'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
さあサウジCデー!チュウワウィザードとマテラスカイで海外G1初勝利狙う
2021/2/19(金)
いよいよ土曜に迫ったサウジCデー。コロナ禍でレースの開催、渡航の制限なども危ぶまれたが、日本馬陣営は無事に現地へ到着し、レースへ向けての調整が進んだようだ。チュウワウィザードでサウジC、マテラスカイでリヤドダートスプリントに挑む戸崎騎手が、レースを2日後に控えた木曜に電話で現地の空気を届けてくれた。
チュウワ&マテラ サウジ現地での追い切りに好感触!
——コーナータイトル通り、余程のことがなければ毎週更新してきた連載。流石にサウジアラビア遠征中で今週はお話を聞けないかと思っておりましたが、今週も無事に電話も繋がりましたので伺えればと思います。よろしくお願いします!もうサウジアラビアに着いて、追い切りも無事に終えられたようですね。
よろしくお願いします!むしろ普段より音声が聞き取り易いくらいですね(笑)。追い切りはチュウワウィザードとマテラスカイ、それぞれ乗せていただきましたが、既に終えました。
まず、サウジカップ(G1)のチュウワウィザードの追い切りは非常に良かったですね。栗東トレセンでも乗せていただいたことはありますが、現地の環境にも戸惑うことなく、しっかり動けていますし、聞くところ去年、ドバイへ輸送(レースは中止)したことが良い経験になったのか、体も減ることなく来られているそうです。
追い切りは6ハロンから徐々に加速していって、余力を残す程度に最後に終いを伸ばすような内容を依頼されていましたが、フットワークの乱れもなく、動きはとても良かったです。
リヤドダートスプリント(G1)のマテラスカイはしっかり追い切りましたが、こちらも最後まで脚色が衰えることなく、状態は良いんじゃないかと思いますね。
——既に経験しているマテラスカイもいますが、サウジアラビアの馬場は未知数だったと思います。
砂と土を混ぜたような感触でしょうか。ポリトラックのような素材も入ってそうですし、日本とは全く違いますね。それでもチュウワウィザードにとっては合う馬場なんじゃないかと思いました。脚取りはしっかりした馬ですし、力のあるタイプなので。
コースそのものは乗り易くて、大きな癖はない印象です。極端にいえば盛岡競馬場のようでしょうか。1800m戦はワンターンでスタート地点からコーナーまでもっと距離もありますし、最後の直線ももっと長いですけど、イメージとしては似ていますね。
——ジョッキーとしては、シャーガーカップや香港に次ぐ海外遠征。招待という形でしょうが、移動から今日(木曜)に至るまでの流れについてもお願いします。
今回は10人くらいで同じ飛行機での移動でしたね。飛行機はだいたい12時間くらい乗ったかな。トランジットは6時間ほど。飛行機では半分くらいは寝ましたけど、後は飲んでいました(笑)。
——普段は厳格な食生活をされていますが、アルコールだけはそこで確保したわけですね。
サウジは「現地に着いたら飲めない」と聞いていましたからね。現地のホテルは立派ですが、競馬場からもバスで15分くらいあって、市街地みたいなところも離れていて、窓から見える光景はホテルのプールと砂漠といった様子。
まあ、コロナ禍ですし、そもそも街にも行くつもりはなかったのですが、ホテルのジムやスパなどもこのご時世で閉鎖されていますし、食事もルームサービスのみですね。流石に小麦を使った料理が多く、今は仕方なく口にしています。
競馬場は7時からメインの馬場が開かれるので、6時半くらいから運動を始める流れです。おそらく現地の馬は別の時間帯ですが、他の国の馬も同じ時間帯に調教していますよ。競馬場のクラブハウスにはジムとプールがあるので、午後はそこに行って体を動かしたりはしていました。ただ、全般的に流石に行動できる範囲がかなり狭い印象ですね。
——もう枠順も決まりましたし、今の御時世だとあとはレースまで待つだけでしょうか。
そうなんですよね。普通ならウェルカムパーティー的なセレモニーなどもあるでしょうが、やっぱり行われません。あと明日は(藤田)菜七子が招待競走に出場するので、皆、競馬場で応援するくらいですね。それは楽しみにしています。日本に馴染みのあるジョッキーでいえば、既に(オリビエ)ペリエや(シェーン)フォーリーなどは会いましたね。クリスチャン(デムーロ)などはいなかったようにも思うので、まだ来ていないのかもしれませんね。
アカイトリノムスメがクイーンCを制し3連勝!
