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【有馬記念】ダイユウサクでファンを驚かせた熊沢重文元騎手がグランプリで狙う馬は…!?
2023/12/22(金)
長い日本競馬の歴史で、グレード制導入後、平地G1と障害G1を勝ったジョッキーは熊沢重文元ジョッキーのみ。37年に渡る騎手生活で数々の伝説を打ち立て、91年有馬記念のダイユウサクなどで何度もファンをあっと言わせてきた名手が、年末の祭典の展望、そして大穴を開けた自らの経験を語る。
有馬記念・鉄人のミカタ
有馬記念はファン投票があるので、ファンとしても自分が参加している気持ちになってそれだけ期待も大きくなるだろうし、そういうところが魅力のひとつじゃないかな。
今はホープフルSが出来ましたが、有馬記念といえば1年の締めくくりという感じがあると思いますし、乗り役からするとそういう雰囲気があるから競馬場の盛り上がり方も他のレースと違ったかと思います。
今年の有馬記念は初めて競馬場のスタンドから観戦する予定です。ファンの皆さんと一緒に盛り上がりたいですね。
僕は現役時代、騎乗する前に大体まずはどんな展開になるか考えていましたね。どの馬が行くのか、そして自分はどの辺りから競馬をするのか、と。馬場状態のチェックも重要です。馬場状態によってコースの通るところも変わってくるので、有馬の前週や当週に中山で乗っている人間は有利だと思います。
そういえば僕はダイユウサクで勝った有馬記念が中山初騎乗だったので「有馬の当日に1頭乗せるか」という話があったんですけど、蓋を開けてみたらそれが最終レースのダート1200で…。
芝でもないわ、何より有馬の後だわで何の参考にもなりませんでした(笑)。有馬の表彰式を終えてバッタバタのなか急いで乗ったんで、"ダート1200のレースだった"ことしか覚えてません。
今年のレースの話に移りましょう。ダービー馬が3頭出るんですよね。やっぱり僕ら世代では、ダービー馬っていうのは一目置いちゃうんですよね。あの「ダービー」を勝った馬だと。
この中ではシャフリヤールは僕が好きなタイプの馬ですね。パンチ力があるし、レースでも乗りやすそうだし。1回レースで乗ってみたかったな(笑)。
あとはドウデュースとタスティエーラ…。この2頭を比較すると、タスティエーラの方が中山コースに上手く対応出来そうな感じがするかな。斤量56キロも有利ですよ。好きなタイプのシャフリヤールと、コース適性と斤量魅力のタスティエーラがどういうレースをするか、楽しみに注目します。
有馬記念・鉄人のプレイバック
ダイユウサクの母クニノキヨコの産駒によく乗せてもらっていて、上のクラスで活躍する馬ばかりだったのでダイユウサクも楽しみにしていましたが、最初に乗った頃はまだ馬が弱くて化骨も進まず、「ちゃんと競走馬になれるのかな?」と心配になるくらいでした。
デビューが遅かったのも、体質の弱さの影響ですね。年齢を重ねて徐々に体がしっかりしてきましたし、6歳で金杯を勝つ頃にもまだ骨膜など弱いところが少し残っていましたが、当初期待していた通りの走りをしてくれるようになってきたんです。
良い瞬発力がありましたし、1200から2500とあれだけ幅広い距離に対応して、しかもG1まで勝った馬はなかなかいないでしょう。今は調教師になられた平田修さんが普段の調教で乗っていて、僕も要所要所で追い切りに乗りましたが、良いときと悪いときの差がハッキリしているタイプでした。
勝った91年有馬記念の時はG1で緊張はしましたが、いざ競馬に行けばレースの格の大きさはそれほど感じませんし、コース形態や馬場状態を踏まえてどう乗れば馬の特徴を生かせるかなど、G1でも未勝利でもレース前に考えることは大体一緒です。
今振り返っても「勝ち負けになるか」など考えていたかどうか、正直その辺りは記憶がありませんが、勝った金杯のとき以上にすごく状態が良かったので、デキだけで言えばやれていいと思っていました。
11月の引退式にダイユウサクの勝負服で臨んだ熊沢元騎手
僕にとって中山競馬場で乗るのは有馬が初めてでしたし、競馬が盛り上がっていた時期でお客さんも凄かったですよ。コスモドリームでオークスを勝たせてもらっていましたが、東京競馬場ともまた雰囲気が違うし何と言うか…、有馬ではファンの圧力みたいなものを感じましたね。
凄い歓声のなか馬場に入っていくのは気持ち良かったですし、お客さんの盛り上がりを感じるのも好きでした。今は「レース前は静かに見守りましょう」という雰囲気になってきて少し寂しさも感じますが、馬にとっては良い環境だと思います。
最後の直線で抜け出したときの脚色は良かったですが、あのクラスになると凄い脚を使う相手もいるので最後まで油断出来ませんでした。大歓声のなか直線でグイグイ伸びていくのは、本当に気持ち良かったですよ。
まだ大した実績もないなかで、あれほど大きなレースに乗せてもらって有難かったです。内藤先生に育ててもらってきて、やっと少し恩返しが出来たかなという気持ちでした。
プロフィール
【熊沢 重文】Shigefumi Kumazawa
1968年1月25日生まれ、愛知県出身。
小学校、中学校の先輩に南井克巳元騎手がいる環境で育ち、1986年に競馬学校卒業。同期に横山典弘騎手、松永幹夫現調教師らがいる。3年目の1988年オークスをコスモドリームで制してG1初制覇。3年後の有馬記念では単勝14番人気のダイユウサクでメジロマックイーンを倒し優勝し、大きな話題を呼んだ。
2012年の中山大障害をマーベラスカイザーで制したことで、グレード制導入後初めて、平地、障害でG1を制覇。JRA最多の障害257勝など数々の伝説を打ち立て、今年惜しまれつつ引退したレジェンドジョッキー。
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