注目ルーキーはまだまだいる。目覚ましい活躍を続ける今年の新人ジョッキーたちだが、勝ち星上位の同期、斎藤新、岩田望来騎手らに続き、北の大地で頭角を現しつつあるのが、団野大成(だんの たいせい)騎手だ。父が自身も所属する斉藤崇史厩舎の調教助手であり、今はあの関東の名門厩舎の調教にも携わる日々を過ごしているという19歳を取り上げたい。(取材=競馬ラボ小野田)

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北海道開催で名門の調教にも携わる日々

-:今年3月からデビューした団野騎手にお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。この夏は北海道に滞在しながら、順調に勝ち星を挙げられていますね。

団野大成騎手:函館の1週目で、松永幹夫厩舎のマイタイムオブデイ(牝3、栗東・松永幹厩舎)という馬で勝たせてもらいました。あのレースは自分のイメージ通り運べたので、良かったと思うのですが、他は馬の力で勝たせてもらっているレースが多いです。デビュー当初に比べたら、周りは見えるようになってきたのですけど、僕の癖で、ちょっと斜め下を見て乗ってしまうのです。前も見ているのですけど、2つ、3つ前の列を見られていない時があって、対処が遅れてしまうことが多く、反省していますね。

団野大成

-:例えば乗馬をしていた頃でも、そういう癖はあったのですか。

団:小さい頃から「ずっと目線を上げろ」と指導されていました。いま、調教中もずっと直そうとしているのですけど、なかなか直っていません。そこが前を見られるようになれば、もっと楽に周りが見えるようになると思うので。

-:今年デビューされて、もちろん馬にもたくさん乗られてきたと思いますけど、いざレースに乗られて、競馬学校生時代との感覚の違いはどうだったですか。

団:デビュー前は難しさをそこまで感じていなかったのですけど、デビュー戦の騎乗も大逃げるような内容で、反省しかない競馬でした。レースを乗る度に競馬の難しさを感じて、今はVTRを一杯観て、その感覚と擦り合わせるように務めています。デビューして、阪神が終わってから、ローカルばっかり行っていたのですけど、第3場はけっこうゴチャつく競馬が多いですからね。ちょっとした動きではあまり指摘されることはないのですけど、いざ本場に帰ってきたら、ダメでした。

-:本場は上位のジョッキーが沢山いますし、若手主体のローカルとは違うと。

団:そうですね。本場で乗ると厳しいのですが、やっぱり勉強になりますね。そこを補うには自分の技術しかないです。頭数に乗れば乗るほど競馬も覚えられることは間違いないと思います。函館に来てから、レースにも沢山乗せてもらっているので、ちょっとずつ良くなってきていると思います。

-:本州に残られる同期もいましたが、函館に来た経緯を教えていただけますか。

団:所属厩舎(斉藤崇史)は函館に馬房がないので、夏は阪神~中京~小倉かなと思っていたのですが「北海道に行ってこい」となりました。函館では、(斉藤)先生も「藤沢先生の厩舎はすごく勉強になるから、北海道で攻め馬、競馬と乗せてもらって、勉強しなさい」と言っていただきましたし、もともと競馬学校時代も1カ月くらい実習で藤沢厩舎に行かせてもらって、勉強させていただいたことがありました。藤沢厩舎の皆さんにもお世話になっていますし、毎日、攻め馬に乗せてもらっています。

-:藤沢厩舎の調教において、どんなポイントを身につけられましたか。

団:やっぱり馬の当たり方、一つにとっても丁寧なので、今までしていたことをまた違った視点から教えてもらっています。厳しさも感じますが、その方が自分自身の技術も上がります。

団野大成
団野大成

▲7月26日、藤沢厩舎の管理馬で勝利

-:自厩舎も今年のクラシックを賑わせるなど、いい馬がいると思います。日々の調教は、どんなことを心掛けていましたか。

団:先生は(追い切り)時計についてはあまりこだわらず、馬の体の動き、首をしっかり振れているかなどを重視されています。ダクを踏んでいても、毎日、必ず馬場の方まで見に来て、細かな点も注目されています。馬乗りに対して厳しく指導されることもあるのですけど、自分も馬の動きがドンドン分かっていきますし、勉強になります。先生自身、真面目な方で、斉藤厩舎に入れて良かったと思います。厩舎は僕が競馬学校に入った年(2016年)に開業されたのですが、厩舎も忙しい時期に取ってもらったので、感謝しかありません。

調教助手である父の担当馬で初勝利

-:もちろん騎手になったのはお父さんの影響ですよね?

団:そうですね。トレセン育ちだったのですけど、周りの友達もみなトレセンに縁のある人ばかりでした。最初は友達みんなでサッカーをしていて、その後、乗馬と仲の良い友達同士で動いていたのですけど、気付いたら僕はジョッキーを目指していましいたね。サッカーは3歳から小学5年生まで、乗馬は小学5年生からですね。サッカーで基礎体力が付いたと思うので、小さな頃から運動をしていたのが良かったと思いますね。

-:しかもサッカーは走りますから、足腰の強化という点でも大きいですね。お父さんがトレセンで働いていたとは言え、お兄さんも競馬に関わっていなかったように、必ず騎手になるとは限らないわけですよね。決定的な出来事というのはあったのですか。

団:これということはありませんでした。サッカーをやっていた友達たちと一緒に乗馬をやってみたら、楽しくて。馬乗りが楽しかったことが一番大きいですね。小学校5年生から乗馬をはじめ、(栗東の)ジュニアチームには中学校2年生で受かりました。ジュニアチームには最終選考会というシステムがあるのですけど、受かれば競馬学校の一次試験が免除になるので頑張った結果、何とか受かることができました。

