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ここでは役者が違う!ビッグアーサーが秋緒戦を快勝!!
2016/9/13(火)
16年9/11(日)4回阪神2日目11R 第30回セントウルS(G2)(芝1200m)
- ビッグアーサー
- (牡5、栗東・藤岡厩舎)
- 父:サクラバクシンオー
- 母:シヤボナ
- 母父:Kingmambo
サマースプリントの第6戦、最終戦だがすでに王者はベルカントの連覇で決まっている。そして秋の短距離G1・スプリンターズSへのステップレースで、勝ち馬には優先権が与えられる。高松宮記念のG1馬2頭、ビッグアーサーとスノードラゴンが出走してきた。開幕週であり、当然に時計の速い決着。 好枠のビッグアーサーが、出鼻を叩いて先手を主張。3角手前でスノードラゴンが外から交わす勢いのシーンがあったが、内から先頭をキープすると、後は危なげない逃げ切りで8勝目をマークした。
まだまだ真夏かと思わせる暑い日差し。パドック周辺は太陽が直接当たる。そこを避けて後ろへ引くファン。そんな構図が見られるほどに、この日の阪神競馬場も暑かった。売店でアイスクリームボックスに列がなすほど。私も思わず並んでノドを潤す。 前のレースは、聞こえるか聞こえないかの場内の実況アナウンスで知る。いつも使うパドックの見るポイントも、日差しがけっこうある。長い間は見ていられないほど。騎乗合図の前に席を離れた。 まず第一に感じたのはウリウリ。いつもなら活気あふれる馬なのに今日はおとなしい、と言うか気配がない。春に1走パスをしたダンスディレクターの気合に馬体も申し分ない。あとは実戦勘か。ビッグアーサーは筋肉がモリモリ。特に前脚はすごく、自分の筋肉が歩くのに邪魔しているんではないかと思えるほど。《硬いのかな~》なんて素人考えまでおこして、パドックを終了する。
早めに席に帰って、馬場入場から返し馬の入りをみる。このキャンターへ入る時の馬の前脚の出とか肩先の動きを、よくチェックする様にしている。パドックであまり良くない馬がここでスッとキャンターへ出た時とか、また逆のいい雰囲気で周回していた馬の返し馬の第一歩目でガッカリする時が、ままある。一概には言えないが、けっこうここでの動きが正解に近い時があると信じている。今後の参考までに・・だ。
ビッグアーサーの素軽い動きを見て、走れると思える。エイシンブルズアイはよく見えても、競馬に行ってイマイチな時があるので過信は禁物。ウリウリは返し馬でも活気を感じられない。密かにレッドアリオンがいい雰囲気。1200に対応できたらいい仕事をしそうな予感がしてきた。
ゲートが開いた。大きく出遅れた馬はいなかったと思うが、ややダンスディレクターの出が良くなかった。ゲート内で出る前の瞬間に、後ろはさがった時にゲートが開いた。1完歩目で最内のビッグアーサーが体半分ぐらい前に出ていた。外から急行していく馬もおらず、そのままビッグアーサーが先手を取っていく。レッドアリオンも武豊Jが乗っただけに五分のスタートを切れて前にいる。ビッグアーサーが前へ前へと出ていく。 2番手アットウィル、ネロがそのすぐ外、そしてラヴァーズポイントといて、大外にスノードラゴン。レッドアリオンは4番手のインのアースソニックのすぐ後ろで、いい感じのところにいる。ウリウリはとみると、ダッシュが今ひとつつかずでどんどんと前から下がっていく。全体を見ていると、場内アナウンスが『2番手グループが探りを入れながら・・・、外、13番スノードラゴンが前に出て行きます・・』の放送が耳に入る。《エ、エッ?スノードラゴンが・・》と思わず双眼鏡を外して一番前を見ると、白い馬体が外から前へと並ぶ様に行っていた。
そこはまだ2ハロンも過ぎてないあたり。外のスノードラゴンの動きを制するように、ビッグアーサーがさらに前へと出ていった。まるでスイッチが入るような動きだった。1馬身、さらに2馬身とまでは行かないながらも、スノードラゴンとの差を広げる。そのスノードラゴンも、後ろとの差を2馬身ぐらい開けている。3番手がラヴァーズポイントで、ネロはアットウィルの後ろの5番手だ。レッドアリオンが後ろから5頭目で、その後ろにエイシンブルズアイ。こんな位置にいる。そしてダンスディレクターにウリウリで、最後方がティーハーフである。
思い描いていた展開とは、まるで違っている。ネロの単騎逃げになんての発想が、実に恥ずかしいぐらいだ。ビッグアーサーの軽快な逃げは、4コーナーへも単騎で入ってくる。これほどに楽に行かせてしまっては、後続の逆転はないだろうと思うものだ。
おそらくノーステッキで勝ったぐらいに思っていた、ビッグアーサーの勝利。だが実際には、ラスト1ハロン過ぎに追い出した福永Jの左ステッキが2発入り、ラスト50を切ってから計3発と、教育的ステッキなのか入っていた。先頭に立っていて遊んだのだろうか。そこは鞍上だけが知っていること。次なる戦いのためにもちゃんと教えてといたのだろうと勝手に解釈する。
スノードラゴンがゴール少し前で後続に飲み込まれ、2着はラヴァーズポイントをネロがゴール寸前で差して上がる。ビッグアーサーから1馬身でネロ、そこから6着レッドアリオンまでが、クビ差が4回続く接戦。
惜しまれるのはレッドアリオン。直線へ入ってきて外マイネルエテルネルの和田Jの右ステッキが、武豊Jのステッキを飛ばす。その後が、もっともったいないシーン。みんなが追っているゴール前で、一人だけ手綱を引くシーン。前が狭くなって危なかった様子。それでいてこの着差。「れば、たら」は競馬では言ってはならないのだが…。いや本当に2、3着はあった気がしている。
本番のスプリンタースSは、北海道組やらこんなものでは済まないだろう。だがビッグアーサーは最高の形で本戦を迎える。まずはそんな秋の緒戦、セントウルSでありました。本当に暑い、熱い一日ではありました…。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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