アルアイン、皐月賞制覇!池江厩舎がワンツーの快挙【平林雅芳の目】

アルアイン

17年4/16(日)3回中山8日目11R 第77回皐月賞(G1)(芝2000m)

  • アルアイン
  • (牡3、栗東・池江厩舎)
  • 父:ディープインパクト
  • 母:ドバイマジェスティ
  • 母父:Essence of Dubai

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69年ぶりの牝馬の皐月賞制覇となるのか。ファンディーナに大きな期待のかかった今年の皐月賞であったが、ファンディーナは正攻法のレースで直線に入って一度は先頭に並ぶシーンもあったが、そこから力尽きた感じで7着敗退となった。前にいた馬が残る流れではあったが、4角手前で下り気味となったアルアインがもう一度盛り返して、先に内ラチから抜けだしかけたペルシアンナイトをクビ差交わしてのゴール。
池江厩舎のワンツーとなった。カデナは9着、レイデオロは6着ともう一歩が足りなかった…。

今日は自宅でTV観戦。パドックでダンビュライトが、課題の落ちつきがあって馬体も良く見せているのに嬉しく思っていた。ファンディーナの前走時を知らない、今回のパドックではちとうるさい感じがあった。走る牝馬は総じて大人しいのだがと、気になるもの。カデナも悪くないし、レイデオロもそう太いとか感じず。後はレース間が空いている分での反応かで、ファンディーナが抜けているとは思えないパドックでの周回とみた。

ゲート入りが始まり見つめるのは、どうしてもダンビュライト。最後の馬が入る前あたりで、枠内でチャカチャカしだす。タイミングが悪かったら前に行けないなと、心配ばかりする。
だが開いた瞬間は何事もなかった様にポンと真っ先に出て行った。隣のアルアインの出も良く並んで前に出すが、その内のファンディーナもいいスタートで、岩田Jが《逃げの手か?》かと思えるぐらい。一番内のマイスタイルは、行く気もないのかジワっとした出だ。むしろスワーヴリチャードの方が前だった。外からアダムバローズが前に出てきて、最初のコーナーへと入っていく。カデナとサトノアレスがいちばん後ろにいたのは見えた。

向こう正面に入って、内が開いているのか、後ろにいたペルシアンナイトが内をスルスルと前へと出て行く。ここらの進め方は馬ではなく鞍上のMデムーロJの判断力なのであろう。あっと言う間に前のグループの直後につけ、差を一気に縮める。ファンディーナとアルアインの外めにダンビュライトがつけて手応えも悪くないので、これはかなり楽しみとほくそ笑む。
3コーナーを過ぎ4コーナーへ近づいた時に、真っ先に手が動いたのが武豊J。ダンビュライトを前へ前へと押しやっていく。ファンディーナがその内でジッといい手応えでいるのが見える。4コーナー手前でアルアインが少し下がり気味となった。その内の横を、ペルシアンナイトがさらに前へと進めて来ていた。

4コーナーへ入る時に、ダンビュライトの武豊Jが勝負に出た。早めに前へ出て粘り込みを図ろうとの作戦か。その動きに合わす様に、岩田Jもファンディーナにゴーサインを出す。勢いが完全につく前だったからなのか、4コーナーのカーブを廻る時にファンディーナに寄られて、外へと流されるダンビュライト。ファンディーナは体を完全にダンビュライトの前へと入れ、さらに前へ出ていく。
同じ頃に、内ではペルシアンナイトがスルスルと前へと出て行く。外ではクリンチャーも粘っている。一旦はファンディーナに前へ出られたダンビュライトも、もう一度外から伸びだした。ファンディーナを挟んでダンビュライトが外、内ではもう一度脚を伸ばしてきたアルアイン。
そのアルアインがグングンと加速していく。ダンビュライトの伸びも悪くはないのだが、前を行く2頭を抜く勢いまでない。内のペルシアンナイトが前に出ていた様だが、最後にアルアインがグッと伸びて差し切った。
そのゴール前、追っていながら外へと膨れたアルアイン。完全にダンビュライトの前に入り進路を狭くしている形で、武豊Jが少し手綱を少し止めるシーンもあったぐらいだった。

