'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
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【特別号】3年連続リーディング!2016年の真相をすべて明かす!
2017/1/11(水)
飛躍のために 2016年は新たな試みも
-:ハハハ(笑)。1年を振り返る中で、今年変化をさせたこと、改めて明かせる部分があればお願いします。
圭太:今年は濃い1年になりましたね。その中で変化もあり、学んだこともありました。一番は、この接戦のリーディングになった時にファンの方の声と関係者の方の声の温かい言葉ですね。普段はあまり掛けられない人たちからも掛けられたりして、改めて応援されていると強く感じましたからね。その辺は感謝というか、力になったというのもありますし、すごく響きましたね。それもあって、それこそこんな接戦になりましたから、1つ1つのレースの大事さも感じましたし、応援を感じると、本当にもっともっと、1つ1つを丁寧に、大事に乗らなきゃいけないとは感じましたね。
-:その「丁寧に」というところでは「以前よりも1つのレースに対しての準備を増やした」とおっしゃられていたと思うのですが、それはどんなことをやられているのですか。
圭太:マネージャーと枠順が出てから作戦を立てています。どの馬が行って、ペースがこうなるから自分はこの辺の位置にいなきゃいけないなど。組み立てもそうですが、馬のリズムもありますので、そこも大事にしながら、バランス良く走らせるためにはと考えながら、どのレースでもやっていますね。
「だから、やっぱり本当にトップに立っている人たちというのは、どの世界でもそうですけど、練習量が半端じゃないと思うんですよね。その準備という行為が。もちろん、やっぱりレースに行ったら、本当に細かいことを色々考えるのではなく、本能も大事だと思いますので、そういうバランスがすごく求められると」
-:それは今年に入ってからですか?
圭太:その前も何となくはやっていたのですが、枠順が出てから細かくやるようになったのは今年からかなぁ。全部のレースをやるので、土曜もレースが終わってから、次の日の分をやるという感じで。だいたい感覚は一緒なのですが、マネージャーの意見もあるので、その辺も聞きながら。
-:ただ、陣営の意向もありますよね。
圭太:レース前に先生に言われることもありますから、それと照らし合わせて、という感じで。
-:戦略的な部分は、以前よりも成果として表れている実感というのはありますか。
圭太:そうですね。レースに行っての組み立てというよりも、自分の精神的な部分が少し楽になっていますよね。
-:もちろん実際のレースの流れとか、その場その場で応じないといけないものがある訳ですからね。
圭太:そうなんですよね。そこがちょっと僕の不器用なところで、何か作戦を立てるとこうならなきゃいけないみたいな、そういう固さもあって、1年通してやっていると、柔軟に出来ないところもあるにはありましたね。ただ、そういう課題もバランス良くやれると良いなとは思っていますし、やれるようになってきた実感もありますね。
▲レース前の準備をより増やしたことも成績向上の秘訣だ
-:プロ中のプロに恐縮ですが、野球やサッカーをやるにしても、練習をしないで臨むよりも練習して臨んだ方が、雰囲気的にはやっている安心感があったりしますよね。
圭太:そうそう。気持ち的なものですよね。だから、やっぱり本当にトップに立っている人たちというのは、どの世界でもそうですけど、練習量が半端じゃないと思うんですよね。その準備という行為が。もちろん、やっぱりレースに行ったら、本当に細かいことを色々考えるのではなく、本能も大事だと思いますので、そういうバランスがすごく求められると。
-:ジョッキーという意味ではやっぱり馬に乗ってなんぼなので、ある程度やれるトレーニングというか、準備できることは限られますもんね。その他で何かやられていることはありますか?
圭太:トレーニングですかね。まあ、それは皆やっているでしょうからね。
-:ただ、レースでは最後の直線で落馬するケースもありましたが、それでも休まず乗り続けられました。
圭太:そうです。あの時は本当に休まなくて良かったなと思います。G1も勝てましたし、あの頃はかなり勝てていましたからね。
-:そして、食事も変えられたと。
圭太:病院に行って調べたら「内臓の状態が良くない」ということで、「食事生活を変えてみようか」ということで始まったんですよ。ストレスが随分と掛かっているのかとか色々考えましたが、そうではなかったというね。自分が悪いんですけどね。
-:しかし、食事面はご家族も一緒にやっているというのは大変ですね。
圭太:そうですね。やっぱり普段からそうならなきゃいけないからね。だから、子供たちもそうだし、嫁さんもそうだけど、本当に外食も少なくなりましたし、少なくなったというか、ほぼ行かないですよね。嫁さんにも迷惑を掛けていますけど、本当に一から十までやってくれていますよ。
▲食生活を改善した効果か?昨夏は大活躍を納めた
-:その効果は騎乗の面で感じられましたか?
圭太:良かったですね。もともと夏はあまり得意ではない感じでしたが、夏バテもなくて、スッキリした感じで乗れて、暑さの感じ方が全然違ったので。
-:夏を中心に10戦連続重賞連対記録もありましたよね。ちなみに、夏とはいっても、1レース毎に間隔があって、たまには乗り鞍がない時もあるじゃないですか。それでもやっぱり疲れるものですか?
