元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
晴天 天晴れ(あっぱれ)
2016/9/1(木)
皆様、こんにちは!台風の影響は大丈夫だったでしょうか?まるで、ダルビッシュ投手の変化球の様な軌道で日本を襲った台風の影響で、大変な雨が降りました。我が家でも台風に備え、色々なものを購入し、雨漏りしないようにと願った週となりました。
そんな台風が訪れた前日には、台風のように激しい戦いが、北海道で繰り広げられましたね。特に注目だったのは、世界の名手が集まり、競い合ったWASJだったのではないでしょうか。今年で舞台を札幌に替え、2回目だったのですが、今回はJRA代表として挑んだミルコ・デムーロ騎手が優勝しましたね。着順も5-1-1-5と全て掲示板に載る結果でしたし、何よりも評価C・Dで勝ったのは、まさに彼の腕があったからだと思います。嵐ではなく晴天でもなく、天晴れでした!評価が低い馬でも、どの様に走らせるか。馬場を読みきり、自らレースを作っていた辺りは、これこそがトップジョッキーだと思わされました。
そして、終了後には優勝賞金を地震被害があったイタリアに寄付すると発表しましたね。レースにも兄弟で喪章を付け挑み、寄付をするという男気に、見ているファンの皆様同様、熱い思いにかられました。2位には天才豊ちゃんが入りました。去年に引き続きでしたが、歳をとっても見せ付ける天才の腕前には痺れましたね。この大会は本当に腕がないと勝てないと私は思います。歴代の優勝者を見ていても納得ですからね。馬あっての騎手ですが、今回のようにシャッフルされたレベルの馬で勝つ訳ですからね。来年はどの様なレースが繰り広げられるのか、今から楽しみでなりません。
そんな熱い戦いの中、北海道ではサマースプリントシリーズのキーンランドCが行われ、見事リーディングトップの戸崎君騎乗のブランボヌールが優勝を飾りましたね。レースは、モレイラ騎乗のシュウジがハナを行く展開になり、他馬が予想していたかのようにマークされる展開に。迎えた4コーナーではモレイラ騎手らしからぬ早目の仕掛けの中、待っていましたとばかりに戸崎君が仕掛けると、ハンデ斤量の51キロを活かし、父譲りの末脚で一気にまとめて差し切る形で勝利しました。これにより、戸崎君はサマージョッキーシリーズでもトップに躍り出る形となりましたね。レースを見ていても自信と共に、見据えたようなレースをしていますからね。この勝負勘こそが、現在のトップという現状を表しているように思います。今後はスプリンターズSに向かう予定の当馬は、スプリント戦線では3戦3勝だけに、楽しみな馬がまた一頭増えたと嬉しく思いました。
先週の競馬では一つ言わせて頂きたいことがあります。それは、札幌9Rですね。審議にもなりましたが、モレイラ騎手のあの騎乗で罰金だけという判定には、待ったをつけたいです。元騎手の目線からすれば、確かに右ムチで馬を寄らないように見せていますが、手綱は確実に隣の岩田君の馬にぶつけにいっています。結果、ぶつかったことにより、ハナ差での勝利をしましたが、これは騎乗停止だと個人的には思っています。着差に関しても変更がなかったとみなしましたとありましたが、個人的には変わったと思います。特に事象があったのがゴール前とうことでもそう感じます。
実際にぶつからなくても4日の騎乗停止を受ける騎手もいれば、コーナーで狭くしたというだけで騎乗停止を受ける騎手もいるんですからね。確かに非常に上手い技術だとは思いますが、これを許していれば、色々な今までの騎乗停止に疑問の?が出てしまいます。その他のレースでも、豊ちゃんをブロックしているレースもありましたしね。総合しても、故意ととっても良い内容だったのではないかなと思います。
それでは今週の注目レースに参りましょう。土曜日には夏競馬の終わりをつげる札幌2歳S、そして日曜日には小倉2歳S、そして新潟記念が行われます。その中でも、私の注目は札幌2歳Sですね。今回は非常に面白いメンバーが揃ったと思います。中でも一番注目をしているのはコリエドールになります。前走の新馬戦では、直線並ばれてからの二の脚を使って、根性を見せ付けてくれたことに加え、クロフネ産駆らしいパワーのある走りが札幌の洋芝にも合っているように見えますからね。今回は鞍上がモレイラから、絶好調福永君に代わることで、どのような力を見せ付けてくれるのか楽しみにしています。
次に注目を集めるのはタガノアシュラではないでしょうか。豊ちゃんとのコンビで、出たなりでハナを切って勝負ができれば、こちらも面白い一頭だと思います。その他には、英ダービー登録馬のトラストがどこまで復調しているのか、大魔神のインヴィクタがどこまで太刀打ちできるのかなど、大変面白い内容になりそうです。台風の影響で、馬場が緩くなるであろう中、各馬がどのような走りを見せるのか。夏競馬最後の締めくくりは、嵐ではなく晴天のような晴れた気持ちになる結果を望みます!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。