キタサンブラック、秋初戦をいい形でスタート!

キタサンブラック

16年10/10(月・祝)4回京都3日目11R 第51回京都大賞典(G2)(芝2400m)

  • キタサンブラック
  • (牡4、栗東・清水厩舎)
  • 父:ブラックタイド
  • 母:シュガーハート
  • 母父:サクラバクシンオー

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ヤマカツライデンが逃げ宣言。キタサンブラック がどんな2番手をするのか注目していた今回。やや外に構えて1馬身後ろで追走していく。上がりの800まで動かずの武豊J。4角を先頭で廻って最内へ進路を取る。追い上げてきていたラブリーデイ、アドマイヤデウスらの追い上げにヒヤリともしたが、最後はクビ差だけ前に残してのゴール。
今年はJC、そして有馬記念とすでにローテーションが発表されているだけに、まずは慎重な好スタートを切れたと言っていいだろう。そんな秋を感じさせるウロコ雲が漂う、淀の空でした。

レースを振り返る。ヤマカツライデンが逃げる。そこは周知の事実であった。だがそう楽に行かすこともしないはずだし、自分を生かせる乗り方はどんな風にするのだろうかと思っていた。
ヤマカツライデンが逃げて内に入る。その内をピッタリ行くのかと思っていたが、まったく違った。やや内を開けて、むしろヤマカツライデンの外へ出しての2番手を行く。スタンドのゴール少し前で観戦していた私。いつの間にこれだけの人がいたのかと思えるほどスタンドは人、人、人で埋まっていた。アドマイヤデウスがすぐ後ろのインにへばりついている。絶好のポジションだ。ルメールJのラブリーデイが、早めにそのアドマイヤデウスの外に並んでいる。サウンズオブアースは少し後ろめだ。

2コーナーを廻って淡々と流れている。最後方のファタモルガーナが少し離れていた様だが、あまり視界に入っていなかった。相変わらず絶好の位置にいるアドマイヤデウスが気になる。内々でいい感じで行けている。まるで天皇賞のカレンミロティックのポジションである。
向こう正面を過ぎて坂に入っていく。ここらで武豊Jが後ろを股の下から確認するのが見える。まだ誰も動かない。ラストインパクトが少し順位を上げる。その前にいたラブリーデイが頭を上げ始める。後でここのラップが13.0とさらに遅くなったと判る。さらにペースダウンしていた前の2頭なのである。
そしてラストインパクトがさらに上がって、キタサンブラックの外へと並び加減で4角馬へ入っていく。いつの間にか最後方だったファタモルガーナがサウンズオブアースを交わして、ひとつ前にいる。サウンズオブアースは、ひと塊の馬群の後ろめとなっていた。

直線に入ってきたが、まだ先頭はヤマカツライデン。しかしキタサンブラックの手応えとはだいぶ違いが出ていた。ラチが切れて再びラチが見えてきたあたりで、ヤマカツライデンを交わした武豊J。アドマイヤデウス、ラブリーデイの外へ並んだラストインパクトが、かなり追い始める。まだその内の2頭は追っていない。
武豊Jが左ステッキを入れたのが、ラスト200にかかろうかとの時。すぐに反応して2馬身近く離した。その後で、まずはラブリーデイが2番手に上がる。しかしその内からのアドマイヤデウスの脚色がいい。キタサンブラックのリードが少なくなってきた。だがスタンドで見ていた私にはゴール板が見える。交わすまでは時間と距離がないと判断できて、安心して見ていられた…。筈であったが、後でヒヤリとするまで接近したアドマイヤデウスだった…。

検量室前で待っていた2着のアドマイヤデウスの橋田師の傍に行って、声をかけさせて貰う。《先生、今日はパドックから光っていましたね~・・》と。『うん、いい出来だったよ~』の返事でした。
そして北島三郎関係の方達と握手攻めの清水久師に、こちらも落ち着いてから握手を求める。そして『見事に折り合ってくれましたね~』と賛辞の言葉を貰う。『シャニムニ、仕上げる訳にもいかないですからね・・』と最後に師は語った。そう、この後のJCまでしばらく時間もある。実際、パドックでは《絶好調》とは思えなかったと思い出す。まだラインが研ぎ澄まされているとは感じなかったものだった。

検量室前の枠場後ろの広いスペースを、悠々と歩いているキタサンブラック。インタビューを終えて待っていた橋口先生と握手をした武豊Jが跨った。そこに行くまでに少し話が出来た。
《内を開けていたね~》の問いに、簡単に『イロイロ試したかったんだ~』だった。ヤマカツライデンが逃げて、自身としては初めて2番手の競馬をした鞍上。そこでいろいろと考える事があったはず。そして清水久師の言葉から《仕上げはどうだったの・・?》と訊いてみる。『いや悪くなかったよ、いつもあんな勝ち方の馬だからね・・』と、ちょっとニュアンスが違っていた。けっこう馬は出来ていたとみていいのだろう。そこは乗り手と仕上げる方との感じ方の差だろう。

一段落したあとで、PVを見ていない事に気づく。急いで検量室脇のPVを見上げる。スタートからジンワリの戦い、そうそう坂の下りでラブリーデイが頭をいやいやしたっけ、武豊Jが股の下から後ろを見たっけと思い出す。4角では一番外のラストインパクトの勢いが良すぎる。アドマイヤデウス、ラブリーデイ、そのラストインパクトを加えた直線半ばまでの攻防、そして最後はまるでアドマイヤデウスに交わされたんではないかと思えるPVで、縦の映像。終わって結果を知っていても、この映像には驚かされる。それほど勢いがある2着馬の脚だった。映像の怖さを知らされる。
帰りの空には、ウロコ雲が広がっていた。もう秋なのである…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。