元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
環境を変えて目線を変える
2023/11/16(木)
皆様、こんにちは!大相撲が始まり、我が家では毎日のように勝った!負けた!と楽しんでいます。気候も突然、秋を通り超して冬のようになりビックリしていますが、冬の味覚を楽しめる!と切り替えてます(笑)。ついこの間はお土産にカニみそを頂いたのですが、これがまぁ美味しいのなんの。寒さに熱燗とカニみそで早速楽しんでいます。その場やその時、環境で味が変わるのが人間です。だからこそ変化を楽しみ受け入れていきたいと思います。
環境を変えて目線を変えるといえば、鷲頭騎手が障害に挑戦することが発表されました。同期が多く勝ち、騎手としてもがいていた中での判断で私は素晴らしいと思いました。障害・平地と区別なく関わってそれぞれの特徴を掴むことで自分自身をスキルアップし、多くの馬と関わりたいというのは向上心がありますよね。目線を変えることで、競馬に役に立つことが沢山あると思います。だからこそ結果で彼の成果を見せてほしいです。
それでは先週行われたエリザベス女王杯を振り返りましょう。勝利したのはこれでG1・3連勝となったルメールとブレイディヴェーグのコンビでした。前走のローズSでも素晴らしい走りをしていましたし、このレースをターゲットにしてきていた中での走りが完璧だっただけに3歳馬でもチャンスがあるのではと思っていましたが、あっさりと勝利を挙げました。
ルメールのジョッキーカメラも見ましたが、思っている以上に圧勝だったように感じます。まだまだ馬は若いですし、ここからの成長次第でしょうが、牝馬戦線を引っ張っていってくれる存在なのは間違いないと思います。この勝利からもマスクトディーヴァが出ていれば、さらに際どい勝負になったのではと想像を膨らませると少し悔しいレースにもなりました。
2着には上手く乗ったルージュエヴァイユ、さらにハーパーと続く結果になりました。とりわけハーパーには注目していましたが、川田君としても勝った馬を自由に走らせることなく、勝利を掴むべく最善を尽くしたレースだったと思います。その他にもライアン・ムーアの世界一の技が光ったレースだったと思います。騎乗したジェラルディーナは結果としては5着でしたが、レースだけではない彼の技術が入っていました。パドックから興奮気味で発汗し、これはレースでは厳しいそうだなと見ていました。
跨ってからは少し落ち着くも、彼はさらに落ち着かせるべくゆっくりゆっくりとレースまでの時間を使い、馬を集中させていきました。スタートでは少し後手を踏んでしまいましたが、あのテンションの馬を落ち着かせ、技術で折り合わせ掲示板に持ってきた手腕は素晴らしいの一言でした。普通の騎手ならば引っ掛かるのを恐れて控えめに展開し、最後に懸けるレースを選択しがちですが、ムーアの馬に対する行動は勝つために最善を尽くしたといえます。エリザベス女王がいる英国紳士そのものでした。
今週はマイルCSが京都競馬場で行われます。ルメールのG1・4連勝なるかシュネルマイスターやマイル王セリフォスが注目を集めています。その他にも連勝中のエルトンバローズにソーヴァリアント、天候が荒れるのであればソウルラッシュからも目が馳せません。やはり私の推しもシュネルマイスターになります。近走のレースを見ていても力は健在で、今回も非常に楽しみです。いつもテレビで観ている皆様、環境を変えて京都競馬場に行ってみてください。新たな競馬の素晴らしさがそこにありますよ!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。