初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
『セレクトセール』
2018/7/13(金)
皆さんこんにちはライター大和屋です。今年もセレクトセールの季節がやってまいりました。今年も特にやることもないのでゆっくり北海道を堪能しよう。と思っていたのですが、なんと現在とても仕事が忙しい。なんでこんなに忙しいんだと自分でも首をかしげる状況なのですが、仕事が忙しい上に、親戚が亡くなったりと、とにかくセレクトセールの前の週が忙しすぎて自分でもびっくり。前日に函館に入ってイストワールファムの応援なんかしてみようかと思っていたのですが、打ち合わせやらお葬式やらでスケジュールがぐじゃぐじゃになり、それもかなわぬ状況でした。というわけで月曜朝の4時に起床して羽田空港へと向かいます。無事に離陸し一時間半後に着陸です。本当は空港で友人に拾ってもらおうかと思っていたのですが、時間が早すぎたのでレンタカーのお店が開かないとのことですので、自力で現地へと向かいます。
タクシーに揺られて20分くらいで会場であるノーザンホースパークへと到着します。今年の当歳は2018、気づけばもう10年以上連続で参加しているではありませんか。年をとるのがとても速い。じじいになったということ以外の何物でもありませんが、10年たってもここにいられることに胸をなでおろす自分がいたりいなかったりです。会場に到着するとさっそく勝己社長と遭遇します。僕の顔を見るやいなや「ジャスタウェイ産駒の評判がすこぶるいいよ」と笑顔で話してくださいました。調教が始まって評価がぐんとあがったとのこと。気をつかっていってくれているのではと思う部分も今まではあったのですが、今年の新馬戦が始まって今まですでに3頭のジャスタウェイ産駒が新馬勝ち。値段は高くなりそうだという予測も簡単にたてられます。
勝己社長のみならず、牧場関係者の皆さんが口をそろえてジャス君のことを誉めてくれます。喜ばしいとは思うのですが、その評判がとどろけばとどろくほど、今年も産駒が買えないことになってしまいそうという、うれしい悲鳴をあげたくなるのも人情です。手続きを終えて今年の購買者ナンバー57番のシールをゲット。なんとかお願いして去年落札していないのにも関わらずVIPシールを張っていただきました。これがあるのとないのでは、セリの気分がかなり変わります。
さて、手続きが終了すると次は場所取りです。座る場所を確保するためにテーブルとイスを確保します。座る場所を確保すると、待望の朝ごはんとあいなります。最初に食べたのは天ぷらそばです。ここまで一言も触れずにいましたが北海道、とても寒かったです。東京の感覚でいくとひどい目にあうという警告を受けていたのでパーカーをひとつ鞄に放り込んであったので空港についた瞬間に着込んだのですが、それでも寒い。というわけで温かいお蕎麦をいただきました。初日の朝ということでアルバイトの皆さんもまだ段取りがよくわからないらしく、ほぼほぼセルフではありましたが、温かいのはとても救われます。もうなんか慣れ切ってしまっていますが、これだけたくさんの食べ物や飲み物を無料で提供してくれるセレクトセール。すごい太っ腹ですよね。
さて、ここまできて朝の9時くらい。競馬関係者の皆さんは朝が早い。そして僕の馬選びに協力してくれる皆さんに連絡を取ります。まずは競馬の先輩、そして決闘大好きな映画監督であり僕の兄貴分で渡辺謙作さん。1歳のおすすめジャスタウェイ産駒は、エーシンメンフィス。マリアロワイヤルが特押し、次のおすすめが、アシュレイリバー、クリーミーボイス、ショアーとのこと。ちなみにマリアロワイヤルは社台ファームの馬で1億円を超えました。エーシンメンフィスは残念ながら主取り。お金が無限にあったら欲しかったのですけど……。そして僕の馬選びの核となるお友達であり馬博士、中島敬史さん、そして須貝(尚介)先生と相談します。今年の1歳で欲しい馬、ジャスタウェイ産駒という要望の上で血統面、喉、足元、そして歩かせたときの動き。ほとんどが僕にはよくわからない部分なのですが、良し悪しがあり、その中でもよいものを選別していくのです。
ちなみに今年のノーザンファームの下見所は、セリが始まる1時間前など、例年にもましてとても人気で順番待ちになっておりました。中島さんに電話をかけるとちょうどノーザンファームの下見所で並んでるので来たらどうかと誘っていただいたので駆けつけます。するといました。今年一番欲しかった1頭。上場番号23番・メジロジェニファーの2017。血統はとてもよく、体の動きも申し分なし。足元も問題がなく、顔もとても可愛らしい。しかも、レイクヴィラファーム産なのでノーザンファームの馬よりは少しお安く買えるのではなかろうか?というわけで皆さんの意見が一致。今年はこの仔を第一希望で行きましょうとのことになりました。
