またもミルコ、神騎乗のインすくい!フルーキーが初重賞

フルーキー

15年12月12日(土)5回阪神3日目11R 第66回チャレンジC(G3)(芝外1800m)

フルーキー
(牡5、栗東・角居厩舎)
父:Redoute’s Choice
母:サンデースマイル2
母父:Sunday Silence

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芝は後半の9Rぐらいに稍重から良にはなった。朝から風もあり陽も射すのだが、乾きは遅い。相当なる雨量を残していた。
勝ったのは最内を突いたM.デムーロJのフルーキー。1番人気の支持を受けたが、とてもその人気馬らしからぬ騎乗ぶり。道中で内へ潜りこんで絶好の位置にいるのは見えていたが、よもや最内のラチ沿いから前へ進出して一気に抜き去るとは。先週の中京での絶妙のタイミングで抜けてくるその術が、ここでも冴えわたる。M.デムーロJの神騎乗が、これまで善戦で留まっていた重賞チャレンジを見事、勝利へと導いた。


引き上げてきて後検量の後で、モニター画面を見上げる騎手達。そんな中にルメールJのつぶらな瞳がより大きく見えた。おそらくデムーロJのあの進路の取り方を《信じられない!》の気持ちで見ていたのではないかと推測する。その彼が乗るヒストリカルの1頭前にいたフルーキー。ヒストリカルは当然の様に馬場の真ん中へと持ってきた直線。先に抜け出したシベリアスンパーブを捕らえた完璧な騎乗だったと思えるルメールJのヒストリカル。しかし、その内ラチ沿いの少し前を、フルーキーがM.デムーロJの左手ガッツポーズと共にゴールに到達していた。

先行馬がソコソコいるとは思っていた。だがゼロスが先頭を切って行くとは思ってもいなかった。ダンツキャンサーメイショウナルトと先行馬グループが前を形成していく。いつもなら前にいるスピリッツミノルが後方、それもデウスウルトと同じ位置ぐらいにいて悠然としているのに驚く。今回は戦法を替える様だと気がつく。ヒストリカルを閉じこめる様にデウスウルトが並ぶ。その前にフルーキーがいて、さらにその前をタガノエトワールがラチ沿いにいる。坂を下って行く時のデウスウルトの手応えがいいのに嬉しくなっていく。少し前のワールドエースの手が動きだしているのも確認はしていた。ラストランとなる今回だが、パドックからあまり気配がいいとは感じられなかった。

馬群は凝縮して4角へと入ってきた。すでに手応えの悪い馬がけっこういる。外廻りのラチが切れた瞬間に最内を突いたフルーキーが、一気に差を詰めに動くのが見える。再び内廻りの内ラチが近づいて来た時には、先行馬2頭のすぐ後ろまで取り付く。そこで一瞬だけためらう様な静かな動き。少し狭くなったのだろうか。
前を行くマイネルミラノがスッと内へ入った瞬間を見逃さず、ゼロスとバッドボーイの間を抜けて行くフルーキー。その時に、外ではシベリアンスパーブがいいタイミングで出ようとしていた。だが勢いが違った。フルーキーが、弾かれたかの様な勢いでゴールを目指していく。シベリアンスパーブを追ってヒストリカル、ワールドエースらが迫っていく。わが武豊Jのデウスウルトは、4角までの勢いと違って直線ではもうひとつ伸びきれずでダラダラと終わってしまった。

1000mが59.4とまずまず流れた。レースの上りが35.1だが、フルーキーは34.2の切れ。ヒストリカルが34.1と上廻るも、近道をされた分で届かず。1頭目立つ伸び脚は、今回差しに廻ったスピリッツミノル。この競馬ができたのが収穫。来年の穴馬を見つけた。
フルーキーは昨年のこのレースで、トーセンスターダムの2着。その後も重賞、G1でも電光掲示板は外していない堅実派。待望の重賞ウイナーとなった。この後は今年の初陣同様に京都金杯へと駒を進める事となるのだろうか。またトーセンスターダムとの対決が待っている。M.デムーロJの神がかり騎乗ばかりが目立つ近頃である。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。