——サウジで先週の回顧をしてもらうと思いませんでしたが、通常通りお願いします。まず、共同通信杯(G3)のレフトゥバーズはどうだったでしょうか。
バネだったり、フットワークは素質を感じました。ただ、テンションが高いですね。レースはペースも落ち着いてしまって、伸びてはいるけれど、同じ脚色に。まだ体も小さいですし、ふっくらしてくるといいのですが…。とにかくパドックから返し馬、待機所でも段々と興奮していきましたし、この精神面で1800mという距離も良くなかったと思います。
——スリーグランドは100人中、100人があんな競馬をするとは思っていなかったんじゃないかと思います(笑)。
じゃあ僕は101人目ですかね(笑)。戦前は「追い切りの動きはズブさがあった」と聞いていましたが、東京で勝った時のイメージで臨もうと思いました。決して逃げようと思っていなかったのですが、スタートが決まったところで「ある程度の位置では競馬ができるな」と。そこから他馬もこなかったので、ああなりましたが、ズブさもなく走ってくれましたし、強い内容でしたよ。
——ラヴィンジャーは前走と馬場状態も変わったとはいえ、東京の決め手比べにも対応しましたね。
良なら健闘してくれるという印象。どんな競馬にも対応してくれますし、あとは結果(1着)だけなのですが。
——ラインオブフェイトは故障かと思いました。
3コーナーでトモのハマりが悪くなり、ブレーキを掛ける形に。故障したかと思いましたが、その後は走れていたものの、以前とは違う走りでしたね。
——フルデプスリーダーは惜しい競馬が続きます。
相手も強かったのはありますが、楽な競馬になってしまいましたね。フルデプスリーダーも勝ちには届いていないだけで力は証明してくれていますが。
——エヒトは能力があるとはいえ、小倉での走りは未知の距離で強い内容でした。そこから東京に変わってもこなしてくれましたね。
小倉の走りが良かったので期待はしていました。終いもしっかりしていて、差しきれると思いましたが、最後はもうひと押しといったレースでしたね。
——アラビアンナイトは中山に続き、勝ち馬は強かったですが、終いは安定していますね。
前回はテンションが相当高かったのですが、落ち着きがありました。レース内容としては良かったと思いますし、このまま安定してほしいですね。
——ワーズワースは新馬戦としては速いペース。それを主張して強い内容でした。
速かったですね。ただ、手応えも良かったですし、ゴチャついた競馬もさせたくないなと思い、気持ち良く走らせることを選択しました。それに応えてくれた結果ですし、最後まで反応もしっかりしていて、良い走りでしたよ。
——クイーンC(G3)のアカイトリノムスメは時計が出やすい乾いた馬場状態とはいえ、走破時計、レース内容とクラシックへ向けて有力候補に加わったと言っていい走りでしたね。
追い切りで良い感触はありましたし、正攻法の競馬で強い勝ち方ができたと思います。成長も徐々にしていると思いますし、体は小柄なのは相変わらずですが、芯が入ってきたなと感じます。強いていえばスタートの遅さはありますが、それ以外は競馬が上手なところもセールスポイントですね。
——そして、サウジCデーも2日後に迫りますね。枠順はいずれも1枠。1枠から1番初めにゴールへ入線してほしいものです。追い切りにも乗られて、手応えの程はいかがでしょうか。
着いた当初は勝手もわからず、不慣れでしたが、枠も決まり、あとは待つだけですね。チュウワウィザードは追い切りも良かったですし、もう楽しみでしかないですね。1枠ということでスタートには気をつけたいとは思います。あとはアメリカの2頭がペースを作る流れになるでしょうし、また日本と違ったペースにはなると思いますからね。そこと上手くバランスを取りつつ、組み立てられればと思います。
マテラスカイは去年も惜しい競馬をしていますし、追い切りに乗った感触としては凄く乗り易い馬というイメージでした。昨年は外枠でしたし、今年は内枠。やる形は決まっていると思っています。もうレースまでは待つだけですが、良い結果を出したいですね。
——吉報を待っています。また次週もよろしくお願いします!
ありがとうございます!
※次回は2月26日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
ここで競馬ラボからのお知らせです。戸崎圭太騎手のJRA通算1100勝を記念してマスクを作成しました。
https://www.keibalab.jp/present/63/
すべてのご応募はこちらのページにて受け付けております。応募者多数の場合は抽選になります。当選者の発表は当選者の方へのメールでご連絡させていただきます。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。