上場番号23番。時間も早いし、これで決めることができれば一日むしゃむしゃ食べて飲みながらゆっくり過ごせます。プレッシャーからも解放されゆったりと過ごせるし、5番の最初に上場されたジャスタウェイ産駒はノーザンファームの馬で4500万円でした。それを考えれば、きっと買えるに違いない。そう思って臨んだ23番だったのですが……。メジロジェニファーの17のセリが開始されるとあちこちから活発な声がかかります。四か所五か所から声があがり、じゃんじゃか値段があがっていきます。それでも男の子が欲しいとは思っていたのでふんばっていたのですが、予想以上のスピードで軽く4000万円台へと突入。ちょっと悩んではみたのですが、なかなか皆の意見がここまで一致することもないので踏ん張ってみることにします。
気が付けば四方の声はやみ、手をあげるのは僕を含めて2人に絞られます。なんとなく予感はしておりました。加藤さんがじっと視線を僕の右斜め後方へと注目させておりました。僕の斜めうしろの人、落札結果を見ていただけばわかると思いますので言っちゃいますけど天下の金子真人さん。6600万円まで頑張りましたが、6700万円で金子さんが落札。あえなくアンダービッターとなりました。悔しいですが金子さん相手なら仕方ないとは思います。金子さん、今度競合したら半持ちしませんか?いや、無理とは思いつつ、言ってみただけです。とても良い馬だったので2年後どうなっているか楽しみにしておきましょう。
というわけで第一希望があえなく玉砕した大和屋でしたが、そんなことは最初から織り込み済みですので次の候補を探します。上場番号69番・ショアーの2017。ジャスタウェイ産駒の牝馬で、上にはエックスマークやイモータル、さかのぼっていけばあのシロッコがいる血統。血統的には申し分なし、動きも一番良いのではというほどの評価です。須貝厩舎にはお兄さんのイモータルがいましたね。というわけで多少、喉のデポジットを見たときに不安がありそうに見えたけど、動けているので問題はないだろうとの判断をいただきました。そういう部分もあるのであまり高額になった場合は引きましょうとの約束もしつつ。上場番号69番のセリへと臨みます。
思ったよりも声がかかりませんでした。牝馬ということもあるのかもしれませんが、2000万円くらいで落ち着きます。なんと2300万円でラストコール。やったと一瞬思ったのですが、ここでまた一声、右前方の方との攻防も数回やった後、無事2700万円にて落札することができました。可愛らしい顔をした牝馬です。
上場番号69番・ショアーの2017。栗毛の牝馬。ノーザンファームの上場馬です。兄弟にはエックスマーク、イモータルがいたりします。ダービーにも出走したイモータル。金子さんの馬だったりします。自厩舎に兄がいたとのころで須貝先生もかなり自信がありそうでしたので2年後どこらへんで走っているのか楽しみですね。というわけで2番目に欲しいと思った馬が落札できました。今年のセリはこれでオッケーです!
とまあ今年もどうせ買えないだろうと思っていたのですが1頭買うことができました。なのであとはゆっくりお酒を飲んで過ごすだけ。とりあえず皆でご飯をごちそうになりに行こうと肉をいただきました。毎年豪華なご飯をありがとうございます。
そんなこんなで一日飲んだくれて過ごそうという僕なのでしたが、何かがおかしい。なんというか寒いです。寒いだけならよろしいが、寒気までしてくるではないですか!つうかひいたなこれ、風邪ですよ風邪。場内で配られていたビニール製の雨がっぱと着込んで風を寸断してみるも、やはり寒いので、他の方がもらってきた防寒用ジャンパーをいただいて着込みます。毎年暑い年が続いていたので忘れていましたが7月といえども雨が降れば北海道は寒いのだということをすっかり忘れておりました。なんというか寒気がするし熱っぽい。こういう時は酒でごまかせ。沢山のんでその場では事なき?を得たのですがやっぱり風邪でした。2日目はほぼほぼセリ会場で倒れていたのは秘密です。
さて、今年も進化を続けているセレクトセール。今年はなんと付き合いで会場に来た女性向けに、タロット占いのブースや、ラテアートを作ってくれるお兄さんがいたりしました。来年はどんなお楽しみが待っているのか?今から楽しみでなりません。
というわけで今年も馬主祭りに参加してまいりました。いろいろと波乱の展開で自分も驚いたりしていましたがなんとか乗り切ることができてよかったなと思う次第であります。
我が愛馬であるカリボールもすでにノーザンファームしがらきまで移動しております。まずはゲートを目指してがんばってほしいと思います。僕の馬だけでなくジャスタウェイ産駒すべての活躍を祈ります。アウィルアウェイの次走はダリア賞となりました。次もあのような豪快な競馬をしてくれるのか?今からはらはらしております。
了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。