圭太:暑さが半端でないし、こもっちゃうんですよね。汗はかいてはいるのですが、体力は使うし、冷やすことが出来ないのでね。昔もそんなにバテバテという感じではないですが、気持ち的に嫌でしたね。集中力の面でもやっぱりボッーとして来るというか、そういうのが出てくるかと思いますからね。それが、今年は楽だったので。
騎手・戸崎圭太を更に進化させる一年に
-: ちなみに、制裁点0でのリーディングは史上初とのこと。その割にあまり評価されていない気もするのですが……素晴らしいですよね。
圭太: まあ、ここで強引な競馬をしてでも勝利にこだわってほしい、と思う人もいるでしょうし、それは人それぞれの意見だと思います。 でも、僕はフェアに乗りたいし、周りに迷惑をかけずにかてることが一番だと思いますからね。そこは最善を尽くしたいと思いました。
-:普段、めったに聞かない質問ですが、今年1年の中で記憶に残る、この騎乗は良かったというレースはありますか?
圭太:騎乗が良かったというのは特にないですけどね。ただ、ヴィクトリアマイルはG1だったからという訳じゃなくて、ストレイトガールが自分の思っていた以上に走ってくれたというのが、あの感触は今でも覚えていますね。
-:いや、すごい脚でしたものね。
圭太:そうですね。前哨戦が、やっぱり自分としても少し衰えたかなという感じも受けましたから、その中でのあの強さを見せてくれたというのは、本当にあの感覚は嬉しかったですね。
-:しかも、抜け出し方もすごかったですもんね。
圭太:だから、結局衰えてなかったということなんですよ。まあ、あそこまで持っていくスタッフ、先生もすごいですし、本当にすごいですよ。
-:むしろ去年よりもすごいパフォーマンスで、もちろん去年もすごいなと思いましたけどね。
圭太:去年も着差は僅かなのですが、普通はあそこで交わせないです。
▲2016年で記憶に残る騎乗はストレイトガールと連覇を決めたヴィクトリアマイルだ
-:世間的にどこまで評価されているのか、未知数な部分もありますが、一般の評価以上にけっこうな馬だったと思います。
圭太:やっぱり1600もこなすし、それに1200も勝つ訳ですから、センスの良さ、切れ味というのは本当にすごいですね。あの年齢で、あの仕上げも。
-:そこは、やっぱり藤原先生ならではの手腕も感じる部分があったということですね。
圭太:はい。あの馬と巡り合えたのもすごく嬉しかったです。G1を3つも勝たせていただいて、嬉しいですね。
-:あとは、そういう意味でも来年もそういう大舞台での騎乗というか、継続的に大きなところ、クラシックなどのパートナーが出てくれば良いのかなと。
圭太:そうですね。パートナーもそうですけど、やっぱりG1を勝って、何か厚みというか、自分自身がもっと強くなりたいですし、大舞台に勝ってこそ、という意識はあります。
「応援してくれる方々にもっと喜んでもらえるようにたくさん勝ちたいですし、内容も濃くして、戸崎圭太というジョッキー像をもっと成長させていきたいですね。勝ちたいレースなんか、どれも勝ちたいですし、僕はそういう風にまたなりましたね。また“日本ダービーが獲りたい”という意識がちょっと薄れてきちゃったな」
-:そこは、戸崎圭太ファンも待ち侘びているでしょうしね。
圭太:そうでしょうね。リーディングを獲ったけど「裏開催に逃げて勝っている」みたいにも思われていそうですからね……。
-:と言っても、残っていても勝っていない時も多々ありました(笑)。
圭太:まあ、それはありますね。
-:改めて2017年の目標をお聞かせいただけますか?
圭太:さっきも言いましたが、終盤はそれこそファンの温かい言葉と応援してくれる気持ちも伝わりましたし、僕の周りの、健康だったり、心身のことを考えてくれる人たちの大事さ、それがなかったらやっぱりこれだけ良い調子で行けなかったでしょう。その感謝と、応援してくれる方々にもっと喜んでもらえるようにたくさん勝ちたいですし、内容も濃くして、戸崎圭太というジョッキー像をもっと成長させていきたいですね。勝ちたいレースなんか、どれも勝ちたいですし、僕はそういう風にまたなりましたね。また“日本ダービーが獲りたい”という意識がちょっと薄れてきちゃったな。
-:一時はそんな感じでしたけど、また戻ったと。
圭太:はい。それは勝ちたいですけどね。勝ったら、それこそそういう人たちに喜んでもらえると思いますし、本当に応援してくれている人たちの温かさを感じたので、その人たちに喜んでもらえるように、日々精進して自分を高めて成長させて行きたいなと思いますね。
-:ちなみに来年のリーディングはどうしましょう。
圭太:ハハハ。
-:簡単に言って申し訳ないのですが、僕はもういいのではないかと思いますけどね。
圭太:いや、やっぱり良いというものではないですよ。やっぱり目指すものではあるし、だからと言って、その中で……。だから、難しいんですよね。全部獲れてこそ、だと思うので、まず初めはそこを目指して、リーディングだったり、G1だったり、重賞だったりが獲れるように、そういう風に自分を成長させていきたいなと思いますね。
-:充実した1年でしたね。
圭太:そうですね。勝ち鞍もこれだけ勝たせていただいて、その中で自分が感じるものもありましたし、これはまた来年に延ばして成長させていきたいですね。そう、「まだまだ学習中」ですよ。
(※)「まだまだ学習中」は自身のJRA通算600勝記念ノートに記されている言葉を引用したもの。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。