外をスルスルと抜け出た!ディーマジェスティの勝利!!

ディーマジェスティ

16年4月17日(日)3回中山8日目11R 第76回皐月賞(G1)(芝2000m)

ディーマジェスティ
(牡3、美浦・二ノ宮厩舎)
父:ディープインパクト
母:エルメスティアラ
母父:ブライアンズタイム

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3角で先頭に立ってしまったリオンディーズ。さすがに直線ではフラついてしまった。左のエアスピネルサトノダイヤモンドに影響を及ぼした。だが勝ち馬のディーマジェスティーは、その横をスルリと抜けきって、第一冠へのゴールへ。さらに外からマカヒキが、これまたいい脚で追い込んで2着。結局は、ディープインパクト産駒のワン・ツー・スリーの決着。父、ディープインパクトは3冠馬だが、産駒としてはこれが初めての皐月賞制覇であった…。


太平洋側からの低気圧の影響で風が凄いが、雨は予報どおりに、そんなに影響を及ぼすものでなかった。ただかなりの強風で、朝からTVで見る映像からでは乗りづらそうに見えた。
レースを終えて移動する時間帯を見はらかって、武豊Jに電話した。実は前日の土曜は身内の不幸で葬式、阪神競馬も参加できず。日曜は中山へ馳せ参じる予定だった咳がひどくて、寝れてない状態。断念して自宅待機していた。
《どうでした~?》と訊く。『うーん、あれがなくても4着だったね。でも今日は落ちついていたし、折り合いも悪くなかったからね。ただあのアクシデントで腰を捻っていないかが心配だね。そこらへんを聞いておいて~』であった。やはり、エアスピネルはリオンディーズには先着はしていたとのジャッジどおりだった。

自宅にいると、TVはグリーンチャンネルと他のチャンネルも見れるのがいい。NHKの杉浦師の解説を拝聴していた。滑らかである。パドックでエアスピネルが今までで一番におとなしくしているのに驚く。何かすっきりした表情で歩いている。リオンディーズのテンションも悪くない。マカヒキ、サトノダイヤモンドはいつもどおりに静かに、しかしながら力強く歩いている。ディーマジェスティは《いい馬体の馬だな~》とは思ったが…。
そして返し馬。リオンディーズが、最後まで4角奥のポケットにいた。MデムーロJが、何度も首をなでていた。すでに気性面の難しさが内面から出てきているのを落ち着かせようとしているのかなと思えた。
そしてゲートイン。NHKはゲートの後ろを映してくれているから、いろんな馬の中での動きが見えた。奇数枠で前に入っていたエアスピネル、待ちすぎてガタガタとしている瞬間もあったが、何とか持ち応えてのゲート。

ゲートオープン。一番外のディーマジェスティが、外へとヨレたのが見えた。リスペクトアースがすっと出ていく。と、外からリオンディーズが前に出て行く。掛かって行っている風ではない。これは前に行く作戦と判る。サトノダイヤモンドで真ん中あたり、マカヒキは後方グループ。エアスピネルは前5頭の先行のちょうど後ろぐらいで、いい位置で向こう正面を通過。しかし映像で、ちょっと遠くなった3角あたりでリオンディーズが先頭に立ったのには驚く。4角先頭はありうる戦法だが、ここではいくら何でも早すぎるだろうと思う。1000mを58.4のペースで行っている速い流れでだ。

3角から4角の間で、逃げたリスペクトアースは失速。4角手前では主力馬が固まってきていた。サトノダイヤモンドがけっこう早めに上がってきていた。後で見ると、ここで蛯名Jのディーマジェスティは、馬群のちょうど後ろで待つ程の余裕。ここで脚を使っていないのが良く判る。ここでの貯めが、最後の切れに出ている様だ。マカヒキはまだ見えていない。

直線に入ってきて、まだリオンディーズが先頭。この時には、まだこの馬が勝つのではないかと誰しもが思っていたはず。しかしラスト1ハロンあたりで脚色が苦しくなった様で、MデムーロJの右ステッキに反応して、左へとヨレた。そこへ並んできていたエアスピネル、サトノダイヤモンドが外へ流される。特にエアスピネルは体を捻る様な動きをしていた。その外を、ディーマジェスティがすり抜けて行った。マカヒキがメンバー中で最速の上がり脚を駆使して来たが、その先にディーマジェスティがいた。そんな今年の皐月賞であった。
ディープインパクトの子供が6頭も出ていた。だから1,2,3着を独占した、そんな簡単な事ではない流れと結果だ。

そもそも、ディーマジェスティを軽んじていたかも知れない。と、言うよりもあのハートレースマートオーディンの2頭がともに凡走した共同通信杯を、しっかりと消化しきれていない。あの負けが何だったのかと思うばかりで、勝ち馬の強さを見逃していた様でもある。おそらく蛯名Jは心の中ではきっと、《見ていろよ!》と不屈の闘志でこの一番を待っていたに違いない。そんな鮮やかな勝利でもあった。
父ディープインパクトも、皐月賞ではスタートでヒヤリとした思いがあった。後の2冠は楽に見ていれた。皐月賞が一番に難しい競馬になる気がした。

新たな馬も加わってくるダービーでは、関西馬の巻き返しも必至だろう。ますます面白くなってきた、今年の牡馬クラシック路線だ。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。