが出馬してきます。エリザベス女王杯以来のレースとなりますが、広い東京コースのマイルというのはこの馬にとって最高の舞台になるのではないかと想像しています。ただ牝馬だけの戦いから牡馬混合戦になり、どういったことが起こるか分からない怖さは残っています。
その相手としてインダストリアやマテンロウオリオンあたりが面白いのではないでしょうか。気を抜いた時に飛んできそうなタイムトゥヘヴンにも注目しています。セレッソ大阪と香川選手のように、気持ちを理解し合っているようなチームワークで素晴らしい走りを期待しています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。