血が騒ぐ!ヴァナヘイムが、それこそ何もせずゴールイン!!

ヴァナヘイム

16年8/28(日)2回小倉10日目5R 2歳新馬(芝1800m)

  • ヴァナヘイム
  • (牡2、栗東・角居厩舎)
  • 父:キングカメハメハ
  • 母:グルヴェイグ
  • 母父:ディープインパクト

またまた上質な馬が、小倉新馬戦に登場した。ヴァナヘイム、あのエアグルーヴ、ダイナカールへと続くエリートの血筋。夏の小倉からデビューと今までにないぐらいの素質馬をおろしてきた今年の小倉夏のメイクデビュー戦。今回も着差は1馬身に満たないものだが、内容はまったくの大差に近いもの、鞍上浜中Jの手綱に添えたこぶしが一度も動くことはなかった…。

台風10号の影響で雨が降りだした小倉競馬場。3レースから、芝も稍重馬場の発表となった。まだ著しく悪くなった印象はないが、だいぶ内が荒れてきているから、雨が降って芝が取れた後は、かなりぬかるんで来るのだろう。後半が思いやられる雲であった。
スタンド前からのスタート。1.3倍と、新馬戦ではあまり見られないぐらいの支持。若駒だけにやってみないと判らない部分はあろうが、稽古の動きや時計面から、まずは負ける馬が見当たらない下馬評であった。パドック画面で見る馬体は、及第点以上のもの。ルックスからにして、他の馬にはない雰囲気を醸しだしていた。

スタートも無事にスンナリと出て、何もせずでもすぐに2列目の外へつける。スタートから最初のカーブへ、またその後のラップもまだ12秒台で経緯していくが、2コーナーに入るあたりからは、13秒台へとスピードダウンする。そこらで頭を上げたりする馬がいるものだが、ヴァナヘイムはそこも無事にクリア、変なことをする気もなく、真面目に走っていく。
前半1000mが1.05.0と、新馬戦らしくユッタリの流れで進んでいく。流石に新馬戦では、向こう正面で後ろからマクっていく様な雑な競馬はなかった。先頭から後方までそう縦長にはならず、意外とまとまって進んでいく。 3コーナーを過ぎて、それまでの7番手の位置から前進し始める。それも外を行くクリノピョートルの内を通ってのもの。PVなら内外の間隔が判るのだが、TV画面では判らない。でも馬の中を進んでいけることが、要らぬ事をしないという乗り役と馬の信頼感であろう。

4角手前で前を行くライラックパープル、ディランフィールド、そしてカンナの後ろでじっと脚を貯めて、廻るあたりでは外から前へとさらに出て行った。 直線ではディランフィールドと並んではいるが、まるで古馬の様な落ち着き払った感じ。浜中Jは、何もしないでそのままゴールへと向かっていく。最後までアクションを起こさずでのゴール。4分の3という着差ながら、その差はとてつもなくあると思える手応えであった。最後の2ハロンが12.2~12.1と、鋭い脚を使う必要のないラップだったとは言え、馬なりでのものだけにその能力がどれだけなのかは判らない。後日に浜中Jに訊いてみたいものだと思っている。

この夏の小倉では、池江厩舎のミラアイトーンにペルシアンナイト、そして角居厩舎のヴァナヘイムと、上質の馬が勝ち上がった。それらが今後、どの路線を歩んでいきどの様に成長していくのか、また楽しみが増えた。 そして2歳戦はまだ夏なんである。これから秋となってもっとまだ強い馬達が出てくるとなると、嬉しい悲鳴。いい馬、強い馬の競馬を見るのが楽しみなんである。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。