団野大成
団野大成

▲同期のジョッキーたちと 中でも岩田騎手は昔からの友人関係にあったという

-:その頃の馬乗りの実力はどうでしたか。

団:全然、馬乗りは褒められたものではありません。当時から、(岩田)望来と一緒にずっと乗馬をやっていて、もう1人ジョッキーを目指している子がいたのですけど、2人がすごく上手くて、僕はずっと置いていかれていました。それでもコツコツ頑張ることだけは続きました。今でも望来は上手いなと思う時がありますね。

-:望来騎手はどこか若手っぽくない感じがしますね。

団:確かにそうですね。競馬学校でも4カ月に1回、アセスメントと言って、筋力の検査があるのですが、望来はいつもトップでしたね。握力も50くらいあるし、性格も負けず嫌い。根気が良くて、ムッチャ我慢ができるんですよ。

-:団野さんの自身の、現時点でのジョッキーとしてのキャラクター、セールスポイントはどこですか。

団:周りから見て、真面目だと思っていただけるようなので、信頼を築いていき、もっと確実なものにしたいですね。レースについては、どんなレースもスムーズに乗れるようにしたいですね。また、悪い意味で「新人らしいな」と思われるレースをしないように。とはいえ、今は3キロ減なので、前に行ったら残ることもありえますから、そこは活かしていきたいなと思います。

団野大成

-:圧倒的に有利な条件ではありますからね。

団:この前も積極的に前を取りにいったのですけど、残っちゃったという感覚がありましたからね。雑にならないように、積極的にいきたいです。

-:タガノジーニアス(牡6、栗東・斉藤崇厩舎)で挙げた(3月17日の)初勝利の瞬間を振り返っていただくと、いかがでしたか。

団:初勝利の時は、ゴール板で勝ったのが分かったので、相当嬉しかったですね。レース前から意識はしていました。四位(洋文)さんのテイエムグッドマンという馬が1番人気だったのですが、それが上手い具合に前にいました。父にも「テイエムだけ見ておけ」と言われていたので、あの馬しか見ていなかったですね。

-:お父さんの的確なアシストがあったわけですね(笑)。

団:はい。実際は色々と言われたのですけど、実際覚えていたのは最後に「テイエムだけ見ておけ」と言われたことなのですが、その通り乗ってきたら、勝てましたね(笑)。先生はいるわけですし、普段はアドバイスを受けることはもちろんないのですが…、その時だけは父の担当馬でもあり、アドバイスもありました。

団野大成
団野大成

▲父・団野勝助手のアドバイスも活きたJRA初勝利

-:お父さんはどんな存在ですか。

団:僕の父はけっこうフレンドリーで、馴染みやすい人だと思います。楽しい、良いお父さんですね。サークル関係者の間柄ではあるのですが「敬語を使え」とも絶対に言われないですしね。

-:他の騎手もサークル内の出身だと、かしこまった言い方をしますよね。

団:僕も敬語を使った方が良いのかなと思って、1回敬語を使ったのですが「気持ち悪いから、止めろ」と言われました(笑)。普段からニコニコしている人なので、色々な人とも顔が広いですし、ありがたいです。母もすごく優しいのですが、両親には昔から挨拶などには厳しく言われていたので、今、それは活きていると思います。

目標は武豊騎手 的場文男騎手のように末永い騎手人生を目指して

-:そういう環境で育って、真面目な団野君が誕生したということですね。今後の目標はありますか。

団:末永く活躍したいですね。的場文男さんが今62歳までやられているので、出来るのならば、的場さんのように長くやりたいですね。目標とする騎手はずっと武豊さんと言っています。ユタカさんは厩舎関係者からの評判も素晴らしいですし、馬乗りもすごく上手です。素晴らしい先輩の方が沢山いますが、やっぱり一番のジョッキーなのかなと思います。海外の方では、ルメールさんの競馬をよく注目して観るようにしていますね。海外ではそうなのかもしれないですけど、直線を向いても、馬の真後ろで我慢させて、仕掛ける時にヒョイと出して、という競馬が多いですね。日本の競馬だと、どうしてもすぐに外に出てしまいますから。

団野大成

-:自分の競馬で、今のところこういうパターンが嵌まっていると感じることはありますか。

団:僕はダートの中距離が好きです。繰り返しになりますが、今は減量があるので、ちょっと出して行けば、ある程度、いい位置が取りやすくて、そこであまり馬の動きを邪魔せずに乗っておけば、良い着順に来られるので。短距離だと、周りのジョッキーも上手いし、馬も速く、どうしても流れについて行けないことがあって、やっぱり中距離の方が好きですね。

-:ファンはそこが狙い目ですね。

団:見てもらいたいですね。「馬の動きを邪魔せずに、リズム良く乗るように」と先生にも言われています。「思いっきり出していったのに、前の馬に近付いたからといって引っ張ったりもしないように」とも言われていますね。これから磨いていって、スムーズに乗っているところを見てもらえたらなと思いますね。

-:大きなアクションや強い扶助というよりは、綺麗に、コンタクト重視という感じでしょうか。

団:そうですね。パワーはまだまだ足りないですからね(苦笑)。

団野大成

-:秋の目標はありますか。

団:秋の前に、北海道シリーズで10勝を目指しています。函館でも幾つか勝たせていただいていますし、結果を残して、向こう(栗東)に帰ってからも乗り鞍が増えたらなと思っています。

-:その先はどうでしょう。

団:先生からも「新人賞をとろう」と言われています。新人賞をもし獲ることが出来て、周りにも顔を覚えてもらって、基礎ができたら、いつか海外にも行きたいという話は先生ともしています。

-:ありがとうございました。今後も笑顔を忘れず頑張ってください。

団:ありがとうございました!