ラブリーデイ、ついにG1勝利 宝塚記念制覇!!

ラブリーデイ

15年6月28日(日)3回阪神8日目11R 第56回宝塚記念(G1)(芝2200m)

ラブリーデイ
(牡5、栗東・池江厩舎)
父:キングカメハメハ
母:ポップコーンジャズ
母父:ダンスインザダーク

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金曜のまる一日降った雨でかなり湿った馬場も、土曜のうちに早く乾いた。JRAの発表では、日曜朝は良馬場になった。しかし芝のレースを騎乗したジョッキーからは《悪い、差せない》とかなり渋めが残っている反応であった。あきらかにゴールドシップ向きの馬場コンディションだと思えたものだ。どの馬よりも早い馬場入り、そして返し馬への入りなどものすごくいい雰囲気。そして課題のゲート入りさえも、アナウンサーが『実にスムーズ』と言ったほどにスンナリだった。だがそこはまだドラマの始まり、ほんのさわりの部分だったのだ…


最後にラブリーデイが入って、さあ、スタートと思った瞬間にゴールドシップがゲート内で立ち上がる。高くあげた脚が下りるのを待ってもう一度、ゲートのタイミングを待つ。治まって、そしてスタート、とその瞬間、前よりも長く空にかかげた脚を見せるゴールドシップ(後日にビデオを観ながらストップウオッチで計測をしてみた。何度も測ってだいたい2秒1か2。その差でゲートを出て行った)。
時計ひとつで5馬身と言われる。それが時計ふたつなのである、いきなり10馬身のハンデを被る。ゲートを出た後もすぐには加速してもいないだろう。レースは最初のラップが12.2。普通のペースだが遅くはない。相当な差となってスタンド前を通過して行くゴールドシップ。その3馬身ぐらい前には、デニムアンドルビーが自分の意思で前から開けていく。そこから5馬身は後ろを進む。

宝塚記念は内回りコースを使用している。そのうえに今年は16頭立て。この2年の様な11頭、12頭立てではない。後ろから捲っていくには、外々を通らねばならない、またどこかでペースアップせねばならない。
向こう正面でドンジリから少しだけ前の馬(デニムアンドルビー)の外へ並び、3角手前からさらにもう少し前に出ていこうとする。その瞬間に場内は『ワァーッ』とボルテージもあがるがそこまでが精一杯、いくら1000mで1.02.5のスローペースでも、相手は精鋭たちである。ゴールドシップのすぐ内でラチ沿いを走るデニムアンドルビーは涼しい顔だった。

レースの流れは、松若Jが乗るレッドデイヴィスが先手を取り、ラブリーデイが2番手を進む淡々とした流れ。枠順どおりに、トーセンスターダムショウナンパンドラが内ラチ沿いを追走する。ほとんどの馬が、直線入り口まで位置をそのままでレースは流れた。
4角でカレンミロティックデニムアンドルビーが外へ出してきた。特にデニムアンドルビーは、ゴールドシップの前を横切る感じで大外へ出してきている。

直線半ばで、ラブリーデイがスルスルと抜けだして先頭。2馬身はあったのではなかろうか。楽勝のタイミングであった。外からトーホウジャッカルが一瞬だけ伸びかけた。馬群の中からヌーヴォレコルトも脚を見せだした。
しかしただ1頭、馬群の外をデニムアンドルビーがグイグイと脚を伸ばしてくる。浜中Jの追うアクションに呼応して、かなりの勢いで前を行く。ラチ沿いを行くラブリーデイに届けとばかり、追って追って差を詰めていく。しかしゴールが近づくにつれ、最後は間に合わないと判る差でもあった。

3着は内から脚を伸ばしたショウナンパンドラ。2,3,5着が牝馬。2番人気のラキシスは8着で、そう印象に残らないレースぶりだった。カレンミロティックも出が悪かった様だが、それにしてもの13着ともうひとつの結果だった。
ラブリーデイの今年の充実ぶりだ。レースの前半だけちょっと掛かり気味なところもあったが、後は折り合っていく。この馬場も味方につけ、先んじての勝利。地力もつけて、ついにG1勝利までたどりついた。

牝馬が5頭出走して、全てが8着以内。斤量の軽さもあるのかも知れない。デニムアンドルビーだけが後ろから来たが、インの経済コースを通る競馬で脚を貯め、最後に外へ出して末脚を思いっきり発揮しての競馬内容。元々、力を持っている馬であるのに、今回は軽視されていたのが不思議でもあった。

池江厩舎角居厩舎と3頭ずつ出したが、角居勢は全頭が8着以内。池江厩舎は1着以外は12着と14着。関西トップ、全国2位、東の堀、西の池江の今年の上半期を総括する結果であった。
またキングカメハメハの産駒が勝ち、ディープインパクト産駒が2着。今年の傾向を大いに出している種牡馬の結末でもあった。

それにしてもゴールドシップ。普通に走ればいいものをであった。JRAのファンは有難い。こんな結果になっても、誰もがブーイングしてもおかしくないのに整然としていたスタンド。多くのファンの寛容さに感謝しないといけない…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。