現役を引退することになりました【柴山雄一コラム】

柴山雄一

名馬、名手の里・笠松競馬から2005年にJRAへ移籍。美浦を拠点に活躍を続けるいぶし銀ジョッキー。不惑を迎えた現在、G1の頂きを目指し、奮闘する騎手人生、騎乗哲学を綴ります。


本日、発表があった通り、28日の競馬をもって現役を引退することになりました。

今年7月の函館で通算600勝の節目を達成した際、次の目標を考えた際、現状を踏まえると、これ以上を目指すのは難しいと感じてしまいました。

2005年以降、JRAに移籍して何とかG1を勝ちたいとやってきましたが、チャンスがありながら勝ち切れなかったレースもありました。その点はオカンや笠松時代から応援してくれていた人たちに申し訳ない思いはあります。ファンの皆様にも本来であれば早めにお伝えしたかったのですが、突然のご報告になってしまったことはお許しください。

昨年あたりから胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった体調不良があって、度々、開催当日に騎乗変更となって迷惑を掛けていました。騎乗依頼をくれていた厩舎や馬主さん、JRA職員さんなどにも迷惑を掛けっぱなし。なかなか良くならず、その辺りから引退も頭によぎり始めていました。自分の気持ちはあるのに体がついてこないといった状態でした。今となっては何をすればいいのかわからない苦しい時期でした。

ただ、この秋から美浦に戻ってからは全くそんなことはなくなり、潰瘍の兆候すら感じません。乗り鞍さえあれば騎手を続けられるくらい体調は良くなっています。今週と28日はお世話になってきた厩舎や馬主さんからも乗り鞍を与えていただいており、なんとか結果で報いたいところです!

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先週は中京で新馬のディマイザキッドに乗せていただきました。返し馬と競馬ではかなり違うタイプでした。返し馬では周りに挟まれると操縦が利かないくらいやる気満々だったのが、競馬ではズブくて周りの馬を気にしていたくらいです。

手応えが無い分、ロスなくいかないといけないなと直線の位置取りも考えていたのですが、これが外へ出したら驚くほどの伸びをみせてくれました。これなら最初から外に出していれば……という内容。次は28日に乗せていただく予定。一度、乗ったことでクセを把握できましたし、馬も競馬を覚えてくれたでしょうから次はより楽しみです。

今週土曜はルタンアリュールは昔、お世話になっていた斎藤誠先生の管理馬。前々での形を意識していきたので、なるべく外からスンナリ行ける隊列が理想です。

日曜のセイカアビイロードはお世話になっている馬主さんの馬で新馬から距離が延びますからね。そこがどうでしょうか。

ヤマニンクイッカーは前走で僅差ながらも権利をとってくれました。あれだけの休み明けでもそれなりに走ってくれましたが、一度使った上積みは見込めるはず。あとは砂を被らない形になれば理想。古くからお世話になってきたこの勝負服を着るのもこれが最後かもしれません。

ロードオブザチェコもモマれ弱さのあるタイプ。枠順や並びは重要ですが、こちらも馬主さんのはからいで乗せていただいているだけに力が入ります。

今週は騎手クラブの忘年会がありました。その時も前に立たせていただき、送別会的な形をとってもらいました。美浦から栗東、そして、美浦と出戻りの人間ながら温かく迎えていただいたのは本当にありがたい。泣きそうになりました。ただ、丹ちゃん(丹内祐次騎手)から「僕が喋り過ぎたから勝春さんが喋れずに終わってしまった」と文句を言われましたけどね(笑)。

そして、大みそかの笠松競馬場では(田口)貫太とトークショーに出ることになりました。今後は美浦で調教助手になる予定で、笠松に足を運べることもなかなかなくなりそう。僕も楽しみにしております。