第5章:金額の高低を織り交ぜ戦略的な馬主ライフに
2016/10/2(日)
-:これは伺ったことはないのですが、落札されてからの経過というのは、牧場から逐一来るのですか?
田:逐一は来ないですが、あの馬はノーザンファームですから、ノーザンFの育成にいますので、ウチの増田が北海道のセリに行ったついでに、定期的に見たり、牧場の人の話を聞いたり、感触を聞いたりしています。ただ、まだ本格的に乗ったりしている訳じゃないですが「感触的には良い馬」だというのは伝わってきます。まあ、それだけ高いですから、それは「良い馬だ」と言うに決まっていますよね(笑)。(評価は)これからじゃないですかね?育成が始まって本格的にやってもらって。
-:馬の成長力というのはなかなか見抜くのは難しいですよね。やっぱり形が良くても、そこからどれだけ伸びてくるかというのは……。今年は高かったセレクトセールですが、来年も同じような落札価格になるのでしょうかね。早い話ですが、それくらいの額を投じられる可能性はありますか?
田:馬にそれだけの価値があって、それだけの値段で買えるのであれば、それは買いたいと思いますし、その前にいま現役で走っている馬がどれだけ賞金を稼いでくれるか、ですね。例えば、1回投資したとしても、現役中に幾らか回収してくれれば、1年間のトータルに少しのマイナスがあったとしても、ある程度先に投資をしている訳ですから、戻ってきた中でまた新たに買うことも出来ます。そこを計算しながら、極端な話トントンであれば、翌年も同じような金額で投資も出来ますので。
金額的にはある程度大きくなっていますが、それだけ順調に賞金を回収してくれれば上手く回りますので。例えば、高い馬が馬代金を稼いでくれるのか、逆に1000万くらいの安い馬でも1億くらい稼いでくれる馬もいますから。もちろんそういう期待はしていますから。全体的に走るような馬を探して買っているつもりでいるので、それで、ある程度どんな結果が出るか、ですね。ソコソコ走る馬が出ていれば、もちろん来年も同じような形であれば、そういう馬を買いたいと思っていますね。
-:毎年ずっと続く訳ですからね。その中で成績を挙げていって、しっかり回収して行ければ良いということですね。
田:そうですね。去年も話したと思うのですが、高い馬ばかりでは怖いですよね。もちろんクラシックを狙うには、高い馬も買わないと簡単ではないのでしょうが、1億の馬を何頭も買っていられないですから。やっぱり1000万、2000万の馬で5000万~1億くらい賞金を稼いで、準オープン~オープンまで行ける、そういう馬を探していかないと。それでも未勝利で終わってしまう馬もいる訳ですから、トータルでその分まで稼いでくれる馬も何頭かいないと上手く回っていかないので。やっぱり今まで経験して来て、買っていればそういう馬もいますので。
例えば、ドリームにしても4400万で1億以上稼いだりしています。そして、今後も稼ぐ可能性もありますからね。サミットにしてもスペリオルにしても2400万の馬ですから、それが今後、順調に走れば、1億くらいは賞金を稼いでくれるかもしれませんし、そういうのが何頭か出てくれれば、未勝利で終わった馬でもツーペイできますので。現役馬でも何頭か活躍馬が出てきて、上手く回っていけば良いなと思っています。
-:ちなみに、セレクトセール当歳で4300万(マザーウェルの2016)、4000万(アソルータの2016)の2頭を落札されていたと思うのですが、期待度はいかがですか?
田:当歳のマザーウェルですが、上 (セレクトセール2015年当歳馬取引において3200万円で落札) も持っているのです。一つ上のマザーウェルの2015は矢作先生が牧場に行って「良い、良い」と言っていて、マザーウェルの2016(父ダイワメジャー)は「タイプは違うが、すごく良い」という我々の評価でした。
やはり1歳馬よりも当歳のほうが価格的には買いやすいですよね。それでも、例年よりは当歳も高かったのですが、今まで我々が当歳で買っている馬は割と成功しています。ドリームもアプローズもそう。逆に1歳だと高くなってしまうから買えなかった馬もいますし、結果的に当歳のうちに買ってしまうことが奏功していますよね。
「ドリームの東京のJ・G2と、順調に行けば中山の大障害はもちろん何とか良い競馬はして欲しいなと。あと2歳馬で期待している馬が、スターリーやブレークは順調に行けば重賞も狙えるような馬ですし、それ以外にも休んでいる馬たちもドンドン復帰してきますので」
-:平均して活躍していますね。
田:早くから購入するにはリスクはありますが、それは今までの経験を踏まえて、研究をしながら買っていかないと。当歳で買わないと、庭先でもそうですが、全部売れてしまいますから。そこで仕入れて、1歳は1歳で足りない部分を補充する形です。サマーやセレクションのセリは頭数がいますので、その中で手頃な値段の馬を買ったりと。そういう流れですね。
-:今日も長時間ありがとうございました。最後に、この一年で競馬界の体制も移り変わっております。昨年も同じような話を伺ったのですが、勝負の時はこのジョッキーを起用したいという意向に変化はありますか?
田:ジョッキーですか?う~ん、だいたい厩舎にお任せといいますか、先生と相談しながら、誰かその時空いているか、というタイミングがありますからね。もちろん外国人ジョッキーに新馬で乗って勝ってもらったら、そのまま続けて乗ってもらいたいですね。ただ、騎乗依頼は多いでしょうから、なかなかそういう訳にもいかないでしょう。勝負で誰というのはないですね。もちろん関東で言えば、戸崎ジョッキーにはいつも乗って欲しいと思っていますが、なかなか人気あるから。この間もスペリオルで勝ってくれたのですが、今度の1400も早めに言っておかないと、すぐに埋まってしまうので。
-:ありがとうございます。関東馬の戸崎騎手に注目しておきます!最後に来年もインタビューで伺えればと思っていますが、この1年、この秋の展望、希望、目標をまとめとしていただけますか?
田:もちろんドリームの東京のJ・G2と、順調に行けば中山の大障害はもちろん何とか良い競馬はして欲しいなと。あと2歳馬で期待している馬が、スターリーやブレークは順調に行けば重賞も狙えるような馬ですし、それ以外にも休んでいる馬たちもドンドン復帰してきますので。2歳の未勝利馬も勝てそうな馬が何頭もいるので、何とか頑張ってもらって、春先まで調子が良くなかったですが、年末までのこれから3カ月ちょっとで挽回したいと思います、何とか期待しています。
-:ぜひご活躍をお祈りいたします。
田:どうもありがとうございました。
(取材=競馬ラボ・小野田学)
プロフィール
【田中 成奉】Seihou Tanaka
株式会社大成コーポレーション代表取締役。ハイセイコーが現役の競馬ブーム真っ盛りの時代に、周囲の影響で競馬に興味を持つ。不動産業、飲食業を営み、馬主資格を取得すると、2001年に所有馬が初出走。2008年のガーネットS(タイセイアトム)で重賞初制覇を挙げ、2012年にはタイセイレジェンドがJBCスプリントを制し、初のGⅠ勝利を果たす。今年はタイセイドリームで新潟ジャンプSを勝利し、障害重賞初制覇。
「安くて良い馬」を探すことに尽力を注ぐ一方、昨年のセレクトセールではスターアイルの2014(タイセイスターリー)を8800万円、今年のセレクトセールではミッキーパールの2015を1億1000万円で落札するなど高額馬も多数所有している。主な預託先は栗東では矢作芳人、宮本博、高野友和厩舎。美浦は池上昌弘厩舎など。