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亡き"相棒"の分も 肌寒い府中で聞いたホッとする話…こちら検量室前派出所(仮)
2017/10/18(水)
笑顔で取材に応じてくれた菅原隆一騎手
冷たい雨が降りしきり、冬の一歩手前のような気温だった先週の東京競馬場。寒さに凍えながら場内の蕎麦屋と検量室前を往復していたパトロール隊員は、1人の若手騎手に声を掛けた。菅原隆一騎手。デビュー時、映画出演などで話題になった彼も、今年で騎手生活8年目となる。
10月14日の東京12Rで、昇級戦のワンパーセント(牡4、美浦・中川厩舎)に騎乗したものの、出遅れもあり10着に終わってしまった。このレースを菅原騎手は悔しそうな表情で振り返る。
「気難しいところがある馬で、最近ゲートの中で我慢が利かず…。今回は9番枠で先入れだったのも厳しかったですね。あとパワータイプなので、水が浮くような、スピードが求められる脚抜きのいいダートもこの馬にはあまり合っていないのかもしれません。牧場で乗せてもらうトーセンブライト産駒はそういう馬が多いんですよ」
彼の言う『牧場』とは、『トーセン』の冠名でお馴染みの島川隆哉社長が経営するエスティファームのことだ。「2、3週間に1度はエスティファームに行かせて頂いていて、現役馬だけでなく、1歳馬にも乗せてもらっています」。牧場の2歳馬に乗りに行く騎手はよく聞くが、1歳の育成段階にも乗りに行くという話はあまり聞いたことがない。
さて、菅原騎手といえば、トーセンラムセスを思い出す競馬ファンも少なくないのではないか。トーセンファントム産駒というマイナーな存在ながら準オープンクラスまで出世した馬。全18戦中13戦で手綱を取り、3勝を挙げる『名コンビ』だった。
そんな名コンビに悲劇が襲いかかる。今年2月18日の東京10R・金蹄ステークス。昇級初戦ながらインの3番手という積極的なレース運びを見せ、直線で外に出し、さあこれから…そう思われた刹那、故障発生。 右第1指関節脱臼。予後不良という診断が下った。
「ラムセスには色々勉強させてもらいました。ワンパーセントにはラムセスの分も頑張ってもらいたいです。そしてトーセンラムセスの弟がいるのですが、こちらにも頑張ってもらいたいですね」。
トーセンラムセスの半弟トーセンレオ(牡2、美浦・奥平雅厩舎、父トーセンロレンス)は、兄と同じ、奥平厩舎でデビュー予定だ。
余談だがパトロール隊員は今から6年前、菅原騎手のJRA初勝利(3歳未勝利・メジロマリシテン)を、札幌競馬場で観戦していた。デビューから208戦目ということもあり、札幌競馬場内は暖かい拍手に包まれていた。
「あのメジロマリシテンでの初勝利は本当に嬉しかったですね!今は1歳馬から乗っているので、1頭の馬に、牧場や厩舎関係者のどれだけの思いが詰まっているかを分かっているつもりです。なので僕は1頭1頭、大事に噛みしめて乗るようにしていますし、1勝の重みを誰よりも感じています。トーセンラムセスやワンパーセントの島川オーナー、そして今日騎乗したカイトセブンの本田オーナーなど、普段からお世話になっている方々に恩返しがしたいです。勝つことが恩返しだと思うので、頑張ります!」。
寒い検量室前で笑顔でそう語る菅原騎手に、パトロール隊員は心を暖かくしてもらえたようだった。
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