今までありがとうございました【柴山雄一コラム】

柴山雄一

名馬、名手の里・笠松競馬から2005年にJRAへ移籍。美浦を拠点に活躍を続けるいぶし銀ジョッキー。不惑を迎えた現在、G1の頂きを目指し、奮闘する騎手人生、騎乗哲学を綴ります。


28日をもって騎手を引退することになりますが、この場をお借りして、応援していただいた競馬ファンの皆様や関係者にもお礼をさせてください。

JRAに移籍した際、所属させていただいた畠山(吉宏)先生。この秋、美浦に戻ってからも調教に参加させていただきましたし、JRA通算600勝も挙げさせていただきました。

堀(宣行)先生にはG1を乗せていただきました。田所(秀孝)先生にはクロフネサプライズトウカイパラダイスに乗せていただきましたね。栗田(博憲)先生は熱い方で重賞も勝たせてもらいました。

もちろん藤沢(和雄)先生には調教からレースに至るまで沢山、携わらせていただきましたし、自分が盛り返すキッカケを作ってくれました。ノーザンFの木實谷雄太場長にもお世話になり、アルビアーノとの出会いも経験させてもらいました。

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蛯名(正義)さんもこの秋、美浦に戻った際にすごくやり易い環境を作って出迎えていただきました。四位(洋文)さんやノリさん(横山典弘)にも沢山、相談に乗っていただきましたね。

関西に移籍して大橋(勇樹)先生にも沢山乗せていただきましたし、関西で乗り馬がいない頃、Him Rockさんには勝たせていただきましたね。

もちろん笠松時代にお世話になったアンミツさんやアンカツさん、「人」で言えば、挙げだしたら数え切れないほどです……。

「馬」で言えば、やっぱり重賞を経験させてもらった馬たちは思い入れが強いです。

直近ではルミナスウォリアー。それ以前もアルビアーノ、ミトラ、ヤマニンキングリー、ヤマニンメルベイユ、スプリングドリュー、ロックドゥカンブ、ヴィータローザ、グランリーオ、ダイショウジェット、ディアヤマトなど。

特に「ヤマニン」さんの勝負服には思い入れがあります。錦岡牧場に行くと、(土井)睦秋さんにはよく𠮟咤激励されましたね。

「全然勝ってないじゃないか?何やってるんだ!もっと勝てるジョッキーなんだから」と自信を持つよう言われたものです。

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一番記憶にある馬と言えばロックドゥカンブですね。操作性も高くて、あんなにドッシリした馬はなかなかいないと思います。菊花賞を勝てていれば、また違った騎手人生だったのかなとも思いますね(苦笑)。

それにしても、今後は(調整)ルームの風呂に入れなくなるのは本当に寂しい。

普通の銭湯なんかとは違って、室内も温度が高くなる設定になっていて、汗取り(減量)がしやすい仕組みになっているんですよ。

「入れないのが寂しいわ~」と散々言っていたら、ツムちゃん(津村明秀)に「スーパー銭湯行けばいいじゃないですか?」って言われたけれど、「違うわ!あのルームの風呂だから良いんだよ」なんて話を最近もしていたものです。特に函館の風呂はお気に入りでしたね。

僕がいると、室温を高くするものだから「いなくなったら温度が下がるな」「“普通”の風呂になるわ」なんて汗取り仲間からはイジられましたね(笑)。

毎年、北海道に滞在をしていたので、行けなくなるのも寂しさがあります。今までは家族のような形で出迎えてくれる方々もいたのですが、今後はなかなか行く機会がなくなりそうですからね。

昔、シンガポールにも一緒に乗りに行った(田中)勝春さんと同じ日に引退できるのも嬉しい限り。

そして、まだ騎手を続ける仲間たちは、少しでも長く現役を続けられるよう頑張って欲しいです。

特に応援してると言えばヒロシ(北村宏司)と(柴田)大知。ヒロシのこの前のG1勝利は自分のことのように嬉しかったし、あれで長く続けるキッカケにして欲しい。大知は同世代ということで昔から縁がありますからね。

今まで騎手という立場を続けてきて、今度は調教助手という役割になりますが、どうしたら馬が走るのか、長いスパンで考えていく必要があると思います。その場、その場の考えでも乗る騎手とはまた違いますね。

一般的には裏方という立場になるのですが、新しいフィールドに行ける感覚があって凄く楽しみです。毎日、馬に乗れますからね。潰瘍で汗取りもできない時を思えば、体調は全く違います。

浮き沈みの激しい騎手人生だったと思いますが、沢山の人や馬に支えられたからこそ、ここまで続けられたと思います。競馬ファンの皆様も本当にありがとうございました!

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