元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
新元号と新怪物
2019/4/11(木)
皆様、こんにちは!新元号の次はお札が変わるというニュースが流れましたね。全てが一新されるということで新しい日本の誕生のような気がして非常にわくわく年甲斐もなくしています。そして、やっとトレーニングセンターの坂にも桜が咲き誇りました。毎年のことですが、この桜を眺めることが、春の始まりを感じる合図になっています。さらに、早いもので家の孫も小学校入学となりました。少し前まで乳児だったはずが、みるみる大きくなりさみしい気持ちもありつつ、育った分、「じぃじ遊ぼう」とできることが増えてきたことに喜びを感じてもいます。
そんな桜満開の中、平成最後の桜の女王を決める戦い桜花賞が行われました。勝利したのは、グランアレグリアとルメールのコンビでした。前走では牝馬ながらに牡馬と戦い、奇しくも敗戦してしまいましたが、今回は同じ牝馬同士。不安視されたレーススケジュールも、むしろ強調材料だったと言わんばかりの勝利になりました。前走ではアドマイヤマーズとミルコが早めからマクり、一気に馬の気持ちを折ったことで負けてしまいましたが、今回のルメールはまさにやられたことをやり返したことになりましたね。その上、あのポジションでも折り合うのが難しい馬を折り合わせ、ペースが落ち着いた時に一気に突き放すストロングスタイルは、この馬だからこそ成せたレースだったと思います。それでは、レースを振り返りましょう。
まずは、大外枠に入ったプールヴィルと秋山君が引っ張る形となりました。もともと行きっぷりのいい馬だけに、内枠でなんとか保たせてマイルを走らせていただけに、今回は秋山君も勝負を懸けたレースとなりました。そのことにより、ここ10年で2番目に遅いペースとなりました。迎えた4コーナーでは緩む所で、一気にグランアレグリアが動き、後続を引き寄せず、デビュー戦でもレコードを出したように、今度は桜花賞レコードをマークして勝利しました。
1番人気に推奨されたダノンファンタジーとしては相手が違いすぎたこともありますが、冷静に判断すれば、もうひとつふたつ前の着順も狙える競馬ができたと思います。G1ですから鞍上としても勝ちに行く競馬をして正面から負けたということで、今後は距離を含めクラシック路線からは外れていくのかなと思いました。2着に入ったシゲルピンクダイヤは和田君も勝負を懸けた乗り方をしただけに、運がなかったですね。しかし、ペースを考えればこの馬も十分、勝者といってもおかしくない走りをしたと個人的には思っています。
デビュー以来、体重を減らし続けているアクアミラビリスは見直しが必要だと思います。まだまだ子供の体を能力だけで駆け抜けてきた馬ですから、今回のマイナス体重は少なからず、影響があったと思いますね。これも気難しい3歳牝馬ですから、今後体が増えてくれば、秋華賞ではまた面白い存在になれると思っています。ミルコもペースを読み、馬場を考え、素晴らしいポジションで競馬をしましたが、今のこの馬にとっては後ろからズドンがあっており、レース展開が合わなかったという結果だと思います。
今週は平成最後のクラシック皐月賞が行われます。こちらのレースは三つ巴の戦いになるのではないでしょうか。まずは2歳チャンピオン、サートゥルナーリアに注目が集まります。今まで全て完勝の怪物がここでも力を発揮するのではないかと考えています。鞍上には桜花賞を制したルメールになりますし、あとは枠だけという感じではないでしょうか。もう一頭の2歳チャンピオン、アドマイヤマーズにとっても負けられない一戦になるのではないでしょうか。前走、初の敗戦を糧に名門・友道厩舎が手を打ってこないわけがありません。2000mという距離も中山競馬場であればこなせると思っているはずです。
その唯一の黒星をつけた全勝馬ダノンキングリーも侮れません。前回は斤量の差があったとはいえ、完勝の内容は非常に楽しみになりました。この3頭の枠の並びや場所が今回、大きなポイントになると思います。内枠が欲しい陣営と外枠が欲しい陣営に分かれると思いますし、その間に逆転を狙うメンバーが虎視眈々と王座を狙います。一体、どの馬がクラシック第1弾を勝利するのか。その結果は、ぜひその目で確認してください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。