PVと実際の映像を何度も何度も見る。すると判ったことは、最初のコーナーに入る前に、ペルシアンナイトが内から出てきたアウトライアーズと外にいたキングズラッシュの間で狭くなり、頭を上げる不利があった。そこで下げて内へと入って行くペルシアンナイト。しばらくは前を行くコマノインパルスの後ろをじっとしていたMデムーロJだったが、2コーナーを廻ってすぐに前へと進出していく。
前にいたマイスタイルの横山典Jが、《誰や~、こんな狭いところに入ってきたのは?》と思ったのかは知らないが、チラっと内を見た。そこを知らぬ顔で内ラチ沿いから前へ出て行ったペルシアンナイト、2列目の内にいたファンディーナの岩田Jも、右後ろから蹄音が迫って来たので後ろを確認する様子が見える。
さすがにそのファンディーナの前までは行かないで抑えたMデムーロJ。内ラチ沿いでは前から3頭目の絶好位をキープして、ラスト600mを迎えた。

ペルシアンナイトの動きをコピーするかの様にカデナ、さらにその後ろをレイデオロがラチ沿いを追走して行った。この動きで外を廻っている馬と大きな差を詰めた感じだ。ファンディーナは内ラチから外へと出して、武豊Jのダンビュライトの方へと4コーナーで動いて行き、ポカっと前が開く。そこへ一旦、馬場の悪さに脚を取られたのか、失速気味となったアルアインが入ってきて、池江勢の2頭が馬体を接して直線入口で凌ぎ合うシーンも見えていた。そこでは一瞬だけM.デムーロJのペルシアンナイトが、動から静になった瞬間も見られた。どうやらネットで噂されているシーンの様である。
一気に前と差を詰めたいカデナとレイデオロ。カデナは馬場の真ん中へレイデオロはそのまま前へと進めて行くが、勢いがつかない。そりゃそうだ。そこは11.4~11.4と2ハロンもこのレースで一番トップギアに入っていた瞬間でもあった。

PVでゴール前100mからの瞬間を縦に観てみると、一度もペルシアンナイトは先頭に立っていないのかも知れない。ラスト50mでは、すでにアルアインが前に出ていた。内から際どく迫ったのがペルシアンナイトであり、最後はダンビュライトの方へとかなり斜行して行く姿で終わる。
池江厩舎のワンツー。500キロを超すディープインパクト産駒の勝利は、牝馬ではなくアルアインであった。そしてこの牡馬は5月1日生まれであり、このメンバーでも一番の遅生まれではなかろうか。まだまだ成長の段階だろうと思える。

ふと毎日杯から皐月賞の過去10年を調べてみた。毎日杯、京都新聞杯からダービーへと進んでダービー馬になったのはディープスカイにキズナがいるが、毎日杯から皐月賞のローテーションがどうなのかを知りたくなった。
過去10年で毎日杯の勝ち馬が皐月賞に参戦したのはたったの2回のみ。2007年のナムラマースと、2015年のミュゼエイリアンだけであった。やはり皐月賞へと進めるのは、日程的にあまり良しとしないのであろうと思える。現に池江厩舎のサトノアーサーは、皐月賞をパスしてダービーへの路線を、早くから発表している。
今回の結果を踏まえて、ダービーへと進める各馬。右廻りから左廻りに替わって当然に巻き返しを狙う馬もいようし、まだダービーへのトライアルが数戦あって、そこで権利を取ってくる馬もいるだろう。今年のクラシック路線は、ますます混戦模様になるのは間違いなさそうである。
まずはG1初勝利となった松山ジョッキーと、ワンツーの快挙を達成した池江厩舎に敬意を表したい。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。