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1頭だけ次元が違う脚 シンハライト、秋の緒戦を好発進!
2016/9/20(火)
16年9/18(日)4回阪神4日目11R 第34回ローズS(G2)(芝外1800m)
- シンハライト
- (牝3、栗東・石坂厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:シンハリーズ
- 母父:Singspiel
台風16号の影響で雨がかなり降った。朝から芝は重発表。外を通る馬では来れない馬場。先行有利に、内の馬ばかりの決着が続く。そして朝からディープインパクト産駒が1頭も連に絡めない。それほどに力のいる馬場だと思えた。 最内枠から、クロコスミアが軽快に逃げる。誰にも絡まれずに単騎の逃げで直線半ばまで来る。後続との差からもそのまま押し切りか、と思えたゴール前で1頭だけ迫ってくる馬が。シンハライトが、この馬場で33.7の強烈な末脚を駆使して交わした。 1頭だけ次元の違う馬がいるのかと思わせるものだった、秋華賞トライアルのローズS。シンハライトが充実の秋を迎えたと言っても過言ではなかろう、そんなレース後の感想だった。
朝から芝はかなり重そうで、外を廻った馬はそう来れてない。そしてディープインパクト産駒が5Rの新馬戦で2頭、7Rで1頭。9Rと10Rにも1頭ずつ出走していたが、5着が最高の着順と出番すらない馬場状態であった。 ローズSのパドックでは、暗くなった空から雨粒が再び落ちだしてきた。レースの時はどしゃ降りになるのではないかと思えたほど。しかし、幸いに空は我慢してくれた。 早めにスタンド側に移動して返し馬をみる。ジュエラーが《ちと硬いかな~》なんて、自分なりの馬診断をしていた。クィーンズベストがパドックから気配が良くて注目していたが、その時に連闘で使ってきているのに気がつく。道理で活気があるのかと…。この馬場ではディープインパクトの子供は動けまい、ならばどうなるのか…と。レース前の予想が膨らむ。
スタートした。クイーンズベストの出が悪い。大外からラベンダーヴァレイが行くのだろうと思っていたが、その気もない。後ろを見ていて、前を見るのが遅くなった。気がつけば最内のクロコスミアが先頭に立っていた。アットザシーサイドがすっと前にいて、外にバレエダンサー、関東からただ1頭の参戦である。カイザーバルが内の3番手。そのすぐ外めにジュエラーがいた。レッドアヴァンセは中団ぐらいに位置し、シンハライトがその直後にいた。クロコスミアの逃げは軽快で、2番手に2馬身近いリードを保つ。ラベンダーヴァレイがどう出るのだろうかと見ていたが、大外枠からさらに外へと行っている様だ。先頭に行かせない様に、馬群を避けている様子だ。そのラベンダーヴァレイが上がっては行くが、好位の6番手ぐらいで抑える。
クロコスミアは淡々と軽快に逃げていく。前半の3ハロンを35.4と、これ以上ないペースだ。3コーナーを過ぎてクロコスミアの逃げは、やや後続との差は詰まったものの楽な手応えで行く。シンハライトのすぐ前にいたレッドアヴァンセが先に動いていく。馬群の切れ目のところにいたデンコウアンジュの後ろまで上げる。前の集団は7頭で形成。内ラチ沿いには3番手カイザーバル、6頭目のジュエラー。このすぐ後ろがフロムマイハートで、前から3馬身ぐらいの団子だ。1000mを59.8で先行有利な流れだ。4コーナーを廻る時もクロコスミアは貯めに貯めていて、2番手アットザシーサイドが並びかけてきたがまったく動かずで、直線へと入ってきた。外廻りの柵が切れるあたりでは、またクロコスミアのリードが半馬身と開き始める。
当然にレッドアヴァンセが視界に入っている私。まだ手応えも十分で、前へと上がって来そうな脚色だ。再びラチ沿いにクロコスミアが走る。ラスト300mで、後ろの脚色からもしかしたらと思える。ラスト200m。2番手にカイザーバルが上がる。レッドアヴァンセの勢いがなくなり、その外のデンコウアンジュ、さらにその外のシンハライトが勢いを増してくるのが見える。だが前との差がかなりあって、届くかどうかは何とも言えない。岩田J独特の追い方で左ステッキで大きく追う。真ん中のカイザーバルの勢いがなくなる。外シンハライトが鋭く迫っていく。が、クロコスミアがまだ先頭。岩田Jが外をチラっと見ながらゴールした、その時にシンハライトがゴールに入った。
勢いではシンハライト。だが体勢的にはクロコスミア。ギリギリに岩田Jの快挙ではと思って階段を急いで降りて検量室横を通る時に掲示板を見る。まだどちらの番号も書いてなかった。かなり際どいな~と思ってレース後の感触を訊きに武豊Jが鞍を外すところまで行く。《最後は止まった…。ウン。でも京都ならいいよ》と前向きなコメントをいただく。その頃には勝者が決まっていた。シンハライト恐るべし。キッチリとハナ差交わしていた。おそるべき根性で、負けることが大嫌いな様だ。ジュエラーは失速して11着の秋緒戦であった。
火曜朝。スタンドで取材をする。西浦師は《岩田にはラチピッタリを行ってくれと言っておいた》と。ハナは鞍上の判断だろう。いい仕事をした様である。後で調べると、札幌で使うぐらいにできていたクロコスミア。この馬場で仕上がりも良かったら、当然の結果でもあるかも知れない。そしてジュエラーの藤岡師にも聞けた。《ウーン、帰ってきてから1ケ月。馬場も悪いのもあったけれど、そこでしょうかね~》と。久々でいきなりから走れと言うのも無理らしからぬものがあっただろう。叩いた次走は違ってくるハズだ。
何よりもシンハライトの精神力。負けない気持ちが、こんな馬場でも展開が辛くとも仕事をさせる。強い女でありますね…。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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